業界TOPICS:外食企業で加速するSDGs

2023.09.04 535号 12面

食品ロス削減の取り組み「mottECO(モッテコ)」

食品ロス削減の取り組み「mottECO(モッテコ)」

 ◆食べ残し持ち帰り定着へ 植物ミート下火傾向

 持続可能な循環社会の実現に向けたSDGsの取り組みが、外食産業でも拡大している。サステナビリティの意識は企業が向き合うべき社会課題として、積極的な施策が今後ますます求められていくはずだ。外食企業におけるサステナビリティ関連の取り組み事例として「食品ロス削減」「サステナブル食材活用」「脱プラスチック」について、大手外食企業にアンケート調査を実施した。

 ●食品ロス削減、脱プラに注力

 大手外食企業では、「サステナビリティ」というキーワードが認知される以前からその視点を理念に掲げているゼンショーなど、環境問題への配慮や貧困撲滅を目指してきた企業も見られるが、取り組みが本格化した時期は2020年前後からという外食企業が多い。

 「食品ロス削減」の取り組みは、コスト削減に直結する点からも、各社ともにDXを活用するなどさまざまな方策を模索している。消費者が益する身近な例としては、ドギーバッグの普及が挙げられるだろう。19年に施行された「食品ロス削減推進法」を契機に大手ファミリーレストランなどでは相次いで「食べ残しを持ち帰る容器」の提供をアピールするようになった。22年末には、忘年会や新年会などの会食に向けて、農林水産省、消費者庁、環境省、地方公共団体ネットワークが共同で「おいしい食べきり」全国キャンペーンを開始。23年5月には外食、ホテル運営企業6社と東京都杉並区が共同で、食べ残し持ち帰り文化の普及に取り組む「mottECO(モッテコ)」事業の推進を表明するなど、以前はどこかタブー視されていた「外食店における食べ残し持ち帰り」が定着し始めた。

 また「プラスチック資源循環促進法」が22年4月から施行されたが、質問に回答した左表記載の外食企業のすべてが「脱プラスチック」に向けた取り組みを推進。バイオマス素材を使ったレジ袋や容器、カトラリー、紙製ストローなどを積極的に導入している。特に19年11月にセブンイレブン、20年8月にはすかいらーくグループやルノアール、21年2月からはスターバックスコーヒー、22年10月にはマクドナルドなど、大手コンビニエンスストアや人気の外食企業が始めた紙製ストロー導入、プラスチックストロー廃止の動きは、「飲料の味を損なう」として物議を醸したが、消費者にサステナビリティを強く意識させるきっかけにもつながった。現在ではストローの脱プラもすっかり定着している。

 「サステナブルフード=環境、社会に配慮した持続可能な食材」の取り組みは、外食企業では「資源、自然環境の保全」「生産地におけるフェアトレード」「プラントベース食材の活用」の視点で展開する例が多い。大豆ミートなどのプラントベース食材を使った商品開発は、消費者にとって“健康感”というわかりやすい訴求力があることからも一時、盛り上がりを見せたが、その勢いが現在ではやや下火になっている感が否めない。食の多様性への配慮からもメニューに据えてはいるものの、人気メニューに肩を並べるほどには至っていない、というのが多くの店の実情だろう。消費者から一定の支持を得るためには「本物の肉の味には及ばない代替肉」というイメージを払拭(ふっしょく)し、「肉、魚に次ぐ第三のミート」としての立ち位置を今後、確立できるかが分岐点になりそうだ。

 ●現場対応困難で中断も

 SDGsに向けたこれまでの取り組みで、中断、廃止した事例についても各社に質問した。「特になし」「無回答」とする企業が多い中、くら寿司、トリドールホールディングス(HD)の2社が回答を寄せた。

 くら寿司は獲れた魚をその地域で加工、販売する「地魚地食」の取り組みを進め、11年に五島列島の魚を全国で販売した。しかし、地魚の安定調達が困難なことと、商品調達から提供までを顧客にリアルタイムでアピールする仕組みが構築されていなかった点からも販売を断念。その後、全国を22の地域に分けて各地で別展開することで少量の魚でも取り扱えるようにし、SNSで情報発信する体制を整え、「くらの逸品」シリーズとして23年、再スタートした。

 トリドールHDでは、未活用麺(うどん)を原材料にしたドーナツを商品開発し、試験販売を実施した。結果、うどんの水分がフライヤー内の油の劣化を進めてしまい、油という天然資源の無駄使いになってしまうことが判明。店舗でのオペレーション負担が想定以上に大きかった点からも、販売を中止した。この検証を踏まえ、現在も未活用麺を原材料とした別商品の開発を継続している。

 ※食品ロス削減の取り組み「mottECO(モッテコ)」

 「mottECO(モッテコ)」は、店で食べきれなかった料理を消費者が自身の責任において持ち帰る食品ロス削減のプロジェクトで、環境省が推奨。現在、デニーズ、ロイヤルホスト、和食さと、日本ホテルグループなどが共同で取り組んでいる。外食店において、消費者が食べ残しを持ち帰ることで削減できる食品ロスは年間80万tとも推定される。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら