フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(8)小僧寿し本部 長期低迷が続くも再建いまだならず
●業績は10年以上低迷しジリ貧に
言わずと知れた持ち帰り寿司の全国チェーンであるが、業績は長期にわたって低迷している。2005年に「すかいらーく」グループとの資本・業務提携により再起を目指したが、直近では人員削減と不動産売却効果などで2009年12月期に1期だけ黒字決算を達成したものの、売上げ自体は10年以上にわたって減少し続けている。
●四重の包囲網が売上げ減少要因
売上げが減少し続けている最大の要因は外的要因、つまり競争に負けてしまっているのだ。この外的要因とは(1)回転寿司(2)宅配寿司(3)持ち帰り弁当(4)デパ地下である。
拡大を続ける(1)回転寿司は、今やファミリー向けの代名詞のような存在となっており、小僧寿しの顧客層と完全にかぶっている。(2)宅配寿司も、品質向上と高齢化の進展で今後も持ち帰り寿司のシェアを奪っていくであろう。(3)持ち帰り弁当は、歴史的にはまさに小僧寿しと同時期に成長したが、メニューの多様化と低価格化で消費者ニーズ掘り起こしに努め、一部ではレストランの需要を奪う実力があることから、寿司中心の小僧寿しは、もはやライバルではなくなっている。また、中食ブームもあり百貨店で唯一活況を呈している。(4)デパ地下では、都内の有名寿司店のテークアウト業態を集めており、小僧寿しの手が出ないアッパーな客層を完全に取り込んでいる。これは駅ナカも同じである。
●「すかいらーく」米ファンド買収
昨年10月、野村証券傘下にあった親会社「すかいらーく」が、米国系大手ファンド「ベインキャピタル」に約2600億円で売却されることが発表された。ベインキャピタルは、米国においてはドミノ・ピザやバーガーキング、ダンキンドーナツなど外食企業への実績も豊富である。国内では、コールセンター大手「ベルシステム24」を1000億円超で買収して注目を集めたが、外食企業に対する投資はすかいらーくが初めての様子。このため、いまだ再建途上にある小僧寿しにとって、今後どのような形で影響が出てくるのか注目される。
●生かし切れない貴重な経営資源
長期低迷にあえぐ同社であるが、今でもFC含め全国に700店舗を超えるチェーン規模を有し、古さは感じられるものの知名度は全国区。財務的にはほぼ無借金経営であることから、再建は不可能ではない。
復活のヒントは、「四重の包囲網」への対応と、商品およびサービス面の強化である。「四重の包囲網」と書いたが、競合が包囲網を敷いているわけではなく、小僧寿し自身が対応に手をこまねいているだけなのである。
実際、小僧寿しも回転寿司業態の「回転寿し活鮮」17店舗、宅配寿司の子会社「札幌海鮮丸」75店舗を有しながらこの貴重な経営資源を生かし切れていない。ただし、回転寿司については業界御三家の「くら寿司」「スシロー」「カッパ寿司」でほぼ勝負がついた感があるため、投資の重い出店を増やすよりは地域の回転寿司チェーンとの提携や、あるいは同社のバイイングパワーを生かしたネタの加工販売に特化するなど、工夫が必要である。
商品面については、寿司に偏った商品構成を惣菜アイテムも増やす形でバラエティーを持たせる、寿司の入らない弁当メニューや、寿司と惣菜のバイキングなども考えられる。商品力についても今の「薄ネタシャリ厚」ではお客は価値を感じない。また、自力でデパ地下や駅ナカに出られないのなら、場合によっては老舗ブランドの買収なども必要ではないだろうか。いずれにしても、再建に残された時間は少ない。
◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛ける他、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。