メニュートレンド:チャイニーズチキンサラダ、ブームの兆し
「ウルフギャング・パックカフェ」は、本格的カリフォルニア料理の人気レストラン。アメリカのアカデミー賞公式シェフであるウルフギャング・パック氏が作り出した「シノワチキンサラダ」は、全米で抜群の人気を誇る「チャイニーズチキンサラダ」の元祖として有名。このチャイニーズチキンサラダが日本でもブームとなりつつある。
◆「シノワチキンサラダ」 ウルフギャング・パックカフェ新宿ルミネエスト店
(株)ダブリュー・ピィー・ジャパンのプロデュースにより、日本国内では4店舗展開している「ウルフギャング・パックカフェ」。本場カリフォルニア料理を早くから日本に紹介し、アカデミー賞公式パーティーメニューの一つである「スモークサーモンピッツァ」(2000円)や、「シュリンプコブサラダ」(1580円)など、現地のトレンドを取り上げたメニューラインアップが自慢だ。
中でも、2002年の日本第1号店オープン当初からメニューに採用している「シノワチキンサラダ」(1180円)は、米国内の店舗でも一番人気といわれており、現在、注目のチャイニーズチキンサラダを世に広めた、パイオニア的存在のメニューである。
このメニューは、脂身が少ない鶏むね肉をオーブンで焼いてさらに脂を落とし、スライスカットして野菜類と合わせ、ドレッシングをあえたもの。風味豊かなチキンと新鮮な野菜を使った個性的なヘルシーサラダとして、美容と健康に気遣う多くの女性客から支持されている。
「このサラダのセールスポイントは、ハニーマスタードやピーナッツオイルなどを使った、ちょっとスパイシーなごま風味のドレッシングです。ドレッシングは、各店舗で作っていますので、常に新鮮。しかも、日本人の舌に合うようにお酢などの和風調味料でアレンジしてあるので、幅広い年齢層のお客さまにも安心して食べていただける味になっております」(同社SV・喜多村清記氏)
さらに、食感を楽しめる工夫として、揚げワンタンをトッピングし、赤キャベツ、ニンジン、白菜などの野菜は均一にカット。カリカリ、パリパリといった絶妙な歯応えと、そのバランスも特徴的だ。
また、米国内の店舗では、同メニューを提供する際に、必ず箸を添えており、日本国内の店舗においても同じように提供している。
「このメニューだけあえて箸を使っています。アメリカからアジア文化を逆輸入した感覚の新しいスタイルとして受け入れられているようです」と喜多村氏。味だけではなく、食べ方も本格的「アメリカン」にこだわる。
来年3月には、横浜の大倉山に郊外型店舗をオープン予定であり、「郊外店ということで、より手軽に来店できる、地域に密着したお店にしていこうと思ってます」と同社代表取締役社長の宮城崇氏。手軽にカリフォルニア料理を楽しめる店舗が展開されることにより、同メニューもより一層、日本の消費者に浸透していきそうだ。
●「ウルフギャング・パックカフェ新宿ルミネエスト店」
経営=(株)ダブリュー・ピィー・ジャパン/所在地=東京都新宿区新宿3―38―1、新宿LUMINE EST8階/開業=2003年10月/営業時間=午前11時~午後11時、無休/坪数席数=110坪140席/客単価=夜4000円/1日来店客数=300人/平均月商=2000万円/スタッフ=50人(1日平均18人)/ほかに「ウルフギャング・パックカフェ」4店舗、「ウルフギャング・パックエクスプレス」2店舗
◆「オリエンタルチキンサラダ」 カリフォルニア・ピザ・キッチン ラゾーナ川崎店
アメリカ国内31州および海外8ヵ国で200店舗以上展開している人気のカリフォルニア料理レストラン「カリフォルニア・ピザ・キッチン」。同店の「オリエンタルチキンサラダ」は、サラダ部門では常に上位に入る人気メニューだ。
「オリエンタルチキンサラダ」に使われている食材は、レタス、ニンジン、青ネギ、バジル、ごま、シラントロ(香草)、ひと口大にカットして揚げたカリカリワンタン、そして皮を取り除いてスライスした冷製グリルドチキンの全8種類。もともとアジアの食材や調理法を積極的に取り入れている同店ならではのレシピだ。
そして、味の決め手となるのが、ホイシンソース(甘味噌)をベースに、スイートチリソースやスパイスなどを加えた「スパイシー・スイート・サワー・セサミドレッシング」。個性的な食材に負けないように、やや甘めだがピリッとした辛さとコクのある味付けだ。
そして、青ネギの辛みや、香草やバジルのさわやかな香りがアクセントとなって表れ、飽きのこないうまさを絶妙なバランスで構成している。
ボリュームがありながらもヘルシーなイメージがあり、さらに、チキン以外の食材はドレッシングとあえやすいように小さくカットされているので食べやすいといった点からも、20~30代前半の女性に特に人気があるという。
なお、同メニューは、以前は「チャイニーズ・チキン・サラダ」の名称だったが、11月に「オリエンタルチキンサラダ」にメニュー名を変更した。
●「カリフォルニア・ピザ・キッチン ラゾーナ川崎店」/経営=(株)WDI/所在地=神奈川県川崎市堀川町72─1 ラゾーナ川崎プラザ4階/開業=2006年9月/営業時間=午前11時~午後11時/坪数・席数=99坪・147席/客単価=2300円/1日来店客数=平日300組、休日600組/平均月商=2600万円
◆「チャイニーズチキンサラダ」 ウエストパークカフェ 代々木上原店
メニューはもちろん、店の内外装やサービスに至るまで、アメリカにこだわった「ウエストパークカフェ」。11年前のオープンから、変わらぬ味のチャイニーズチキンサラダは、常連客から愛される人気メニューだ。
閑静な住宅地にある「ウエストパークカフェ 代々木上原店」は、西海岸をほうふつとさせる外観が魅力の、在日外国人が多く利用する店だ。アメリカで育ったオーナーが、アメリカンスタイルにこだわって作ったメニューは本場の味。中でも「チャイニーズチキンサラダ」は、11年前のオープン当初から、変わらぬ味を守っている。
「カリフォルニア料理のオーソドックスなスタイルながら、トッピングにガリや揚げライスヌードル、焼きワンタンをのせ、独自の味を演出しています。ドレッシングにもこだわりがあり、十数種類の調味料のほかに、減塩醤油を使って、丸みのある味に仕上げています」(メイズフードインターナショナル・坂田成隆さん)。
特筆すべきは、同メニューに使用されているロティサリーチキン。マリネしたチキンを、1時間半かけて軟らかく焼き上げた後に裂き、野菜とあえてあるから、深い風味を味わえるのだ。チキンの味を引き立たせる野菜は、キュウリ、ニンジンのほか、グリーンリーフ、ロメインレタスなど11種類。野菜とチキンに、甘いごまベースで、ピリッとしたマスタードの辛みが効いたドレッシングがよく合い、絶妙な味を作り上げている。
●「ウエストパークカフェ 代々木上原店」/経営=メイズフードインターナショナル/所在地=東京都渋谷区本代々木町23─11 パーク代々木上原1階/開業=1996年8月/営業時間=午前11時半~午後11時/坪数・席数=21坪・48席/客単価=昼1200円、夜2500円/1日来店客数=約115人/平均月商=約1000万円/スタッフ=6~7人
◆「チャイニーズチキンサラダ ピタサンドウィッチ」 カバナ カリフォルニアキュイジーヌ
カリフォルニア料理をカジュアルに楽しめる「カバナ」では、サンドイッチのフィリングとして「チャイニーズチキンサラダ」を採用している。白菜やキクラゲ、新ショウガなどの食材の組み合わせが特徴的だ。
「カバナ カリフォルニアキュイジーヌ」では、ディナーメニューで「チャイニーズチキンサラダ」(1000円)を提供しているが、土日祝日に行っているブランチタイムメニューの「チャイニーズチキンサラダ ピタサンドウィッチ」(フライドポテトとホットチリ付き)(1380円)も好評だ。
恵比寿という場所柄、欧米系の外国人客が多いため、ブランチメニューではボリュームのある卵料理が人気というが、カロリーを気にする女性や、あっさりとした軽めのものを食べたいお客に同メニューは好評だ。
サラダの食材には白菜、サニーレタス、蒸し鶏、キクラゲ、新ショウガ、カイワレ、揚げた春巻きの皮など、ドレッシングにはオイスターソース、ショウガ、醤油、からし、卵黄、ごま油、サラダ油が使われ、食材、味付けともに、「チャイニーズ」を意識したものとなっている。
特に、オイスターソースベースの濃いめの味付けに、さっぱりとした新ショウガを加えてアクセントとするアイデアは面白い。
軽く温められ、ふっくらと軟らかいピタパンの中から、白菜のシャキシャキ、キクラゲのコリコリ、揚げ春巻きのパリパリ…と、次々に現れる食感の違いも楽しめるメニューだ。
●「カバナ カリフォルニアキュイジーヌ」/経営=(有)T.I.M. partner/所在地=東京都渋谷区恵比寿3─28─12 ATYビル1F/開業=2006年9月/営業時間=午前11時30分~午後4時、5時30分~午前0時(日祝日午前10時~)/坪数・席数=20坪・30席/客単価=昼2000円、夜5000円/平均月商=400万円/スタッフ=5人
◆チャイニーズチキンサラダ・総括 サラダは副菜から主菜へ 定義はないが共通点は多々
昨今の健康志向の高まりに対応し、野菜を使ったヘルシーメニューを採用する店舗も多い。だが、これまでの副菜としてのサラダとは異なり、低カロリー、低脂質のイメージがある食材をメーンとし、たっぷりの野菜でボリューム感を出す、主菜的なサラダのバリエーションが求められている。
アメリカ西海岸発の「チャイニーズチキンサラダ」も、そうした主菜的サラダの一つとして、ここ数年、日本国内においても提供する店舗が増えてきている。
しかし、「チャイニーズチキンサラダ」に使われている食材、ドレッシングの味をはじめ、あらゆる要素に関して、それぞれ店独自の工夫があり、「正しいチャイニーズチキンサラダ」の明確な基準はないようだ。
だが、(1)オイスターソースをはじめ中華調味料を使ったアジアンテーストのドレッシング、(2)香草やバジル、ショウガなどを使い、さわやかなアクセントを加える、(3)揚げたワンタンやナッツ類などで、「カリカリ」とした食感を出す、(4)野菜は小さめにカット、(5)メーンの食材として鶏肉を使用、(6)平面に並べるのではなく、立体的に積み上げるボリューム感重視の盛り付け、といった、いくつかの共通点を挙げることができる。
このように、各店舗においてオリジナルレシピで作られるチャイニーズチキンサラダだが、今回、キユーピー(株)から専用ドレッシングが発売され、居酒屋メニューなどでも手軽に使われ始めたことで、このサラダがさらにメジャーになることは間違いないだろう。
◆チャイニーズチキンサラダ業務用ドレッシングの仕掛け人に聞く
●キユーピー(株)業務用営業本部・業態商品開発部・調味料加工食品チーム 大沢有里さん
昨年の発売で話題となった「コブサラダドレッシング」に続き、このほど「チャイニーズチキンサラダドレッシング」を新発売したキユーピー(株)。同社の商品開発担当・大沢有里さんにチャイニーズチキンサラダの魅力について聞いた。
弊社では、これまで販売してきた洋風テーストのものとは一新した、今までになかったものを提案したいと考え、今回この「チャイニーズチキンサラダドレッシング」を新発売しました。
チャイニーズチキンサラダは、カリフォルニアをはじめ西海岸地方の多くのレストランでは定番のサラダであり、昨年弊社で商品化し大人気となった「コブサラダ」よりもメジャーな位置付けにあります。
ドレッシングは店ごとにそれぞれの味がありますが、弊社では、5種類のスパイスをミックスした当社オリジナルの五香粉にショウガと香菜オイルを使い、さらに豆鼓醤の独特の風味をプラスした、香り豊かなスパイシーでコクのある味わいのオリエンタルテーストを採用しました。
発売してまだ間もないですが、特に女性客から好評をいただいております。また、居酒屋やファミリーレストラン、一般レストランへの提案を進めており、年末年始のパーティーシーズンに向けて、このサラダの人気が高まることを期待しています。
今後も、葉物を中心とした野菜に付加価値を加えた主菜(おかず)として、あるいは酒のつまみにもなるサラダとして、店舗でメニュー化しやすいサラダの提案に注力します。