フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(3)ペッパーフードサービス “一瀬商店”から脱却を
◆不祥事続き不安定
上場翌年の2007年5月、大阪心斎橋店の店長とスタッフが、来店して食事中の女性客を、拉致監禁した上で強盗強姦を働くという前代未聞の大事件を引き起こしてしまった。心斎橋店の事件の影響が収まらない翌08年3月には、今度は都内の巣鴨店の店長が、求人広告代理店の営業担当の男性を殴ったとして、傷害容疑で逮捕される事件が発生した。この事件も、その発端は代理店の女性担当者に好意をもった巣鴨店店長がストーカー行為を繰り返したことから、被害者の男性社員に担当交代したことに腹を立てて引き起こしたものだった。そして09年8月、腸管出血性大腸菌O157による大規模な集団食中毒が16店舗で発生、35人が発症する大規模な食中毒事故を起こしてしまった。
これだけ不祥事が続くと、当然ながら客足も遠退き、業績低迷が長期化している。一応、表面的には10年9月から昨対ベースの売上げは100%を超えてきており、業績が回復してきているように見える。ところが、大規模な食中毒を出した直後の09年9月の昨対売上高は48.8%となり、これ以降10年8月まではおおむね昨対売上高が70%台後半で推移していたことから、最近の回復を示す数値は、要は一昨年の激減した売上高との比較である。
そうなると当然ながら資金繰りも逼迫してくるはずであり、10年8月に取引先のエスフーズに発行した新株予約権も行使が進んでいない様子から、既に手元の運転資金にも窮している可能性が高い。
実は、筆者も前職時代に一瀬社長と面談し、会食する機会もあったが、一瀬社長はお会いするたびに、ご子息である一瀬健作取締役の成長ぶりを喜々として話していたことを今でも鮮明に覚えている。もし、話の通りにご子息が成長してきているのであれば、直ちに社長を譲るべきではないだろうか。これが、今号の結論である。
不祥事が立て続けに起きているが、ペッパーランチの店を利用すれば、スタッフは皆まじめで頑張っている。なぜ不祥事が続き、業績が低迷し、幹部の退社が止まらず、資金繰りが逼迫するのか。その根本的な要因は、「一瀬商店」と揶揄されるオーナー絶対型の経営体質に起因している。経営者としてよりも創業オーナーの意識が強く、それが悪い方向に作用し、誰も止められない状態になっているのである。周りはモノが言えない状態でストレスをため、一瀬社長はそんな周りの人材を信じられなくなっているのではないか。
ならば、身内であるご子息に社長職を譲り、代表権を返上した上で創業オーナーとして会長ないし相談役となって、ご子息のさらなる成長と会社の再生を見守ってはいかがか。ペッパーランチの一ファンとして思う次第である。
◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛ける他、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。