ガチで語ろう!有力業務用卸覆面座談会 本当に強い業務用食材
アベノミクスで株価が上がり、景気が良くなっているとはいうものの、外食産業では今ひとつそれが実感できないのが現状。加えて、円安による輸入原材料の値上がりや豚流行性下痢などによる痛手で、食材の値上がりには終わりが見えない。しかし、そんな中でも繁盛店は健在だ。2015年の売れる店、はやる業態は何か? 業界を知り尽くした業務用食材卸の精鋭が大予測した。
(司会=「外食レストラン新聞」編集長・岡安秀一)
●出席者
・A氏 中堅卸・外商部次長(47歳)
入社25年目。業務用食材卸一筋。支店営業を10年、メーカー出向を3年経験した後に、営業本部長を経て現職に。大手顧客開拓に多忙な日々を送る。
・B氏 中堅卸・営業本部長(46歳)
入社15年目。元・大手食品メーカー勤務。得意分野は居酒屋への提案営業。コンサルティング的営業でユーザーの信頼を得る。
・C氏 大手卸・営業課長(45歳)
入社13年目。大手外食チェーンから転職。仕入部と営業部を経験した視点から業界を鋭く分析する。現場重視で飲食店をとことん回る営業を展開。
◇市場動向とユーザーニーズは?
●依然低迷の外食産業 アベノミクスとは無縁
司会 昨年4月の消費増税の影響は?
A氏 お客さんは1997年の3%から5%への増税を1回経験しているので、今回の増税の影響は、前回に比べると小さいといえるだろう。弊社の売上げについていえば、4月の増税直後は、前年同月比で約15%落ち込んだが、5月に入って前年並みに戻った。6月以降は、増税の影響なしといえる。
B氏 前回の増税時に比べると、増税前の買い込みもかなり減り、一部の店に限定されていた。
C氏 弊社では増税前の買い込みの影響で、4月は売上げが落ち込み、このままズルズル落ちるのではないかという懸念があったが、5、6月で立ち直った。2015年10月の増税が見送られ、16年4月に実施される見込みだが、増税の影響が出るのは前後1、2ヵ月だけではないかと思う。
A氏 増税直前の買い込みで商品の配送が追いつかず、トラックの手配にてんやわんやの食品メーカーもあったようだが、終わってみると案外すんなり収束したようだ。
B氏 買い込み需要も確かにあったが、店舗規模によっては買い込んだストックを置くスペースがない店もある。また店によっては、10万円買っても、増税分はたかだか3000円だから、慌てて買い込むよりも、3000円分を他の出費で抑える方が賢明と判断するところもあった。
C氏 メニュー価格を税別価格に改定して値上げをした店は、増税直後は多少、来客数が減ったようだが、すぐに持ち直し、6月に入ると増税前よりも売上げが好転したという話を聞いた。税別価格で値上げしただけではなく、それに見合うようにメニュー内容を見直し、より付加価値の高いものするなど企業努力をした成果だと思う。増税で一時的に外食からお客が離れても、メニューがよければ戻ってくる。一方、4月のタイミングで値上げできずに、税込み価格のままの店は、実質的に増税分が持ち出しになるので苦戦しているようだ。
A氏 都内の「予約が取れない」といわれている繁盛店にスポットを当てれば、景気がよくなっている印象を受けるが、そういう店はもともとはやっていた店であり、それ以外の一般の店に関しては、アベノミクスの経済効果がどこまで浸透しているかは疑問だ。
B氏 外食産業の景気は依然として悪く、アベノミクスとは無縁といえるだろう。いわゆる“中食”がますます強くなり、外食は苦しい状況にある。個人的にもアベノミクス効果は実感できない。3%の増税分、給料が上がったわけではないし、インフレで物価は上がるが、給料は上がらないというのが実情。同じように感じる一般消費者が多いので外食が低迷し、中食が伸びるのだろう。
◇好調な業種、業態は?
●好調なのは独自路線 店の経営の仕方で差が
司会 そんな中で好調な業種や業態は?
C氏 医療施設や高齢者施設といったメディケア市場では外食卸が安定的に伸びている。
B氏 都内に通勤している人たちのベッドタウンになっている近郊都市は、都心まで1時間足らずの近い立地にある店でも繁盛するのは難しい。居住者は多くても、その人たちが実際に外食するのは都心の店であり、地元の店にはなかなかお金を落としてくれない。
A氏 流行に乗る店も少なくなっていると思う。去年の夏、世間では「アサイーボウル」が話題になったが、メディアで騒ぐほど本格的に取り組んだ店は多くないのでは。本来なら“流行もの”にうまく乗って消費者の需要をつかんで売上げを伸ばしたいところだが、実行できている店は少ない。
C氏 90年代はちょっと話題になっている面白いものがあれば、食品メーカーが商品化して、それを店側もキャッチしていたが、2000年代に入ってからはメーカーが仕掛けても、店側がそれに乗ってこない感がある。
B氏 それでメーカーは売上げ的にも、商品開発的にも苦しい状況にあるのだと思う。
A氏 売れる、売れないは業種や業態によって分かれるのではなく、その店次第だと思う。たとえば、焼肉店とラーメン専門店が売上げを伸ばし、和食居酒屋が落ちているという統計データがあるが、データはあくまでも業界全体の傾向を表すもので、和食居酒屋でもはやっている店はあるし焼肉店でも客数の少ない店はある。要するに業種の問題ではなく、店の経営の仕方によってはやる、はやらないの差が出るのだと思う。はやる店はどんな業種でもはやるし、はやらない店は同じ業種の他店がいくらはやっていてもだめ。二極化が進んでいるのが、飲食業界の現状ではないか。
C氏 メニューの質を落とさずに価格を下げるとか、従業員の教育が行き届いている店とか、いかに企業努力をするかにかかっていると思う。
A氏 安ければはやるというものでもない。高くても他店との差別化を図り、その店でしか食べられないメニューを提供している店は集客できている。反対に、安くても特徴のない店は埋没していく傾向にある。
B氏 価格競争に振り回されない店は強い。デフレ時代の安売り合戦が一段落して、飲食店も一歩前進した感がある。価格だけを追うと歪みが生じることを店側も消費者も気付いたということだろう。
●業務用活用が決め手 慢性的人手不足解消に
司会 外食産業の人手不足については?
C氏 牛丼店や居酒屋チェーン店の雇用問題がニュースになったが、飲食業界の人手不足は慢性的にある。
B氏 飲食業界は給料が安くて、労働時間が長いから、若い人は敬遠するのも仕方ないだろう。時給が安い店にはパートもアルバイトも集まらない。店側としては時給を上げたくても、売上げが伸びないので、上げるに上げられないギリギリの状況だ。
C氏 最近は大手老舗ホテルでもビュッフェ形式の提供が増えている。ランチビュッフェは8~9割のホテルが実施しているのではないか。ビュッフェが増える背景にも人手不足がある。
A氏 料理人が育たないという問題もある。飲食店は労働時間が長いというが、働く時間を制約して人を雇っていたら、料理人としての修業が成り立たなくなる。修業時代は親方のもとで時間に関係なく働き、給料も安いというのが料理人の世界。その修業を経験したからこそ、一人前の料理人になれる。何時から何時までとタイムカードのような働き方では、若い人を料理人として育てるのは難しい。
B氏 加えて、今の若い人は食べることへの関心が低い。食に関心がなければ、それを自分の生業にしようとは考えないだろう。
C氏 確かに食べることにお金をかけなくなった。外食の値段は牛丼店が基準で、それ以上だと高いという感覚だ。スマホなどの通信費にはお金をかけるが。
B氏 料理人不足への対策なのか、居酒屋やバルなどの業態で料理人なしの店が目につくようになった。それを可能にしている大きな要因が業務用食材だ。オペレーションが容易なのでアルバイトでも提供でき、料理人なしでも店が回る。さらに、今どきの業務用食材は品質が高い。
A氏 日本の若い人の飲食業離れが進むなか、外国人を雇うことで人手不足をカバーしている店もある。真面目に働く優秀な外国人労働者を活用していくためにも、業務用食材は有効だろう。
●顧客層の絞り込みを 業種・業態特化も有効
司会 今後、飲食業界が狙うべき顧客層は?
A氏 “団塊ジュニア”と呼ばれる1970年代生まれ、今40代の人たちはファミレスやファストフードを満喫した層で、外食の魅力を知っている。この年代層がこの先、50代、60代になるので、飲食業界や食品メーカーは年代層を上げたメニューや商品を開発するというのも手だ。
B氏 最近の若い人たちは食べることへの興味が希薄で、お金をかけない。若者相手の商売だと価格競争になりがちだ。その点、こらから50代、60代を迎え、教育費や住宅ローンが一段落した層は、経済的にもある程度ゆとりが生まれるだろう。この年代層をターゲットにした商売の方が、繁盛する可能性が大きいかもしれない。
C氏 ターゲットを絞り込むことは重要だ。子どもから大人までと広げるとブレる。自分の店がどの層を狙っているかが明確な店は、実際はやっている。
A氏 年齢層だけではなく、業種・業態も絞り込んだ方がいい。ラーメンからレバニラ炒めまで何でも出す、いわゆる大衆中華料理店は苦戦しているが、ラーメン専門店のようにラーメンに特化した店は、はやっている。その店にしかないオリジナルスープで差別化すれば、お客は遠くからでもわざわざ食べに来る。
B氏 居酒屋でも全国の日本酒を集めているなど、何か突出したものがある店は強い。あるいは、今はやっているB級グルメに乗っかったB級グルメ専門店とか、観光客が多い地域に出店して観光客をターゲットにした店にするなど。客層を絞り込むと一見、パイが小さくなる気がするが、そこを確実に取った方がいい。大きく網を投げると、かえって何も取れないように思う。
C氏 10人のうち1人でも「この店はうまい!」と言えば、繁盛店になる可能性がある。今の時代、インターネットの情報発信力は大きいので店の評判は瞬く間に広がる。
B氏 ラーメン店でいうなら10~15席の小さな店が行列を作っている。行列がお客を呼び、さらに繁盛するという循環だ。
C氏 地方の駅前などで、古い居酒屋を改装したような立ち飲みバルがはやっているのを最近よく見かける。そういう店も10~15席の小規模店舗だ。繁盛店になるには、これくらいの店舗規模がふさわしいかもしれない。
A氏 小売店を見ても、大手スーパーが広い駐車場つきの大型店を郊外にどんどん展開しているが、店舗規模を考えると、売上げは今ひとつといった状況。それに比べると、店舗規模の小さいミニスーパーが、地元の人が必要とする商品を提供する地元密着型の商売で繁盛している。飲食業も店構えは小さくても、地域の人たちの食堂的な店が見直されるのではないか。
B氏 店舗規模や立地では成否は予測できない。いい“箱”で、いい料理を安価で提供したからといって、今の時代、はやるとは限らない。従業員教育が行き届き“おもてなし”のサービスを提供できないと集客は難しい。サービスで差別化することも、店の個性になっている。
◇最近の売れ筋商品は?
●メーカー値上げ必至 利益率まで計算提案も
司会 業務用食材の近況は?
A氏 去年は流行性下痢ウイルスの影響で豚関連が品薄になり、特にラードは80%減と痛手だった。
B氏 豚より牛の方が深刻。口蹄疫で乳牛を失った酪農家が、1から牛を育てるには時間もお金もかかる。酪農家はどこも経営的に過酷な状況だ。政府が適切な対策をとらないから、酪農離れがどんどん進んでいる。乳牛が減ったせいで、バターの供給量が著しく不足している。前年度比の5~6割程度ではないか。
C氏 去年もその前の年よりも少なくなっているから、どんどん先細りしている。去年、1回に10パック届けられたのが、お客さんに「今回は2パックでお願いします」と頭を下げている状況。しかも、需要が供給を上回っているのに、価格が上げられない。
A氏 この間、新規の顧客で「バターを持っているなら口座を開設します」という店があった。それくらいバターが不足している。
B氏 バターを添加し、風味と味わいを高めた無塩タイプのマーガリンを「コンパウンドバター」としてメーカーが販売している例もある。
C氏 それとは別に食品メーカーの動きとして値上げがある。円安で原材料コストが上がっているので、今年は値上げラッシュになる見込みだ。すでに値上げを発表している大手食品メーカーもあり、1社上げれば他社も続くだろう。
B氏 メーカーから値上げが発表された後、お客さんにその案内を出して、実際に値上げするのは、それから約1ヵ月半後。その間にお客さんに見積書などを提出して、1店ずつ納得してもらえるように説明するのが営業の仕事になる。「メーカーが値上げしたから、うちも値上げします」では通用しない。
A氏 一方、メーカーが値下げしたので卸値を下げるときには、お客さんへの迅速なアナウンスが必須だ。メーカーの値下げとリアルタイムに下げないと、わずかなタイムラグでも他の卸業者にお客さんをとられたりする。
C氏 とはいうものの、値下げ商品はなかなかない。去年、コメが値下がりしたくらいではないか。
A氏 値下がりしてもコメが売りやすいというわけではない。私が担当しているエリアでは、銘柄米でしかも安価でないと他社と勝負できない。10kg袋ではなく3kg袋の使い切りサイズで提供するなどきめ細かい対応が求められている。
B氏 店で売るときの価格設定から、利益率までこちらで計算して提案することも少なくない。業務用卸の営業には、そこまで求められているといえるだろう。
◇食品メーカーへの提言は?
●既存品フォロー大事 外国人旅行者対応がカギ
司会 食品メーカーの商品開発力については?
A氏 新商品を開発して販売を開始したのはいいものの、売れないとアイテムカットになる。そのスパンが年々短くなっている感がある。
B氏 食品メーカーも新商品を模索しているのだろう。はやりそうだと見込んで作ったけど思うように売れなかったり、自社の本来の商品分野ではなくても商機がありそうなので参入したもののピントがズレていたり。得意分野だけを売っていても売上げが伸びないので、他の分野に手を出したくなるのだろう。現場を見ている営業マンにとってみれば、参入の余地はないと思うものでも会社の判断なら仕方ない。現場と商品開発部門がズレている印象を受けることもある。
C氏 各メーカーとも次々新商品を発表しているが、似たようなものが多い。同じような商品のグラム違いとか見た目が少しだけ違うとか。自社の従来品や他社の類似品も少なくない。それをいちいち仕入れていたら、在庫がパンクする。
B氏 メーカーから新商品の案内があっても、すぐ採用しない。サンプル品でまず営業の当たりをみる。
A氏 うちは新商品の導入については、かなり限定している。同じような商品の在庫を抱えても仕方ない。またロット単位で確実に売れる商品しか仕入れない。たとえば、うちがメーカーから10個入りで買ったのに、お客さんに6個しか売れなかったら、4個分の赤字になる。従来品なら売り切る予測が立つが、新製品だと難しいので、その分も慎重にならざるを得ない。
B氏 本当の意味での新商品が少ないので、ヒット商品も出ない。単品でビッグヒットを呼ぶ商品が出なくなって、もうずい分たつ。メーカーの商品開発力に期待したいところだ。
C氏 新商品開発もいいが既存商品のフォローも大事。売れなくなるとすぐに終売にしたり、放置されることが多いが、その商品の特徴や活用法などを繰り返し、じっくりと提案してほしい。売上げは小さくても長く売れている商品は、確実に需要があるということ。コストをかけて開発した商品だからこそ、開発した以上、腰を据えて売る覚悟がメーカーに求められていると思う。
B氏 もうひとつメーカーに提案したいのが、外国人旅行者へのメニュー対応だ。安倍政権は2020年の東京オリンピックまでに外国人旅行者を現在の1000万人から2000万人に倍増する目標を掲げている。外国人旅行者は3食とも外食することになり、外食産業としてはまたとない収益増のチャンスだ。
しかし、個々の店では言葉の問題があり、外国人旅行者に十分に対応し切れていないのが現状。そこで食品メーカーが英語、中国語、韓国語などで書いたメニュー説明を提供してもらえると助かる。たとえば「鉄火丼」とはどんな食べ物で、どうやって食べるのか、どんな調味料をかけるのかなど。
A氏 確かに、そういうリーフレットがあると助かる。本来なら店が独自で用意したり、卸の営業が提供するものなのだろうが、店も卸の営業も日常業務が忙しすぎて、とてもそこまでは手が回らない。そういうきめ細かい配慮ができるメーカーの商品なら、店も喜んで使ってくれるはずだ。メーカーにぜひとも検討してほしい課題といえるだろう。
司会 ありがとうございました。今後の展開に期待します。














