メニュートレンド:つけカレーパン カレールウとパンのセットで提供
“カレーパン”といえば揚げパンが定番。揚げない焼きカレーパンも今は珍しくはない。しかしルウをパン生地で包あんせずに、ルウとパンを別に梱包してセットで提供するカレーパンとなればオリジナル感が一気に増し、他店との差別化が打ち出せる。JR常磐線・亀有駅から徒歩8分にある、ベーカリー「グリーン フィールド」の「つけカレーパン」がにわかに注目を集めている。
●生地でルウを包あんしない新スタイルで差別化 週替わりで具を替えてリピーターを獲得
「つけカレーパン」は、自家製カレールウを入れた耐熱カップにビニール袋で梱包したパンをのせて販売している。耐熱カップのまま電子レンジで約20秒加熱したルウにパンを付けながら食べるという、新しいスタイルのカレーパンだ。
ルウは、新井田直樹店長が以前から自宅で作っていたというオリジナル作品。2年半前に開業したとき、このルウを使ってカレーパンを提供することを考えたが、水分が多いルウのために包あんするのが難しかった。
「ルウをいったん冷凍してから包あんして焼く方法も試しましたが、水分が多いので焼いているうちにルウが沸騰して、パン生地が破れてしまうんですね。焼き温度を下げたりもしましたが、結果は同じ。ルウに小麦粉を加えてルウを硬めにすれば、包あんも容易だし、焼いても破裂しませんが、ルウの食感が変わっておいしくない」と新井田店長。「ルウをいじらずに、なんとか商品化できないか」と試行錯誤を繰り返してたどり着いたのが、つけカレーパンというわけだ。
新井田店長は「揚げたカレーパンは最初から考えていなかった」と言う。カレーパンに限らず、同店には揚げパンは一つもない。その理由は「夫婦2人でやっているので、揚げる工程まで手が回り切らないと考え、開業時からフライヤーを設置することは考えていませんでした。オペレーションを簡単にするために“焼き”一つに絞っています」。
ルウは約24cmの寸胴鍋でみじん切りの玉ネギの6~7個分があめ色になるまで約2時間炒めたのち、ターメリック、クミン、コリアンダー、ガラムマサラ、ジンジャー、フェネグリーク、カエンペッパー、カルダモン、シナモンなど12種類のスパイスを加えてさらに炒め、牛乳を加えて混ぜながら弱火で約1時間煮込む。水と小麦粉は一切加えず、玉ネギと牛乳だけでとろみをつけた、スパイスの香りが際立つ上質なルウだ。このマスタールウを5日分に小分け冷凍し、解凍した当日分に牛乳を加えて仕上げる。8割が地元客の同店では、客を飽きさせないために多品種少ロットでの提供が必須。新井田店長はひとりで1日60~70種類のパンを焼き上げる。つけカレーパンは1日10個の限定販売。
当初はこのルウだけだったが「常連の地元のお客さまにリピートしていただくために、週替わりの具を入れるようにしました」と言う。具は半熟ゆで卵、チーズ、ハンバーグ、夏野菜(ナス、パプリカ、ズッキーニ)、唐揚げなど。次の具を何にするか、新井田店長は常に頭を悩ませているが、最近では客からのリクエストもあるという。
「つけカレーパンだけではなく、うちのパンのフィリングの8割は業務用食材を使用しています。パン生地に合う業務用フィリングがもっと増えると、個人でやっている店は助かりますね」と地元客に愛される小さなベーカリーは繁盛している。
●店舗情報
「グリーン フィールド」 所在地=東京都足立区東和2-18-9/開業=2012年6月/営業時間=午前6時30分~午後7時(商品がなくなり次第終了)。水・木曜定休/坪数=12坪/1日平均客数=平日約70人、土・日・祝約100人/平均客単価=700~800円
●愛用資材・食材
「ネスカフェ エクセラ」 ネスレ日本(兵庫県神戸市)
カレールウのコクを増す隠し味
微粉砕した焙煎コーヒー豆の粒を包み込む「ひき豆包み製法」で、いれたての豊かな香りとコーヒー本来の味わいを実現。「ルウのコクを増すために最初、黒砂糖を加えてみましたが、しっくりこない。コーヒーはどうかと思って試してみたら、この商品の深煎りならではの苦みとコクが自分のイメージにぴったりでした。隠し味に欠かせません」(新井田店長)
規格=230g