飲酒業態の未来を読む業界観測:変わりゆく飲酒主体業態の行方「二次会減少」「ちょい飲み好調」
外食ならではの「体験価値」「特別感」を打ち出し来店動機を喚起する潮流は今後ますま加速するだろう。ダイヤモンドダイニングは8月、囲炉裏文化を現代に合わせて再構築した「炉端会席 KAKU 品川」をオープン。全テーブルに囲炉裏を設置し、炭火がパチパチとはぜる音や煙、燻す藁の香りを楽しみながら会席料理を味わう体験型の新業態だ
フレッシュネスバーガーでは夕方16時以降に気軽に楽しめるアルコール&フードを提供する「フレバル」を強化。アルコールドリンク1杯+選べるフード1品で680円、780円(各税込み)のフレバルセットを提案している
食後のデザート需要の取り込みを図り、すき家では23年から一部店舗でシェイクの販売を開始した。写真はすき家が今夏期間限定で販売している「Sukiシェイク マスカット」(Sサイズ210円、M260円、L350円・各税込み) ※販売終了時期は未定
●25年の飲食店倒産件数は過去最多 節約志向から2次会需要も消失
日本フードサービス協会の外食産業市場動向調査によると25年の外食全体の売上げは前年比7.3%増、飲酒主体のパブレストラン・居酒屋業態は売上げが同4.0%増となり、客単価も外食全体で同4.3%増となった。数字上では売上高は伸びているもののコスト高騰に伴うメニュー価格改定の影響が大きく、増収分だけではコスト増を吸収しきれていないのが実情だ。帝国データバンクの調査では、2025年に発生した飲食店の倒産は900件と過去最多を更新。「酒場・ビヤホール」が204件で最も多く、飲酒主体業態の先行きは不透明だ。
コロナ禍以降のライフスタイルの変化に加え、昨今の節約志向も重なり、2次会需要の消失が鮮明になってきたのも、飲酒主体業態にとってはマイナス要因だろう。博報堂生活総合研究所が首都圏・阪神圏・名古屋圏の男女1500人を対象にした2次会に関する調査でも、「会社や仕事の2次会が減った」という人は36.8%、「プライベートの2次会が減った」は33.3%という結果に。飲食店の現場からも「以前は2軒3軒とハシゴに向かうお客が多かったが、今はうちで飲んだ後、そのまま帰るお客が目立つ」(都内立ち飲み酒場店主)、「長居するお客が増えた。存分に食べて飲んで、そのままお開きの雰囲気」(ビジネス街大衆居酒屋店主)、「うちは2次会利用がメインだがグループ客は激減し、今は1人客が主流。宴会後の2次会が減ったのを実感している」(都内バー店主)といった声が上がっている。
●飲酒を伴う会食の時間早まりちょい飲み需要は好調
2次会需要が減少した一方で、早い時間帯に飲酒を短時間楽しむ“ちょい飲み”需要は好調だ。日本政策金融公庫が25年夏に実施した調査では、コロナ禍前の19年と比較して飲酒を伴う外食の開始時間が「早い時間になった」と回答した割合は25%超となり、終了時間も「早い時間になった」が30%超という結果となっている。
広がる「早い時間帯のちょい飲み」需要の受け皿は、居酒屋やバルなどの飲酒主体業態だけでなく、手頃な価格帯のファストフード店や定食店、気軽に来店できるファミリーレストラン、空間価値を強みにしているカフェ、料理の付加価値が高い専門店など多様化している。
利用シーンの拡大を目的にカフェ業態ではフードメニューの充実やFF業態におけるアルコールメニューの開拓、食事主体の店舗ではデザート導入が進むといった業態のボーダーレス化は今の外食市場における一つの潮流だ。飲酒主体業態以外の別業態がその強みを生かして飲酒需要の取り込みを図る例は、今後ますます増えることが予測される。
●明確な来店目的を持った飲み会スタイルが定着
「早い時間帯のちょい飲み」に加え、昨今の飲酒需要における消費者行動は“目的型来店”へとシフトしている点にも注目したい。「絶対に失敗したくない、というお客が増えている」(都内焼鳥店オーナー)、「SNSで話題のこの料理目当てに来た、というお客が多い」(首都圏バルオーナー)、「以前は予約来店は少なかったが、最近は予約客が5割を超えている」(都内バル従業員)などの声が表している通り、突発的な来店は減少し、事前に計画を立て「何を食べに行くか」という明確な来店目的を持って飲みに行くスタイルが定着しつつある。飲酒需要を取り込むには、来店動機を喚起する付加価値の高いメニューの開発と、他店との差別化が今後ますます重要になるだろう。
また、物価高・原材料高による断続的な価格改定は今後も不可欠な現状、料理は価格を変えず、ドリンクのみ値上げした店舗は好調を維持する例が多い。
飲酒客は料理価格にはシビアな目を向ける一方、アルコールについては「たまに行く飲み会」という非日常性を背景に、価格への許容度が比較的高い傾向にある。こうした消費者心理は、飲酒業態が価格改定を進める際に、好材料となり得る可能性があるだろう。















