創意工夫の販売方法・中食編(14)移動販売のオムライス専門店「たるまよ亭」
「たるまよ亭」は、軽自動車で移動販売するテークアウトオムライスの専門店。ツーオーダーの出来たて調理が大人気だ。神田、日本橋、茅場町などのオフィス街を日替わりで巡回し、根強い固定客を獲得している。
看板メニューの「バジルオムライス」は、特製バジルスープで炊きあげた鶏肉入りケチャップライスを、ふわふわのオムレツでくるんだもの。ライスは弱アルカリ水で炊き上げて、ふっくらとした味わいに仕上げており、ソースに使うアルカリ水は、pH九~一〇に調整してマイルド感を訴求するなど、徹底的なこだわりを見せている。
選べるソースは「デミグラスソース」(一日半じっくり煮込んだ手間のかかったソース)、「ケチャップソース」(あっさりしたケチャップソース)、「カレーソース」(フォン・ド・ヴォーベースのまろやかなカレーソース)の三種類。狭い車内で五つのフライパンを自由自在に操り、これらのメニューをツーオーダーで提供する。
売価は全品六〇〇円(税込)で大盛は一〇〇円増し。営業時間は午前11時20分~午後1時15分(土・日・祝は休み)。わずか一日二時間弱の営業で平均五〇食売るという。
携帯電話での予約も受け付けている。だが、やはりこの店の楽しみ方は、目の前で鍋を振ってもらい、衛生的に焼かれている熱々の卵焼きをじっくり観察し、大急ぎでオフィスに帰って食べる、という一連の流れにある。実演販売にしか味わえないだいご味だ。
購入する一人ひとりの客の健康、利便性、気分転換というものをしっかり考えた「人に優しいオムライス屋さん」というキャッチフレーズがよく似合う。無店舗化、アイデア商法などによる差別化が進む中、今後の活躍が楽しみな業態である。
((株)サンエーシステム企画開発室・高橋理枝)