外食の潮流を読む(94)急成長スーパー、ロピアが飲食業に参入、焼肉チェーン展開図る

2023.04.03 530号 11面

 スーパーマーケットチェーンの「ロピア」は奇跡の急成長企業である。一番の特徴は商品が良質で廉価であること。店名の由来は「ロープライスユートピア」。1971年、神奈川県藤沢市で精肉店として創業し、現在71店舗(2022年11月末)、22年2月期の売上高が2469億円となっている。この急成長をけん引するのは13年に2代目社長に就任した高木勇輔氏(40)。就任当時の売上高が501億円であるから、9年間で5倍に。そして「2031年2兆円」を掲げている。

 ロピアは19年1月、外食事業会社のeatopia(イートピア)を立ち上げた。イートピアの代表取締役社長に就任したのは山科博昭氏(37)。山科氏は慶應義塾大学のテニスサークルで高木氏の後輩にあたる。日本IBM、そして外資系金融機関へと進むが、高木氏から「実業の世界で一緒に会社を成長させる夢を見てみないか」と誘いを受けた。

 最初の仕事は、ロピアがM&Aしたばかりの惣菜・食品メーカー利恵産業の代表。営業は当初苦戦したが、ロピアの理念どおりに商品化したチーズケーキが大ヒット。そして18年の秋、山科氏は次のステージとして高木氏から外食事業分野の開拓を要請された。

 そのテーマは2つ。まず、ミシュランの星付きのブランドを育てて海外に輸出すること。もう一つは、このブランドの調味料や食品を開発し、ロピア限定で販売すること。その第1弾として19年11月、焼肉店の「銀座山科」(客単価1万9000円)をオープン。20年8月に一つ星の熟成肉料理店「小石川中勢以」をM&A。そして22年4月、銀座4丁目交差点のビル11階に焼肉・鉄板料理の「本店山科」(客単価3万2000円)をプレオープンし、8月にグランドオープンした。

 山科氏は高級店を展開する中で、客単価5000円という中価格帯焼肉店の構想を抱いていた。しかしながら、当初のテーマは前述したとおりの「世界に知られる高級店ブランド」。山科氏の構想について、高木氏から「当初のテーマが軌道に乗ってから」と言われていた。すると、ロピアの神奈川エリアの旗艦店が入居する「港北TOKYU S.C.」5階に物件が出た。すかさず高木氏に「客単価5000円の焼肉店」の出店を申し出た。

 その店は「焼肉 ギュウトピア」(52坪70席)、昨年8月にオープンした。土日祝日にはファミリー客中心のウエーティングが続くが、オペレーションがスムーズでお客が回転する。

 また、ロピアでは21年12月“料理の鉄人”道場六三郎氏の会社をM&A。ロピア店舗で道場ブランドの惣菜や調味料を販売。「ギュウトピア」の中にも「『和の鉄人』道場六三郎のトリュフの焼きすき」をラインアップして人気メニューとなっている。

 山科氏は、高級店、中価格帯に続いてポピュラープライスの可能性も示唆する。会社が設立して3年、イートピアはロピアグループ年商2兆円の一翼を担う企業としてまい進している。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

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