外食史に残したいロングセラー探訪(92)ニューミュンヘン本店「阿波乙女鶏の唐揚」
◆ビールとの相性抜群!不動の人気メニュー 骨付きを豪快にカットして揚げる
大阪に、客のほとんどが唐揚げを注文するというビアレストランがある。「阿波乙女鶏(あわおとめどり)の唐揚」を出す「ニューミュンヘン本店」だ。唐揚げの鶏は、時代によって変化してきたものの、メニュー入りして約55年、基本の特製つけ込みだれや、唐揚げにふりかける独自に調合した塩の味わいは、大きく変わっていない。抜きんでた人気を誇る一品となっている。
●商品の発祥:これはビールに合う!
「ニューミュンヘン」の開業は、ドイツ風の本格ビアホールがまだ珍しかった1958年。当時のビアホールは、するめやナツ類などの乾き物が主流の中、同店では料理に力を入れていた。
当時社長の佐野氏は、東京で唐揚げを食べ「これはビールに合う!」と感動する。すぐに、大阪にいた料理長を東京へ呼び、食べさせ、試行錯誤が始まった。鶏を漬け込むたれはもちろん、唐揚げにかける塩やコショウなども工夫をしてブレンドした。
現在は、徳島県産の神山鶏で、軟らかな雌鶏のみを使っているため、「阿波乙女鶏の唐揚」と名付けた。
●商品の特徴:醤油ベースのジューシーな味わい
同店の唐揚げには、3つの特徴がある。骨付きであること、特製の漬け込みだれを使うこと、独自のブレンドラードで揚げること、である。
胸肉と手羽元を骨ごと豪快にカット。骨から出たエキスが肉に染み込むことで、うま味が増す。1つが大きく、かぶり付く楽しさもある。漬け込みだれは、醤油ベースで、ニンニクや卵は使っていない。「ポイントとなる調味料は、残念ながら企業秘密で言えません」と、上杉竜太郎取締役専務。たっぷりの油脂で、たくさんの鶏を揚げると、一層おいしくなるという。家庭では出せない味わいだ。
●販売実績:抜きんでた人気
「阿波乙女鶏の唐揚」は、テークアウトメニューとしても人気。飲料を除き、注文数が最も多いのが、店内注文での同品。次に持ち帰りの同品。3位に枝豆がくるという圧倒的な人気を誇る。
クリスマス期間は、本店前にブースを作り、テークアウトに対応する。1日1000人分以上売れる日もある。
ビールに合う料理として開発された唐揚げ。上杉専務は、「使用する鶏は、よりよい食材を求めて変化してきました。現在は、徳島県産の平飼いなどのこだわりをもつ特別飼育鶏に落ち着いています」と話す。肉質や味わいだけでなく、トレーサビリティーのしっかりした安全な地鶏を選んでいる。
●企業データ
社名=ニューミュンヘン/本社所在地=大阪市中央区千日前1-8-20/店舗数=ビアレストラン・10店、レストラン・1店、デリカショップ・3店/事業内容=飲食店経営。飲食料品の販売他。創業者の佐野鶴松氏と東口繁太郎氏は、戦友だった。「生きて帰れたら、生まれ故郷の大阪で働こう。死んだ気でやろう」と、語り合ったという。