ニューヨーク通信 外食ビジネスの新発想(41)ニューヨーク一有名な名物サンドイッチ
ニューヨークの名物サンドイッチといえば、パストラミ・サンドイッチ。パストラミ・サンドイッチといえば、「キャッツ・デリカテッセン」。同店は、知る人ぞ知る、1888年創業のデリの草分け的存在だ。100年以上もの間、人々に愛されてきたサンドイッチ目当てに、連日、長い列ができる。(外海君子)
◆たっぷりのボリュームに食べ応え 歴代大統領を含むVIPも数多く来店
ユダヤ系移民によってアメリカにもたらされたパストラミとは、牛肉を塩漬けにしたあと、少し乾燥させてから薫製にしたもの。コンビーフに似ているが、塩辛くてややドライな薫製肉で、パンの間に分厚く重ね、香辛料をまぶして食べる。ライ麦パンに挟んで、マスタードをかけるのが一般的だ。
19世紀末に、貧しい移民が多く住んでいたニューヨークのローワーイーストサイドに同店がオープンして以来、代名詞的存在であるパストラミ・サンドイッチは人々に愛されてきた。一人前14$95¢。オーダーすると、カウンターにいるシェフが切りさばいてくれる。ボリュームたっぷりではあるけれど、塩味が効き、意外にさっぱりしていて、けっこう食べられる。サンドイッチには、浅漬けや深漬けのキュウリのピクルスも皿に山盛り付いてくる。
ほかに人気があるのが、コンビーフにスイスチーズとザワークラウトを挟んだルーベンというサンドイッチで、一人前15$75¢。市販されているコンビーフは、普通、圧力をかけて36時間ほどで作られるが、同店のコンビーフは30日間もかけ、じっくり熟成させるというだけあって、肉のうまみがあふれている。
講堂のようなガサついた店内で、多くのお客と混じって食べるのもなかなかユニークな食体験だ。歴代大統領を含むVIPも数多く訪れ、壁には、同店に来た政治家、映画監督や俳優の写真がずらりと貼ってある。ノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元副大統領は、ロシア連邦の初代首相ヴィクトル・チェルノムイルジンを連れてランチに訪れた。映画の舞台にも使われ、ニューヨークのモニュメントの一つにもなっている。これだけの著名度と歴史が培われたのも、やはりパストラミ・サンドイッチのおかげといっていいだろう。
●事業データ
キャッツ・デリカテッセン(Katz Delicatessen)/所在地=205 East Houston Street New York NY 10002/開業日=1888年/開店時間=日午前8時~午後10時45分、月~火午前8時~午後9時45分、水~木午前8時~午後10時45分、金~土午前8時~翌朝2時45分/人気メニュー=一押しは、パストラミ・サンドイッチ