海外通信 外食ビジネスの新発想(32)新型コロナにどう立ち向かうか アメリカ外食産業の対応<3>

2020.08.03 498号 13面
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 ◇新型コロナウイルスにどう立ち向かうか アメリカ外食産業の対応(3)

 ●求められる安全の確保

 新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着きを見せ、アメリカより先に経済再開を果たしたヨーロッパでは外食産業を部分的に再開したが、より深刻な打撃を受けたアメリカでも、徐々に再開へ動き始めている。

 FDA(アメリカ食品医薬品局)は、外食産業の再開に向け、空調や配管などの設備運営の方法、用品の洗浄法など、食の安全に関するベスト・プラクティス(最善の措置)についての手引きを作成し、公開している。全米レストラン協会も、食の安全、洗浄と殺菌、従業員の健康と衛生、ソーシャルディスタンスの4分野において「再開ガイダンス」を提言している。

 6月20日付で50州のうち44州が店内での飲食を再開させたが、州によってソーシャルディスタンスの取り方や人数制限などの規制はまちまちだ。特に深刻な打撃を受けたニューヨーク州では、地域によって対応は異なるが、ニューヨーク市では6月22日付で、テーブル間の間隔を6フィート(約1.8m)取ることを条件に屋外スペースでの飲食が可能になった。自炊をせずに外食に頼ることで知られるニューヨーカーが外食できるのは、実に3ヵ月ぶりだ。ただし、同州は7月に入って早々、店内の飲食も可能になる第3段階に引き上げたものの、ニューヨーク市だけは屋内の食事は許可されなかった。

 再開に向け、ニューヨークのような大都市の外食店で大きな影響を受けるのは、ソーシャルディスタンスの規制だ。たとえ屋内の飲食が再開されたとしても、家賃が高く、通常、床面積があまりないことから、客間の距離を取ると、ほとんど客を取り込めない店が出てくる。営業許可が下りた舗道や街路、駐車場なども間口が狭いことから、客数をそれほど確保できず相変わらず苦しい状況だ。

 今回の規制を機に閉店した店もあるが、再開に向け意欲的に取り組んでいる店も多い。屋外での飲食許可を申請した店は3000軒に及ぶ。

 レストランでの食事は、食べるためだけでなく食体験を楽しむという側面が大きい。外出自粛令の出ていた間、その価値を再認識した消費者も多い。その表れが、各店が募金サイトで募った寄付金だ。感謝のメッセージを添えて、多くの顧客が行きつけのレストランを応援した。

 これから季節がよくなり、閉じこもっていた家の中から外へ出て、特に屋外での外食がポピュラーになることが予想される。狭い集合住宅に住むニューヨーカーは、コロナ禍以前から屋外のテーブル席を好む。また「屋内での食事はまだ心配」と言う人も多い。

 再開に向け、家庭ではなかなか作れない料理の需要が高くなることが予想されている。しかし、何といっても、その前に消費者が求めているのは安全の確保。安全で心地よい環境とおいしいプロの料理を提供することによって、顧客を再獲得、あるいは新規開拓できるよいチャンスが到来したともいえる。

 【写真説明】

 写真1、2:フランス人のインテリアデザイナー、クリストフ・ジャーニゴンの制作したプロテクション・バブル「PLEX’EAT」は、装着も洗浄・殺菌もごく簡単という触れ込みで市場に登場。1人用だけでなく、テーブル用もあり、多くのメディアが取り上げた。(C)Christophe Gernigonstudio

 写真3:ソーシャルディスタンスの仕方は店によってさまざま。ミシガン州にある「トラットリア・ピザリア・ダ・ルイジ」では、定員5割、テーブル間に6フィートの間隔を取ることを余儀なくされ、ハロウィーンさながら間引きした席に人形を置いた。(C)Trattoria Pizzeria da Luigi

 写真4、5:オランダのアムステルダムにある植物ベースのレストラン「メディアマティック・イーテン」。グリーンハウス(温室)を設置し、1人100ユーロの料金でコース料理を始めたところ予約が殺到。給仕スタッフはラテックスの手袋をはめ、フェイスシールドをかぶった上、長い木製のボードにのせて料理を出すので接触を防げる。2人用、4人用があり、川辺で優雅に食事ができる。(C)Willem Velthoven forMediamatic Amsterdam

 写真6:オーストリア、ドイツの「ローラーコースター・レストラン」。注文や支払いはタブレット、料理は店中に張り巡らされたローラーコースターで運ばれてくるので、座席を間引きするだけで、ノーコンタクト、ソーシャルディスタンスの対応ができた。(C)ROLLERCOASTERRESTAURANT

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