ビール類の価格改定 卸、納価是正へ不退転の決意固める

2008.01.07 337号 06面

 キリンビールに続き、アサヒビールも今年からビール類を価格改定すると発表した(既報)。残るサントリーとサッポロの追随も間近と見られるが、問題はそれが店頭売価に反映され、三層に適正な利益配分がなされるかだ。ビール業界は新取引制度を導入した05年以降、大手小売業の圧力に屈した格好で安売り競争を続けている。今回、適正な値上げを実現させることができなければ、疲弊し切った酒卸業界に立ち上がる余力は、もうない。コストオン取引の定着へ全力を注ぐ構えだ。

 ビール類はオープン価格のため具体的な値段を示さないが、キリン、アサヒとも小売価格は3~5%上がる見通しとしている。ビール350mlの実勢売価が207円、発泡酒が152円であることを踏まえると、それぞれ店頭では6~10円、4~7円程度高くなる計算だ。

 価格の上昇が需要にどう響くかは今のところ未知数だが、大手小売業は他の食品同様にビールの値上げをやすやすと受け入れる姿勢にはない。中でも注目されるのが、イオングループの動向だ。

 イオンは05年のビール大手の新取引制度の導入時も(実質的な)値上げに最後まで反発し、自社RDCへのメーカー直送で不透明な決着を図った経緯がある。それが結果的に小売業界でビール価格の揺り戻しを発生させ、安売り市場へ逆戻りさせることになった。

 そのシワ寄せは卸業界に集中し、この2年で酒類流通を極度に疲弊させた。売価が低水準にとどまる中、メーカーのリベート廃止や特売補助費などの圧縮なども響き、ビール類のマージンが4%を切るレベルまで低下した卸もある。

 また最近は酒類カテゴリーの取引も小売専用センター経由に移行するケースが増え、センターフィーが新たな経費として上乗せされる。高騰する物流コストなど販管費の上昇分も考慮すると、卸にとってビール類はほとんど利のない商材となっているのが実情だ。

 それだけに卸業界は、今回のビールの値上げ交渉には不退転の決意で臨む構え。著しく低下したマージン率の改善・生産者価格の値上げ分の上乗せ、この二本立てでコストオンを実現できなければ「本当に経営が成り立たない」(酒類卸幹部)事態に追い込まれているからだ。

 来年のビール取引では従来のように卸が小売業の見積もり合わせに容易には応じず、最悪なチェーンには帳合返上も辞さない姿勢が強まる可能性もある。仮に不採算な取引をどの卸も受けなくなるとすれば、新たな局面も出てこよう。今回の値上げを取引環境是正の好機にできるかどうか、正念場だ。

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