取って出し注目NEWS:自民党大勝、業界の期待と懸念 食品消費税ゼロ実現か
◇「日本食糧新聞」発 取って出し注目NEWS
2月の衆院選で自民党が大勝したのを受け、食料品の消費税ゼロが2年限定で実現する可能性が出てきた。食品業界では8%減税が実施となれば生活者の負担感が軽減され、スーパーの食品売上げの追い風になると期待が高まっている。一方で外食の税率10%が減税対象外となれば、業務用食材や酒類の販売が厳しい打撃を受けるとの見方も強い。加えて、足元のインフレ環境で減税メリットをどれだけ享受できるのか、2年間の時限措置が現場へ及ぼす混乱を大過なく乗り切れるのかなど、業界の反応は期待と懸念が交錯する様相を呈している。(「日本食糧新聞」26年2月13日付既報。一部編集)
●時限措置による混乱警戒も
自民党は公約で「食料品消費税2年間ゼロ」を打ち出しており、今後は国民会議で他党とも詳細について協議を行う方針。現時点では軽減税率が適用される食料品の消費税を0%にする一方、飲食店などの外食には標準税率10%を据え置く可能性が示されている。
食品業界の消費税ゼロに対する受け止め方は各社の事業構造によっても異なるが、「スーパーと外食の価格差が強く意識されるようになり、市場では内食化の動きが加速するのでは」(複数のメーカー・卸関係者)との見方が支配的だ。このため家庭用を主体に事業展開する企業については、おおむね前向きにとらえる傾向が強い。
民間調査では食品減税で家計負担が年間約6万4000円軽減されるとの試算もあり、「減税効果で心理的にも節約志向が緩和され、食品スーパーの買上点数増や高単価品の売上げアップが期待できる」(大手卸)。「外食の税率10%に割高感が強まる一方、税率0%となるスーパーの惣菜や弁当に大きなチャンスが発生しそう」(冷食メーカー)など、外食からのシフトも含む家庭用需要の活性化を想定する声も聞かれる。
一方で、足元の円安加速による原料・資材費の高騰や人手不足などのインフレ環境を背景に、減税効果をどこまで商品価格に反映できるかといった不確定要素もある。「コスト上昇の影響で食品値上げに依然として歯止めがかからず、たとえ消費税がゼロになっても店頭価格が一律8%下がるとは考えにくい」(業界筋)と見る向きもあり、減税効果が限定的となる可能性も否定できない。
与党が掲げた2年間の時限措置がもたらす業務負荷増大への懸念も強まっている。食品界は2019年に骨を折って複数税率への対応力を構築しており、卸は商品マスターの税率変更で比較的円滑に消費税0%へ移行できる見通しだ。ただし、小売業の現場では、減税前に店舗当たり数千アイテムに及ぶ値札を付け替える膨大なアナログ業務が発生する。2年後の減税終了間際には、再び同様の作業に忙殺されることが必至だ。
減税実施前の買い控えと終了前の駆け込み需要の発生も想定され、業界は短期のうちに激しい需要変動に対応を迫られる。特に税率0%から8~10%への復帰時は過去の増税と比較にならないインパクトを及ぼす可能性があり、大規模な駆け込み需要の発生に伴う食品物流のパンクが危惧されるほか、減税終了後の極度の消費マインドの冷え込みといった深刻な事態も懸念される。
すでに小売業界では食品減税の期間延長を要望する声も上がっており、政府は今後の国民会議における議論を通じて、事業者の対応負荷の軽減や市場への影響を十分に考慮した制度設計を目指す努力が求められる。
●【外食】10%継続ならテイクアウトに活路
消費税ゼロ化の枠組み次第で外食は深刻な減収リスクに直面する。事態を重くみた日本飲食団体連合会は、1月30日付で「外食を含むゼロ税率の適用」などを柱とする緊急要望を片山さつき財務大臣に手交した。
仮に外食税率が10%で据え置かれた場合、内食・中食との間で相当な税込価格差が生じる。「特に安価なランチに比重を置く店では、中食への流出が十分に起こり得る」(卸関係者A)。
こうした事態を想定し、テイクアウトやデリバリーに注力する動きが再び活発化しそうだ。飲食店はコロナ禍での営業制限の中でテイクアウトに活路を求めた経緯がある。卸にも当時の支援ノウハウが蓄積されており、迅速な対応が可能とみられる。
ただ、税率差に起因する外食不振の発生そのものに懐疑的な声も聞かれる。中食へのスイッチは複数税率が導入された19年10月にも懸念されていたが、その前後の飲食店売上げは9月1.9%減、10月6%減、11月0.8%減で落ち着いた(総務省・サービス産業動態統計)。税率差の影響が出たのは複数税率の導入月だけだった。ゼロ化によって税率差がより大きくなるとしても「外食の税率が引き上げられるわけではなく、影響が長引くとは思えない」(卸関係者B)。「不振のリスクを論じるよりも内食・中食で体験できない価値を磨くことのほうが大切だ」(卸関係者C)。
●【スーパー】「本体価格表示」は裏目か
スーパー業界には追い風となる消費税率0%だが、レジシステムや店頭値札の変更には多大な手間が伴う。反対する理由はないとしても、十分な準備期間が欲しいという声は聞かれる。
これまでの複数税率と違い、税率ゼロと課税商品が併存することで値札の表記方法に違いが出てくる。アナログの値札もデジタルの場合も、表示デザインの再考が必要だ。
追い風といっても、税率ゼロが消費意欲に与えるインパクトは額面通りにいくとは限らない。現状、ほとんどのスーパーが本体価格表示を大きく見せているので、店頭価格の印象は税率変更前とさほど変わらないだろう。本体価格表示は、消費税率の負担感を緩和する策として普及した表記スタイルだが、今回の局面では裏目に出る。
同様に懸念材料となるのが、税率変更前の買い控えだ。しかも前述のように変更後も店頭価格の印象は変わらないため、従来の税率変更で発生していた特需的な盛り上がりは期待できないかもしれない。また、イートインコーナーの利用には逆風となる可能性もある。現在の税率ルールが適用された場合、イートインを利用するハードルは確実に上がる。
とはいえ、食品税率ゼロの恩恵を最大限に受ける業界であることは間違いない。税率ゼロが続く限り、売上げベースの底上げが期待できる。
●【コンビニ】中食期待も作業負担重く
与党が検討を加速するという2年間に限定した飲食料品の消費税率ゼロはCVSにとって、中食需要の増加が期待できそうだ。一方で減税前の買い控えや増税後のまとめ買いが発生する可能性は低い。ただ、2年という短い期限は準備や作業負担を重くする懸念がある。
外食が10%に据え置かれた場合、価格差で優位になるCVSのおにぎりや弁当など中食商品や米飯類やカウンター商材など即食商品に外食から顧客の流入が見込める。
CVSでの店内飲食も10%の外食と同様に価格差が広がるが、コロナ禍でイートイン自体を縮小、廃止した店もあるためチェーンによっては影響は小さいとの声も聞く。求められるのは店内飲食が外食とみなされるイートインも購入客が会計時に店内飲食の意思確認の再徹底になりそうだ。
税率変更に伴うレジシステムの変更や店での値札の付け替え作業、PBやオリジナル商品のパッケージに記載の価格表示も対応が求められそうだ。準備期間に半年~1年と想定される中、2年限定という期間で減税時と戻す時に2回の作業は負担が重い。












