メニュートレンド:担々スープ+卵とじ&パーコー+豚骨のトリプル技 「八角屋」
都内のラーメン市場は、いまや飽和状態に近い。新しい店がオープンして注目を集める一方で、消えていく店も少なくない。閉店する店の味に、遜色があるわけではない。ラーメン業界全体がレベルアップし、どこの店も十分においしくなっている。閉店する店は、客の獲得競争に敗れたまでだ。味に関しては、“どんぐりの背比べ”的状況にあって、その競争を勝ち抜けるためには、メニューに“インパクト”という付加価値を付ける必要がある。それを実現したのが、「八角屋」の「玉子とじパーコー担々麺」だ。
●日本で希少なパーコー麺専門店 顧客満足度アップのためにとことん“盛る”
「八角屋」を経営するせたが屋は、ラーメン通なら知らない者がいないラーメン業界の雄。「せたが屋」のラーメンといえば、魚介のだしが利いた醤油ラーメンが有名だが、八角屋はそのブランド力に甘んじることなく、国内では、まだあまり知られていない「パーコー麺」で勝負に出た。
パーコー麺とは豚肉の唐揚げをのせた中華汁麺のこと。パーコー(排骨)は骨付きのばら肉のことで、元来はこの部位を用いたことからこの名がある。一般にパーコー麺のスープは鶏や魚介でだしをとったものが多いが、八角屋の場合、げんこつや豚足などを10時間以上炊いた濃厚な豚骨スープを使用している。
しかも、ただの豚骨スープではない。カイエンペッパー、山椒、陳皮、一味唐辛子など10種類以上のスパイスをブレンドした自家製ラー油を使用し、担々スープに仕上げているのだ。豚の唐揚げと自家製ラー油の辛さの相性は抜群で、ともすれば油っぽさが気になる唐揚げを辛さが中和。ガッツリ系の男性だけではなく、スパイスの効いたスープは女性にも好まれる味になっている。
「八角屋」では、「パーコー担々麺」(880円)も提供しているが、このメニューに、もうひと“盛り”したのが「玉子とじパーコー担々麺」。「カツ丼からヒントを得て、パーコーを卵でとじたものを担々麺にのせました」とせたが屋の津田修一氏。卵を1人前に2個使用するぜいたく感も、このメニューのレベルを上げている。卵を加えることでラー油の辛さがマイルドになることも、メニュー開発時に想定されていた。
もちろんパーコー麺の主役の豚の唐揚げにも、とことんこだわった。「メニュー開発で一番苦労したのが豚肉選び。脂身と赤身のバランスが難しかったですね。脂身が多いと豚骨スープと合わせたときにしつこくなる。かといって、ジューシーさと軟らかさを出すには、程よい脂身が欠かせない」と津田氏。数十種類の豚肉で試食を繰り返した結果、現在の豚ロース肉にたどりついた。注文を受けてから、下味を付けた肉に丁寧に衣を付けて揚げる。揚げたてのサクサク、熱々を提供するのがこだわりだ。
もう一つ、八角屋のウリメニューが「ギョウザ丼」。「サイドメニューでギョウザを提供したかったのですが、スペースの都合上、ギョウザを焼く調理器具を置けなかったことと、チャーシュー丼のようなありきたりのメニューは避けたかった」という2つの問題点を見事にクリアしたのがこのメニューだ。
ただおいしいだけではなく、他店にはない斬新な味というインパクトをプラスしたメニューで、今年2月にオープンした八角屋は確実にリピーターを獲得している。
●店舗情報
「八角屋」 所在地=東京都世田谷区奥沢5-26-4、電話03・3724・8838/開業=2014年2月/営業時間=午前11時半~午後3時半、5時半~11時、水曜定休/坪数・席数=7坪・11席/客単価=約1000円/1日の平均来店客数=40人(昼)、60人(夜)
●愛用資材・食材
「カエンペッパーパウダー」 ギャバン(東京都中央区)
ピリ辛料理の必需品
赤く熟した唐辛子を乾燥さてパウダー状にしたもの。非常に辛味(カプサイシン)が強く、ピリ辛メニューの必需品。「自家製ラー油には10種類以上のスパイスが入っていますが、カイエンペッパーは辛さの決め手です。味が締まりますね。ギャバンの製品は品質に定評がありますから、信頼して使っています」
規格=1kg