惣菜弁当の殿堂(3)ヤオコー「二層仕立てメンチかつ」 “粗びき&細びき”で肉汁とうまみを密封

2012.11.05 404号 09面

 「日販50個以上で売れ筋」といわれる食品スーパーのフライ商品のなかで、平均日販150個を誇るメンチカツがある。埼玉県を拠点に118店舗を展開する「ヤオコー」の「二層仕立てメンチかつ」である。“粗びき&細びき”という2種類のミンチダネを使い、ふっくら、ジューシー、うま味にとことんこだわった逸品だ。158円と割高だが、2007年の発売以来、着実に実績を伸ばし、特売日は日販1000個以上も珍しくない。「専門店の集合体」を掲げるヤオコー惣菜の象徴として、また、食品スーパーの差別化に先駆ける商品戦略として業界筋から脚光を浴びている。

 ●商品発祥:ライバルは肉屋のメンチ

 豚カツ、コロッケ、メンチカツは、ベーシック惣菜で不動の売れ筋トップ3。とくにメンチは、「肉屋のメンチ」で知られる名店が商店街に多い。「ベーシック惣菜を研鑽し名店以上の価値を提供することがヤオコーの使命」((株)三昧・小平昭雄社長) として、2007年1月に 商品開発が始動した。

 名店のメンチを買い揃え、研究を重ねたところ、おいしさのポイントは「ふっくら、ジューシー、うま味の凝縮」に尽きた。そして実現には「揚げ油に肉汁と玉ネギの甘味を逃さない工夫が必要」との結論に至り、この課題を克服するため、粗びきミンチダネを細びきミンチダネで包む“二層仕立て”が考案された。発売開始は07年4月。

 ●調理概要:2種類の玉ネギがアクセント

 ミンチダネの材料は、牛肉、豚肉、玉ネギ、牛脂、各種調味料。玉ネギは「生」と「炒め」をブレンドしたもので、2つの甘味が絶妙な味わいを演出する決め手となっている。これらを粗びきと細びきの2つのミンチダネに仕立て、粗びきを核にして細びきで包み、生パン粉をまぶす。

 仕込みは、前日にセントラルキッチンで行われ、当日早朝にチルドで店舗に配送される。店内の油調は170度Cのサラダ油で5分間。1~2時間おきに揚げて陳列される。また、揚げむらが生じないよう、ヤオコー独自の揚げ網を使い、ワンロット18個を同時に揚げ油に落としている。

 ●販売実績:右肩上がり後の実績を堅持

 店舗の規模により異なるが、平均日販150個。07年の商品化から3年間、販売実績は右肩上がり。以後、現在の日販実績を維持している。特売日に価格を30円下げると爆発的に売れることから、エリア別にポーションや価格の見直しを検討中だという。

 種類はプレーンタイプの他、ミンチにキャベツをまぜて甘酢ソースをかけた「キャベツメンチ」、チーズをまぜてトマトソースをかけた「チーズ&トマトソースメンチ」がある。

 ●ポイント:ふっくらジューシーな二層仕立てを実現

 粗びきミンチを細びきミンチで包み込む二層仕立てを可能としたこと。ミンチダネの配合や二層仕立ての形状など、素材のスペックは早く完成したが、量産化に四苦八苦した。素材構造がデリケートなため、インストアで手作りというわけにもいかず、商品化に手間取った。そこで和菓子を製造する自動包あん機に着目。既成機器をヤオコーオリジナルに改良し、量産化と調理・品質の標準に成功した。

 ●食材・資材の決め手

 使用食材「国産チルド肉 生パン粉(メッシュ14mm)」

 国産チルドミート(牛・豚)が食材の決め手。ジューシーな肉汁とうま味を追求するため、冷凍ミートではなく、おもに国産チルドミートを使用している(相場変動により冷凍ミートをブレンドすることもある)。また、サクサクの食感を訴求するため、粗メッシュ(14mm)の生パン粉を使用。この2つの相性も欠かせぬポイントだ。

 ●会社概要:(株)ヤオコー

 本社所在地=埼玉県川越市脇田本町1番地5/事業内容=「豊かで楽しい食生活提案型スーパーマーケット」を掲げ埼玉県を拠点に118店舗を展開。子会社の(株)三昧が担当する惣菜部門は食品スーパー随一との呼び声が高い。

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