外食史に残したいロングセラー探訪(31)日本マクドナルド「グラコロ」
現在、約120ヵ国において展開中のマクドナルドでは、国や地域によって独自のメニューが開発・販売されている。もちろん日本でも、「てりやきマックバーガー」をはじめ、数々のオリジナル商品が誕生。中でも「♪グラコログラコロ~」のCMソングでおなじみの「グラコロ」は、その後の季節限定メニューシリーズの足がかりとなった。
マクドナルドで販売している商品には、「ビーフ」「ポーク」「チキン」、そしてシーフードを含めた「その他」の4つのカテゴリーがある。
コーポレートリレーション本部部長・岡野弘明氏によると、「今から約10年前、他社と比べてアイテム数が少なかった“その他”部門の強化を狙い、『女性客をターゲット』『四季を大切にする日本人の特性に合ったもの』をテーマに、新商品の開発を始めました」とのこと。
当時は女性の支持を得てイタリアンレストランが増え、クリーム系パスタの人気が出始めたころ。そこでフォークとナイフではなく、片手でハンバーガー感覚で食べられるよう、グラタンをコロッケにするアイデアが生まれた。
さらに、「ほかではまねのできない、お客さまへの安心、そして驚きを提供する『マクドナルドらしさ』を加えることが必須」(岡野氏)とし、そのこだわりは、例えば初の試みであった専用バンズの採用からも伺える。
同社のハンバーガーに使われているバンズは、バターを塗らなくても十分な味に仕上げてある。そのためグラタンコロッケの味が引き立たなかったという。そこで、糖分や油分を控えめにした専用バンズを開発。フィレオフィッシュの調理工程で使用するスチーマーで蒸し上げ、軟らかくフカフカ、そして弾力性のあるもっちりとした食感のバンズと、コロッケのサクッとした食感との絶妙な組み合わせが実現した。
エビ・マカロニ入りのグラタンコロッケのほかは、黄身と白身がそれぞれ存在感のある卵ソース、そしてキャベツ、コロッケソースというシンプルな組み合わせの「グラコロ」は、1992年にテスト販売を行い、翌1993年冬から全国販売を開始する。
発売以来、レシピの大幅な変更はないが、例えばソースをバンズにつけるか、コロッケにつけるかだけでも味に対する印象は変わるため、毎年、常にベストの味を届ける努力を続けているという。
「グラコロはほかと比較するととてもデリケートな商品であり、大事に育ててきました。そうした努力がお客さまから支持されているのではないでしょうか」と岡野氏。当初の予想通り女性客から人気が高く、購買客層の約6割を女性が占めている。
同商品の成功をもとに、秋の「月見バーガー」、春の「てりたま」と、期間限定メニューが続々と登場。それまで季節感を取り入れることが困難とされてきたファストフード業界において、四季を感じさせるメニュー提案の火付け役ともいえる「グラコロ」の功績は実に大きい。
◆店舗データ
「マクドナルド」/経営=日本マクドナルド(株)/本社所在地=東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー/第1号店開業=1971年7月/店舗数=3751店(2009年4月末現在)
○春・秋・冬の風物詩 マクドナルド初、1アイテム専用バンズを開発
マクドナルドでは毎年、さまざまな期間限定商品を発売しており、中には好評のためレギュラーメニュー化したものもある。しかし、10年以上、期間限定販売を続けている「てりたま」「月見バーガー」「グラコロ」は、今では春・秋・冬の風物詩として楽しみにするファンが多く、季節の定番メニューとしての不動の地位を築いた。
○春マック
「てりたま」「チーズてりたま」(1996年)
○秋マック
「月見バーガー」(1991年)
「チーズ月見バーガー」(1998年)
「ダブル月見バーガー」(2008年)
○冬マック
「グラコロ」(1993年)
「チーズグラコロ」(2004年)
※カッコ内は初登場年