業務用食品卸覆面座談会 外食産業の現状と25年展望 外食業界を知り尽くす裏方が本音語る

2025.01.06 551号 12面
【A氏おすすめ】ハナマルキ「ハーブ&スパイス塩こうじ」

【A氏おすすめ】ハナマルキ「ハーブ&スパイス塩こうじ」

【B氏おすすめ】エバラ食品工業「明太子ソース」

【B氏おすすめ】エバラ食品工業「明太子ソース」

【C氏おすすめ】味の素冷凍食品「シェフが仕上げる ベースキッシュ」

【C氏おすすめ】味の素冷凍食品「シェフが仕上げる ベースキッシュ」

【D氏おすすめ】ヒガシマル醤油「割烹関西牛だしつゆ」

【D氏おすすめ】ヒガシマル醤油「割烹関西牛だしつゆ」

 人手不足、物流問題などが憂慮された2024年。大きな混乱は避けられたが課題は積み残されたままであり、25年はそれらの問題が顕在化しそうだ。食品メーカーと飲食店をつなぐ業務用食品卸は業務用製品の貯水ダム的な役割を果たしてきたが、納入の時間規制、リードタイムの延長などにより従来通りの商習慣ではフォローしきれなくなる可能性が高い。これを回避し、外食産業が食を通して消費者の健康、楽しさなど社会的責務を果たすためには製造・卸・飲食店の相互理解が必要だ。業務用食品卸トップ4氏に25年の展望などを語り合っていただいた。(司会=外食レストラン新聞編集部)

 ●若者確保へ魅力向上を

 –2024年の外食市況を振りかえると。

 A氏 一定の水準までは戻ってきた。しかし、人手不足でフル回転できていないというもどかしさを感じた一年だった。

 地域に根差して堅実に経営している個人店は堅調だ。店主の考え方もブレることはないため、値上げしても固定客が付いている。

 B氏 当社は売上げは維持しているが、これ以上伸びる要素が見当たらない。天候の影響もあったと思うが、財布のひもが固くなり、ゴールデンウイーク明けから外食離れが顕著になってきた。

 当社の得意先は個人店が多い。首都圏は個人店の開店が少なくなっている。大箱をやろうという経営者もいない。再開発が進んでいるが、そのビル内に店舗を構えるのは個人資本では無理。頑張っている個人店は昔からの店舗が多く、高齢化が進んでいて廃業も多い。それを埋めるだけの開店のペースはない。

 C氏 23年はコロナバブルで勢いがあった。しかし、当社の売上げは、B氏同様にゴールデンウイークあたりから厳しくなってきた。値上げもあって、売上げは確保できているが、物量を見ると厳しい。

 観光地はインバウンド効果で好調だ。中国のインバウンドも増え、欧米プラス中国人で多くの人を集めている。観光旅館に話を聞くと「満館だが、人手不足でサービスに手が回らない」という。満館といっても従来の3分の2程度しか人を入れられないそうだ。

 都内は人手を確保できている店はランチ、ディナーともに営業できるので好調だ。しかし、人手が確保できていない店はディナーのみで厳しいという。人手を確保できている店は、コロナ禍でも人を手放さなかったところ。コロナ禍でばっさりと切った店は人が戻っていない。

 居酒屋は、ほとんどがタッチパネルか2次元コードでの注文になっている。会話レスで対応できるのでインバウンド対応や人手不足には役立っている。

 D氏 ある大手チェーンの幹部と会食した時、「今の若い人たちは、飲食で働くことにまったく魅力を感じていない」とこぼしていた。

 若い人たちの飲食店への思いが、われわれの時代とまったく違う。20代、30代の人で「外食で一旗揚げてやろう」という人がいなくなった。飲食店を開業しようとする人はもちろん、バイトをしようとする人も激減していると思う。

 –外食産業で働きたいという若い人を増やすための魅力アップ策は。

 D氏 所得アップが特効薬だと思う。

 A氏 息子が外食チェーンから内定をもらった。それから1ヵ月後、そのチェーンの業績から社員教育体制、海外展開への展望などが細かに説明されている資料が私宛に届いた。昔では考えられなかったことだ。各社採用には工夫しているなと感じた。

 給与面は悪くないが、深夜勤務とかあると親は心配になる。

 B氏 外食は、どうしても拘束時間が長いイメージが強い。

 A氏 今の時代に合わせた勤務時間体系が必要かなと思った。今の若者は年間休日120日以上などの条件を絞り込んで企業を検索するので、それ以下の休日数だとそもそも検索にもひっかからない。

 それと今は3年で辞めることが普通、辞めることを前提に就職活動をしている。これは世の中の流れだからどうしようもない。

 C氏 当社も休日120日と130日と選択制で募集すると、新卒者は圧倒的に130日を選択する。給与よりも休日重視だ。

 業務用卸を選択した理由を聞くと「食は魅力がある」という。食への魅力は感じているけれど、入社後、配達とかで遅くなると嫌になってしまう。メニュー提案などはしたいけれど、そこからかけ離れた仕事だと嫌になってしまう。これはどの業種も同様だと思う。

 ●物流問題の顕在化懸念

 –2024年に課題となったことは。

 B氏 物流が大変。得意先に「時間指定は受けられない」「ランチタイムの納入は可能な限り避けるが、仕方ない場合は認めてほしい」「休憩時間中の納品は鍵を貸してもらう、もしくは置き場所を決めてほしい」などのお願いをしている。

 給食は、厨房に15時までしか人がいない。それで「11時~13時は来るな」と言われると、「いつ行けばいいの」と。売上げも考えなければならないが、物流問題を考えるとお断りするところはお断りせざるを得ない。昔ほど人と時間に余裕があれば別だが、今はそうもいかない。ドライバーの拘束時間の規制もあるのでこれは理解していただきたい。

 受け入れ側としても大変だ。倉庫のスペースがなくて、人もいない。以前は、棚入れまでしてくれる運送会社もあったが、今は付帯業務は禁止され、店頭渡し。そうなると棚入れ要員が必要になる。

 対策として午前中納入を無くそうと考えている。午前中は出荷業務があり、配送トラックもいっぱい。そこに納入のトラックが入ってくるとどうにもならない。聞いてもらえるかどうかは分からないが、仕入先・得意先にお願いすべき事はお願いしていかなければならない。運ぶ方も大変だし、受け入れる方も大変だ。

 C氏 そこに輪をかけて、メーカー配送が翌日配送から中1日、2日にしてほしいという依頼が増えている。九州や北海道から納入される商品は中3日、月曜日に発注しても入ってくるのは金曜日。そうすると1週間分の在庫を考えなければならない。

 D氏 われわれはものすごくニッチな商品を各社持っている。お客さまから「ぜひ使いたい」と言われて在庫をしているが、すべてフォローできなくなる。出荷量の多い商品はある程度まかなえたとしても、それ以外の商品は難しい。打開策は、飲食店から注文いただいたら「明後日になります」と説明し、理解してもらうようにするしかない。

 B氏 メーンの商材はある程度予想をつけて発注できるが、たまにしか出ない商品の注文が突然来たら困る。リードタイムが短いとすぐ発注できるが、長くなるとその予測が難しい。また、注文ロットの問題もあり、単品だとロット不足で他の商品も抱き合わせで頼まなければならない。当社はそういう商品のメーカーの見直しを進めているし、そうせざるを得ない。

 A氏 昔はなあなあで通用していたことが通用しなくなってきた。

 –憂慮された(物流の)2024年問題は、25年に顕在化してくる。

 B氏 本当に大変だ。各社頭を悩ませている。

 –飲食店に対して物流問題でお願いしたいことは。

 B氏 われわれもメーカーに言うべき事は言う。しかし、飲食店にもお願いすべき事はお願いするので理解していただきたい。

 D氏 バックヤードは広めに取っておいてほしい。

 一同 その通り!

 ●大きな伸びしろに期待

 –2025年の外食産業はどうなる。

 A氏 政治は不安定。米国大統領にトランプ氏が就任し、関税問題で輸出産業は戦々恐々。2000年代前半のような感じになるのかなというイメージだ。当時のように、大手製造業が工場を撤退すると町全体が沈滞化してしまう。そういう歴史は繰り返してほしくない。

 消費者も先行き不安から財布のひもが固くなるとさまざまなニュースを見ていて感じる。人手不足で、年収の壁103万円が議論されているが、103万円の中でワークライフバランスをとって生活している消費者が、130万円に上がったら一気に働くかというと疑問だ。人手不足とのアンマッチ解消もそんなに一気に進むとは思わない。

 B氏 円安が進むと物価が上がる。食品の価格が上がると、商品価格に転嫁せざるを得ない。飲食店もメニュー価格を改定しなければならない。昨年はコメ不足で困った。コメ価格が1.5倍になると飲食店は相当きつい。それに反するようにテレビ番組で安い店の紹介、牛丼チェーンの値下げ報道など決して良いとは思わない。

 インバウンドが、「なんで日本はこんなにモノが安いのか」とびっくりするような状況の中で、外食のデフレを解消していかなければならない。全体的には解消傾向にあると思うが、外食はまだまだ。「安い」ばかりをクローズアップされると、なかなか値上げに踏み切れない。消費者の所得が上がれば良いのだが、そうでなければ25年は厳しいのかなと思う。

 C氏 24年はコロナが明けて1年、世の中が変わるという期待感が大きかったが、世界情勢や気候の問題もあって現実は期待通りではなかった。

 働く人の年齢層は確実に上がっている。企業も定年延長など元気な人に働いてもらおうとしている。そこに少し明るさはある。その人たちは量を食べられないが、多少高価なものを好むと思う。差別化していけばチャンスはあるのではないか。

 一方、残念なことだがこれから個人店は加速度的に減ると思う。

 –逆張りで、一旗揚げるチャンスも大きくなるのでは。

 C氏 確かにそれはある。しかし、昔のように脱サラでラーメン店を開業という話は聞かなくなった。

 B氏 首都圏は地代など高すぎて難しい。地方の方がチャンスはあるのではないか。

 D氏 ある人から予約困難な店に行った話を聞いた。その店は、料理はおまかせで客単価10万円以上。一番安いワインが6万円。そんな価格帯の店が予約困難な人気店になっている。店やメニューのストーリーなど、何かこだわった特徴を打ち出して成功しているところもある。

 C氏 価値が認められればお金は落とす。外食の伸びしろは大きいと信じている。

 D氏 消費者が関心を持つテーマがあって、付加価値、雰囲気が気に入れば出費は惜しまない。

 B氏 今の若い人はけっこうお金を持っている。その代わり貯金がない。宵越しの金は持たない。江戸時代に戻ったようだ。しかし、魅力さえ伝われば若者の外食支出はまだ拡大できるはずだ。

 <プロフィール>

 A氏(52歳)=飲食店、メディケアが主要得意先。給食受注のデジタル化を推進中。

 B氏(64歳)=外食、事業所給食、学校給食など幅広い得意先を持つ。まとめ役として同業からの信頼も厚い。

 C氏(62歳)=首都圏中心に関東一円に営業を展開している。近年、生鮮にも注力。

 D氏(53歳)=中華街を中心に幅広い得意先を持つ。地域活性化事業など多角経営を模索。

 ●A氏おすすめ

 ハナマルキ「ハーブ&スパイス塩こうじ」

 塩こうじは、万能調味料として定番の人気だ。それにハーブとスパイスの洋食のテイストを加えた「ハーブ&スパイス塩こうじ」は付加価値も付けやすいため、提案しやすく、さまざまな業態にはまっている。規格=120g×12、1kg×8(常温)

 ●B氏おすすめ

 エバラ食品工業「明太子ソース」

 常温のソースなので使いやすい。冷凍の明太子を解凍するなどの手間が不要で、タイパに優れている。パスタはもちろん、うどん、しらす丼、卵焼きなど、洋食から和食まで幅広く使える。鮮やかな赤色が映えて料理に彩りを添える。規格=500g×12(常温)

 ●C氏おすすめ

 味の素冷凍食品「シェフが仕上げる ベースキッシュ」

 お好みの具材を冷凍のままの「ベースキッシュ」に乗せて、オーブンで焼き上げるだけでオリジナルのキッシュができる。手間がかかるキッシュの生地作りの時間が削減されるため、ホテルなどの採用が急増している。規格=240g×9(冷凍)

 ●D氏おすすめ

 ヒガシマル醤油「割烹関西牛だしつゆ」

 牛テールのうまみと牛脂の濃厚なコクが特徴だ。試食して「うまい」と思った。関西風の肉うどんのつゆはもちろんだが、焼肉屋のスープに提案したいと思う。また、カレーのコク増しなど汎用性も高い。規格=1L×6(常温)

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