フードコンサルティング 上場企業にモノ申す(38)ホットランド 世界初!たこ焼きで上場果たす

2014.12.01 429号 11面

 「ホットランド」と会社名を言われても聞き慣れない名前ですが、「築地銀だこ」と聞けばご存じの方も多いはずです。創業者の佐瀬守男社長が出身地の群馬県桐生市にて1988年に創業、1997年に現在の主力業態となる「築地銀だこ」をオープンして以来、今では400店を超える和風ファストフードチェーンに成長し、遂に今年9月には東証マザーズに上場を果たしました。

 ■多様な業態アレンジ

 ここ数年、フードコートへの出店や宅配事業への参入、「銀だこハイボール酒場」や「銀だこカフェ」などのアレンジ展開を進めており、街中でも見かける機会が増えてきています。

 また、同じ粉モノとして「銀のあん(薄皮たい焼き)」や「クロワッサンたい焼き」なども始めており、これに「コールドストーン」の買収や、イオンモールとの合弁事業の立ち上げ(新業態「The Coffee Bean & Tea Leaf」の展開を予定)などのニュースも出ていたことから、業績が伸びているという印象もありました。

 実際、業績面でも2009年12月期が売上高145億円、経常利益7億円(353店舗)から、直近2013年12月期では売上高206億円、経常利益10億円(484店舗)と、いつの間にか着実に数字を積み上げて実績を出してきたのです。

 ■タコの6次産業化を実現

 同社の特徴として特筆すべきは、主要な原材料である「タコ」の6次産業化(生産~加工~販売の一体化)に取り組み成功したこと、そしてわが国および世界最大のタコの買付業者であることです。

 6次産業化については、同社の場合は、たこ焼きのメーンの食材である「タコの確保が最大の経営課題」と社長が言及するほど、まとまった量のタコを確保し続けることに苦労してきました。そのため、国内はもとより中国とベトナムではOEM工場を設立したほか、遠くアフリカのチュニジアやモロッコにまでタコの確保のため直接取引を行うなど、タコの確保のためなら一切の努力を惜しまない涙ぐましい取り組みを続けています。

 これに留まらず、ついにはタコの完全養殖を研究する「石巻水産研究所」を東北大学や地元の養殖業者とともに設立。真ダコの完全養殖が実現すれば世界初となるそうで、近畿大学のマグロの完全養殖に成功したわが国の水産技術をもってすれば、近い将来、「完全養殖銀だこ」が店頭で焼かれる日は近いのではないでしょうか。

 ■成長に対する疑問符を払拭できるか

 ホットランドが上場申請をしたというニュースに対して、外資系証券の知人から聞かれたことが、「いつまで成長が続くか」という率直な疑問でした。

 たしかに外食企業とはいえ、「たこ焼き」という業態は個人事業主が主体の店がほとんどであり、単価も低く日常食でもないことから、今後の持続的な成長に疑問を感じる向きがあることは理解できなくはありません。

 一方、当社も上場当日(9/30)に「成長可能性に関する説明資料」というIRリリースを2本発表しています。つまり、先ほどの外資系証券の知人がもった疑問は、投資家だけでなく東京証券取引所からも質問があったと考えて良いでしょう。裏を返せば、同社の上場はそれだけ珍しい業種業態であり、東証も判断に迷ったのだと察します。

 これらに対し「持続的な成長を可能にする要素」として、(1)「大釜屋」の買収(シナジー)効果(2)新規事業の開始(3)「クロワッサンたい焼き」のヒット(4)SC内・国内出店余地などへの出店攻勢(5)アジア諸国への出店加速(6)「タコ」の安定的な調達、の6点を挙げています。

 いずれも、佐瀬社長の手堅さが色濃く反映されていると感じますが、投資家を納得させるためには、やや迫力不足ではないでしょうか。投資家が期待していることは、例えば「和食文化の発信、普及」や「世界展開」「たこ焼きのブランド化」などです。

 ◆フードコンサルティング=外食、ホテル・旅館、小売業向けにメニュー改善や人材育成、販売促進など現場のお手伝いを手掛けるほか、業界動向調査や経営相談などシンクタンクとしても活動。

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