アポなし!新業態チェック(51)東京スパゲッチ高田馬場店
◆驚異の大盛り肉食系 カレーのようなトッピング戦略
居酒屋の「東方見聞録」や「黄金の蔵」などの展開で知られる三光マーケティングフーズは、今年の1月、非飲酒業態のパスタ専門店「東京スパゲッチ」の1号店を東京・高田馬場にオープンした。
「食欲を満たす“デカ盛★ナポリタン”」というキャッチフレーズで、ボリュームたっぷりの本格的なスパゲティを提供する小型店。ナポリタンやミートソースなど3種類の味付けのスパゲティを、それぞれ300g、450g、600gというポーションで用意し、同一価格の580円で提供する。他にも女性専用の250g(480円)や900g(200円増)の5種類のバリエーションを用意し、さらに好みに応じて、目玉焼き、ベーコン、ハンバーグ、豚カツ、唐揚げなどのトッピングを付け加えることも可能だ。
同社のうどん業態「楽釜製麺所」が出店するビルの2階にあり、従来のパスタ店のイメージとは一線を画した、定食屋のようなスタイルのパスタ専門店である。店舗の入口には食券の自動販売機があり、長方形の店内中央にあるオープンカウンター内ではスタッフがフライパンを振る。
同社は現在、居酒屋事業の他にセルフ式うどん店「楽釜製麺所」を20店舗展開するなど、飲酒業態以外の開発にも力を入れており、この1号店に続き、2号店を東京・渋谷に、3号店を同西新宿に開店する予定であるとのこと。
かつて1990年代の半ばに新宿に開業したパスタ専門店は現在も営業を続けており、昨年の暮れにもまた新たなパスタ店を買収するなど、同社がパスタ業態にかける意気込みが十分に伝わってくる。
★けんじの評価
高田馬場駅早稲田口を出てガード下を左に向かう。ロータリーの回りに西武グループのビッグボックスなど大きな商業ビルがそびえるエリアとは逆に、早稲田通りを中野方面へ向かったすぐの場所に店がある。同社が得意とする都心部の駅前繁華街エリアへの出店。「スパゲッチ」とは、かつて飲食業界でスパゲティのことを指していた表現で、年輩の業界関係者には懐かしい響きかも知れない。
コンセプトの「デカ盛★ナポリタン」が狙うターゲットは「肉食系男子」である食欲旺盛な学生と若いサラリーマン。さまざまなトッピングを選ぶスタイルは、明らかにカレー業界のノリを踏襲している。臨店したのは、まだ開業して間もない時期だったが、訪れていたのもそうした客層が大多数だった。900gのスパゲティなど誰が食べるのかという気もするが、従来のパスタ業態にありがちな、「オシャレなイタリアン」というイメージをかなぐり捨てた大胆さが潔い。
だが、ファストフードの方向性を強めるほど問題になるのは商品そのものだ。外食のニーズにおいて価格に比較したボリューム感を求める客層は常に一定数存在しているが、大量の油で炒めた大盛りのパスタを誰もが「ごちそう」と感じる時代ではない。逆にターゲットを絞り込むと、多店舗業態として成立しなくなる可能性も高いだろう。商品は、現在マーケットが拡大しているうどん業態と比較しても商品単価が高いにもかかわらず、女性客やシニア層などを排除した商品コンセプトで果たして多店舗化が図れるのか、それがこの業態の今後を占うポイントになるに違いない。
(外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)
●店舗概要
開業=2011年1月17日/所在地=東京都新宿区高田馬場4-8-7 2F
●プロフィール
外食ジャーナリスト・鷲見けんじ=外食チェーン黎明期から、FFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく、甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。