業務用食材活用の知恵(その12)ラーメンスープ・豚骨
●食べやすいマイルドタイプも登場 鍋料理や炒めた麺に最適
豚骨味は、そのクセの強さから長いこと定着できずにいたが、近年のラーメンスープブームにのって、完全に市民権を得たといってよい状況になった。ピュアな豚骨タイプの製品はさすがにクセの強いものもあるが、最近の人気化によって、鶏骨や廃鶏を混用したものや、野菜のうま味を付加したタイプなど、食べやすく、マイルドな味わいのものも増えている。
独特の濃厚なスープは、これまでにあまりなじみのない味であるうえ、ラーメンだけにその利用が限定されるため、一般の料理に豚骨スープが使われるケースはほとんどないが、その分上手に応用すれば、個性的メニューの開発ができる。
スープとしての性格上、最もマッチするのは鍋物料理。流行のモツ鍋や豚の豚骨しゃぶ、ニラやモヤシをたっぷりと使用した中華風の豚鍋、ラー油や花椒を加えてピリ辛味に仕立てた四川風寄せ鍋など、新しい味わいの鍋メニューが作れる。
また、モツ煮や豚足煮といった煮込み料理や、焼きラーメン、焼きビーフン、春雨炒めなどの炒め調理をする麺料理にも最適だ。チャーハンや炊き込みご飯に使えば、これも個性的な味付けになり、やみつきになるファンも出よう。牛乳を加えると臭みが消える裏技もある。
◇「豚肉と青菜の豚骨焼きビーフン」
豚骨の風味とコクを付加
■参考原価=131円
●使用食材(1人前)
豚肩ロース肉(細切り30g)ビーフン(戻し100g)チンゲンサイ(細切り40g)玉ネギ(スライス15g)ホウレンソウ(4cm幅20g)根ショウガ(みじん2g)ニンニク(みじん1g)クコの実(少々)ラーメンスープの素・豚骨(10g)水(30ml)マヨネーズ(10g)日本酒(少々)塩(少々)ごま油(2g)サラダ油(6g)
●調理方法
(1)豚肩ロース肉に塩と日本酒を振って絡めておく。
(2)サラダ油でニンニク、根ショウガを炒め、(1)を加えて炒める。
(3)玉ネギ、チンゲンサイ、ホウレンソウを加えて炒める。
(4)ラーメンスープの素・豚骨8gと水を加える。
(5)ビーフンを入れ、汁気がなくなるまで炒める。
(6)クコの実を入れて炒め、皿に盛る。
(7)ラーメンスープの素・豚骨2gとマヨネーズをまぜ合わせて添え、ごま油をたらす。
●メニュー開発のコンセプト
ラーメンスープの素・豚骨のコクのあるうま味で炒めた青菜たっぷりの焼きビーフンに、豚骨味のマヨネーズを添えたユニークな味わいが楽しい軽食メニュー。
●応用のヒント
ビーフンの代わりに中華麺や春雨で作っても美味。
◇「豚骨モツ煮込み」
隠し味の味噌がポイント
■参考原価=129円
●使用食材(1人前)
牛白モツ(ゆで70g)大根(厚さ7mmのイチョウ切り30g)ニンジン(厚さ7mmのイチョウ切り10g)コンニャク(ちぎり20g)根ショウガ(スライス1g、みじん1g)万能ネギ(刻み2g)ラーメンスープの素・豚骨(15g)味噌(1.5g)水(160ml)
●調理方法
(1)ラーメンスープの素・豚骨と水をまぜる。
(2)根ショウガ(スライス)、牛白モツを入れ、1時間煮る。
(3)大根、ニンジン、コンニャクを加え、さらに1時間煮る。
(4)味噌を加え、さらに30分煮る。
(5)器に盛り、万能ネギを散らし、根ショウガ(みじん)をのせる。
●メニュー開発のコンセプト
コクのある豚骨味のスープでじっくりと煮込んだモツ煮込み。隠し味に加えた少量の味噌が味を引き締める。
●応用のヒント
牛白モツの代わりに豚白モツも向く。
○プロフィル
押野見喜八郎(おしのみ・きはちろう) FSプランニング代表。1946年千葉県生まれ。東京ヒルトンホテルを経て外食マーチャンダイザーに転身。多数の外食専門校で活躍するほか、外食企業の商品開発、食品企業の業務用食材開発を手掛けるなど、わが国のメニュー政策指導の第一人者として知られる。「外食新メニュー実用百科」(日本食糧新聞社)など著書多数。