アポなし!新業態チェック(40)「RC TAVERN」丸の内トラストタワー店
サントリー系列の外食企業、ダイナックが昨年秋に開発した英国風パブ業態が「RC TAVERN」だ。ダイナックでは、すでに「ビクトリアンパブ ザ・ローズ&クラウン」という英国風パブの業態を東京、大阪に12店舗展開しているが、男性客が大多数を占める同業態の弱点を克服することを狙い、「女性客を取り込めるパブ業態の確立」を目指して計画されたのが、この店である。
JR東京駅に隣接する複合施設の1階に位置する店は、昼間はまるでカフェのように明るく陽光が差し込み、夜間も店内照明をあまり落とさないようにするなど、英国風パブがイメージさせる重厚な暗さを排除したモダンな空間が売り物だ。
店内の内装も、明るめの色合いの木目調を中心に、高い壁面には英国風のタータンチェック柄の壁紙を数種類張り分けて、華やかな雰囲気を作り上げている。2部屋あるVIPルームは、昼間は禁煙ルームとして使われ、喫煙傾向の強い飲酒業態で、喫煙しない女性客でもランチ利用に不快感は少ない。
また、メニューも英国風パブの定番である「白魚のフィッシュ&チップス」(650円)やソーセージ、フランクフルトといった肉系のつまみばかりではなく、女性客を意識して、塩味の野菜ケーキをトマトのジャムで食べる「ケーキ・サレ」(550円)のような独自開発メニューのほか、定期的に変わるランチ、パスタなどの食事メニューにも力を入れている。
常連客でないと入りにくいイメージのあるパブ業態の間口を広げて、新たな客層を呼び込む工夫が凝らされた店は、ダイナックの今後を占う試金石となる新業態だ。
★けんじの評価
RC TAVERNが入居する「丸の内トラストタワー」は、実は東京駅の八重洲側にある。住居表示としては丸の内にあたるのだろうが、ほとんどの日本人は、丸の内とは丸ビルのある側だと思っているはずだから、ややこしいことこの上ない。実際には、駅北側の「日本橋口」という大きな出口を出てすぐのビルであり、目と鼻の先にある永代通りの地下には地下鉄大手町駅があるという立地だ。
外壁面がガラス張りの店は、「英国風パブ」というコンセプトには似合わぬモダンな外観。上層階がオフィスフロアになった建物の1階エントランス脇に位置する。入った瞬間には気付かなかったが、よく見ると、天井高が高い物件の構造を巧みに生かした設計は脱帽ものである。特にカウンターの作りは秀逸で、カウンター高を低くし、かつスタッフの視点を下げるために、カウンター周囲の床面全体を階段3段分ほど持ち上げ、カウンター内部だけを掘り下げるかたちを取っている。十分すぎるほどの天井高があるために、こうした設計が違和感なく内装に溶け込んでいるのだ。
時代背景から、飲酒業態を展開する企業は、さまざまな方向で新たな可能性を模索している。女性客を狙うというのもそのうちのひとつだが、従来の男性客層にも目配りしながらの女性客対応は、やはりどことなくぎこちなく、また男性目線から抜け出せていないような印象を受けた。
中年オヤジの筆者が安心できる店内とメニューで、丸の内あたりのライフスタイル感度の高い女性たちにどこまで通用しているのか、また臨店して確かめてみたい。
(外食ジャーナリスト 鷲見けんじ)
●店舗概要
店名=「RC TAVERN」丸の内トラストタワー店/開業=2009年10月1日/所在地=東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワー N館1F/席数=74席
◆鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。