メニュートレンド:大阪・大正の沖縄風ホルモン 「宮城ホルモン店」
大阪市大正区は、沖縄県人が多く住む街。沖縄料理店も多く、独自の食文化が息づいている。そのなかでも、“沖縄風ホルモン”と銘打ち人気を集めるのが、「宮城ホルモン店」。近隣だけではなく、遠方からもファンが訪れるという、同店の魅力を紹介する。
◆豚ホルモンのメジャー化目指す
看板には、“大正区名物&文化”とある、宮城ホルモン店。のれんをくぐると、そこにあるのは、145cm×55cmの鉄板だけ。その上で焼かれる“沖縄風ホルモン”が、同店のメニューである。近年人気のホルモンだが、一般的なのは牛。しかし、同店で扱う食材は豚だけである。
沖縄では、昔から、豚の内臓は身近な食材だが、煮込みやスープの具材として使用するもの。基本的には、焼いて食べることはないという。大阪では、内臓自体を食べる習慣がなかったが、戦後間もなく、大正区在住の沖縄出身者が、豚ホルモンを焼いて食べることを考案。それが、沖縄風ホルモンの発祥であり、10年ほど前からこの名称で紹介しているという。食材は豚だが、調理法が違うことなどから、“風”が付けられているというわけだ。
いわば、大正区で生まれた沖縄系の料理だが、今では地元の名物として定着。扱う店のなかでも、子どもから大人まで幅広く人気を集めているのが、同店である。食材は、当日解体の豚を基本に仕入れ、メニューは、ホルモン(腸)、レバー、アブラミ、ハラミの4種類。ハラミが1本110円でほかは1本60円と、リーズナブルな価格も魅力だ。
調理は、鉄板上でたれをからめながら焼き上げるが、途中で水をかけるのも同店の特徴。ふっくら感を出すとともに、鉄板の焦げ付きを抑えるのも狙いだという。また、他店では、グラムで販売するところがほとんどというが、こちらでは、あえて手間をかけて串刺しにしている。
その理由は、持ち帰りだけではなく、立ち飲みにも対応するため。立ち飲み客は、鉄板上で次々に焼き上がるものから好きな串を手に取り、そのまま食べるスタイル。価格の違うハラミだけ串の形状を変えることで、食べた後の串数を数えれば勘定ができる仕組みだ。
持ち帰りと立ち飲み客の割合は同程度で、近所の主婦が次々と買いに来ると思えば、鉄板の周りにズラリとお客が並ぶことも。地域の社交場という雰囲気だが、遠方から訪ねてくるお客も多く、なかには、100本単位での持ち帰り客もいるとか。
「子どものころから親しんだ食文化を伝えたいと、父から受け継ぎましたが、まだまだ、豚のホルモンはマイナーなイメージ。もっと豚のおいしさや栄養を知ってもらって、メジャーな食べ物に育てたい」と、宮城修店主。豚ホルモンとともに、大正区のよさもアピールしていきたいという。
●店舗情報
「宮城ホルモン店」 所在地=大阪府大阪市大正区平尾5-10-15、電話06・6551・9978/開業=1961年/営業時間=午前11時~午後7時、月・第3日休/坪数=約12坪/1日来店客数=平日30~40人、週末50~60人/客単価=持ち帰り600~1000円、飲食500~1000円
●愛用資材・食材:「タカラ本みりん」
宝酒造(株)(京都府京都市伏見区竹中町609)
同店のたれは、子どもやにおいが気になる人のために、ニンニクやショウガ、唐辛子などの香辛料は使用していないのが特徴。キッコーマンの濃口醤油をベースに、5~6種類の調味料で、甘辛味に仕上げている。そのアイテムは秘密だが、「タカラ本みりん」は、味をまろやかにするために使用する、長年の愛用品である。