アポなし!新業態チェック(207)「二八蕎麦 仙川蕎香」

2024.11.04 549号 11面

 ●JR系新ブランドそば店、私鉄沿線に こだわりの日本酒とつまみで、「そば前」の粋を提案する

 JR東日本グループの中で外食の分野を担うJR東日本クロスステーションのフーズカンパニーが、得意のそば業態で新ブランド「二八蕎麦 仙川蕎香」を出店した。JR線沿線への出店ではなく、京王電鉄の京王線仙川駅に隣接する「ハーモニーロード商店街」に面した路面店となる。

 同店の特徴は、そばを食べる前にちょっとした料理をつまみながら酒を飲むという「そば前」のスタイルを打ち出していること。夜間の営業ではこの「そば前」を楽しむことを前提に、つまみとなるメニューを多く取り揃えた。

 主力のそばメニューは、「もり蕎麦」「かけ蕎麦」(各700円)や「天もり」「天かけ」(各1380円)、油揚げと揚げ玉をのせた「むじな」(温・冷、各850円)など。そば屋の定番「天丼」や「かつ丼」に加えて、小さな丼物が付いた「ロースかつ丼セット」「海老天丼セット」(各1080円)もある。

 「そば前」でつまむ一品としては、「蕎麦のだし巻き玉子」「いぶりがっこクリームチーズ添え」(各680円)、「合鴨ねぎ焼き」(980円)といった料理を用意。また、さまざまな素材を串に刺して天ぷらにした「串天」(170円~)、「常磐沖メヒカリの唐揚げ」(480円)、「活〆一本穴子の天ぷら」(1580円)のような焼き物や揚げ物も幅広い。

 日本酒は「獺祭」「七賢」「而今」など、ウイスキーでは「白州」「知多」といった、こだわりの酒類も取り揃えて、単なるそば店とはひと味違ったブランドに仕上がっている。(価格は税込み)

 ★けんじの評価 自社開発の二八そばと本枯節のつゆ

 JR東日本は1987年の国鉄民営化で誕生した。しかし外食元年と呼ばれた70年以前から、国鉄の傘下には日本食堂という日本でトップクラスの外食企業があったのだ。日本食堂は、国鉄の食堂車や車内販売、駅弁、駅構内での立ち食いそばや食堂などを運営する企業で、昭和40年代には外食産業(当時はそう呼ばれていなかったが)ランキングのトップに君臨していた。ほかにも、東京アール・ビー商事(当時)など駅ビルで飲食店を運営するような企業は複数存在しており、グループとして飲食店の運営に関する歴史は長い。

 JR東日本クロスステーションはカンパニー制であり、駅の売店など小売業を担当するリテールカンパニー、自動販売機の商品などを扱うウオータービジネスカンパニー、エキナカ商業施設を展開するデベロップメントカンパニー、そして日本食堂を祖に持つフーズカンパニーがある。リテールカンパニーはかつての鉄道弘済会、デベロップメントカンパニーはかつての鉄道会館という、いずれも古い歴史を持つ流通系企業がその起源だ。

 そうした歴史と伝統を持つ同社が、そばという経験値の高い分野で新ブランドを出店した。しかも立地は自社線が乗り入れていない郊外の私鉄駅前。これはまさに、満を持しての出店ということなのだろう。

 ちなみに、同店の隣には日本レストランシステムが展開する「蕎麦いまゐ」が3月に出店している。この隣店のかけそばの価格は、同店よりも4割以上安いのだ。果たして、その結果はどう出るだろうか。

 ◆外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝  マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウオッチャー。

 ●店舗情報

 「二八蕎麦 仙川蕎香」

 開業=2024年8月26日/所在地=東京都調布市仙川町1-18-9 仙川倉林ビルB棟1階

 ●編集協力:株式会社イートワークス

 http://www.eatworks.com/

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