電化厨房特集:ファストフード電化厨房最前線=「ケンタッキーフライドチキン 渋谷道玄坂店」
1970年に日本第1号店をオープンして以来、全国で1164店舗展開する「ケンタッキーフライドチキン」。数年前からオール電化を進め、現在、渋谷道玄坂店をはじめ関東2店舗、関西7店舗で導入済みであり、今後も既存店を含め電化厨房への転換を進めていく予定という。
世界70ヵ国で展開するケンタッキーフライドチキン(KFC)だが、米国をはじめ電化厨房を採用している国の方が多く、ガス厨房がメーンである日本は、実は例外的という。その背景には、日本第1号店の開業当時、まだ店舗規模も小さく、ガスで調理した方が、チキンがふっくら仕上がるという利点があった。だが、ここ数年の技術面の進歩により、電気による厨房機器でも、ガスと変わらぬ品質の商品を作り出すことができるようになったという。
「イニシャルコストとしては、ガス、電気ともそれほど変わりはない」と、建築施設ユニット部の鈴木和之さん。さらにランニングコストやCO2削減などの観点からも、電化厨房による成果が徐々に表れているという。
だが同社では、現在、新規出店の約9割がSCなどの商業施設内、約1割が路面店や一般ビル。SC内出店の場合、古い施設では電気容量の問題から導入はなかなか難しいという。路面店での出店も多くはないため新規出店時のオール電化厨房導入チャンスが少ないのが実状らしい。
また、既存店での転換については、コスト面での課題があるという。KFCの標準的な店舗で必要な厨房機器は、クッカー(圧力鍋釜)4台、フライヤー2台のほかに、ビスケットオーブン、給湯器、洗浄機など。これらをすべて入れ替え電化するコストのリスクを考慮すると、順次、既存店での導入を進めていくというわけにもいかないようだ。
そのため現在は、実験的に既存店の所沢上新井店(埼玉県)において、電化厨房への切り替えを行っており、3年間かけて段階的に導入を進めていく計画だという。
その一方で、ランニングコスト削減の成果は明確であり、関東での電化厨房第1号店である渋谷道玄坂店がオープンした04年実績で、年間50万円の削減。ガス料金の高騰している現在では、さらに大きな効果を期待できる。
その他のメリットとして、ガス機器のような分解・清掃や、ダクトの清掃といった大掛かりなメンテナンスコストの削減が挙げられる。だがその一方で、クッカーのコルツ管ヒーターにチキンのカスなどが付着しやすいため、清掃の際にガスと比べ手間がかかるという意外なデメリットもあったようだ。
商品の品質に関しては油の温め方の違いはあるものの、温度を均一化してから揚げるため、同条件下ではガスも電気も味に違いはない。しかし、安定性や安全性といった面では、電化機器の方がコントロールしやすく、これからますます厳しくなる店舗での人材確保の問題においてもプラスの材料として期待される。今後いかに、既存店のオール電化厨房への転換を、スムーズに進められるかが課題という。
◆企業メモ
日本ケンタッキー・フライド・チキン(株)(本社=東京都渋谷区恵比寿南1-15-1、JT恵比寿南ビル)事業内容=「ケンタッキーフライドチキン」(1165店舗)、「ピザハット」(362店舗)の展開
◆店舗メモ
「ケンタッキーフライドチキン渋谷道玄坂店」(東京都渋谷区道玄坂2-16-6)営業時間=月~木午前10時~午後11時、金・土午前9時~翌午前3時、日・祝午前9時~午後10時/坪数・席数=93坪・96席/客単価=650円/目標月商=1200万円