外食史に残したいロングセラー探訪(29)サイゼリヤ「ミラノ風ドリア」

2009.05.04 357号 08面
ミラノ風ドリアに半熟卵(69円)をトッピングしたり、セットのプチフォッカチオ(69円)を合わせるのもおすすめだ

ミラノ風ドリアに半熟卵(69円)をトッピングしたり、セットのプチフォッカチオ(69円)を合わせるのもおすすめだ

 サイゼリヤの人気メニュー「ミラノ風ドリア」は、黄色いターメリックライスにホワイトソース、ミートソース、粉チーズを組み合わせた、とてもシンプルな商品だ。40年以上もの歴史を持つロングセラー商品であり、現在でも1日に1店舗当たり平均約80食、全店舗合計では約6万食販売している超ヒットメニューでもある。

 「サイゼリヤ」の創業店舗、「レストラン サイゼリヤ」は1967年、千葉県市川市に開業。当初は、現在のようなイタリアン専門ではなく、洋食メニュー中心の構成で、エビやホタテなどのシーフードを使った一般的な「ドリア」も提供していたようだ。

 ロングセラー商品「ミラノ風ドリア」が誕生したのは、現(株)サイゼリヤ・代表取締役会長の正垣泰彦氏が前オーナーから譲り受けた後の1969年ごろのこと。ある従業員がまかない食に、ご飯の上にホワイトソースとミートソース、そして粉チーズをかけて食べていたのを見て、常連客が「食べさせて」と要望。意外にも反応がよかったため、しばらくの間は裏メニューとして提供していた。だが、評判が徐々に広まり、定番メニューとして採用することとなった。当時の価格は380円であったという。

 当初、同メニューは「ミートグラタン」と呼ばれていたが、メニュー数が増え、間違いやすくなったため、メニュー名を変更することになった。同商品の特徴であるミートソース(ボロネーゼソース)は、イタリア・ボローニャ地方の料理なので、この地方に近いミラノの名を取り、「ミラノ風ドリア」にしたという。

 その後、1973年に同社の前身である(株)マリアーヌ商会を設立、1977年には第3号店を出店し、サイゼリヤの多店舗化をスタート。

 「人々に豊かな食文化を提案すること」という理念の下、チェーンストア理論に基づき、「本物のイタリア料理を、どうすればもっとリーズナブルに提供できるか」を追求。

 2002年には、オーストラリア・メルボルン郊外に食品加工工場を設立。ミラノ風ドリアで使用するホワイトソースや牛100%のミートソースなどは、すべてこの工場で作られている。

 こうした努力の結果、現在は299円という驚異的な価格で提供することが可能となった。

 この手ごろな価格設定は、約70品あるメニューから、利用シーンに応じて料理の組み合わせを楽しめるためという意図もある。

 「単品のご利用だけでなく、ミラノ風ドリアを『主食』の位置付けで、スープやサラダ、肉・魚料理などとの組み合わせも楽しんでいただけます」と(株)サイゼリヤ・総務部課長、伊藤保雄氏。

 現在、同社では「家でもサイゼリヤの味を楽しめるように」と、冷凍のミラノ風ドリアを開発中とのこと。スーパーマーケットなどの冷凍食品コーナーに並ぶ日も近いようだ。

 ●店舗データ

 「サイゼリヤ」/経営=(株)サイゼリヤ/本社所在地=埼玉県吉川市旭2-5/第1号店開業=1973年5月/企業年商=849億円(2008年8月期)/現在、国内785店舗(2009年1月末現在)

 ◆コメ

 サイゼリヤ全店舗で1年間に使われるコメは約7,500t。そのうち約4,000tがドリア用である。

 白米にはコシヒカリやひとめぼれなどが使われているが、ミラノ風ドリアのターメリックライスには、自社米50%、きらら50%の2品種をブレンドしたものを使用している。

 コメのうまみを最大限に引き出すため、精米したてのコメにこだわる。そのため、玄米の状態のまま、自社の倉庫で温度・湿度を一定に保った環境で保管し、計画的に毎日精米して出荷している。

 工場で炊飯されたライスは、1人前約150g分ずつパック詰めし、チルドの状態で各店舗に配送される。

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