アポなし!新業態チェック(58)「ビルズ」お台場店

2011.11.07 392号 04面

 ●世界一の朝食がついに東京へハリウッドのセレブ絶賛の店

 オーストラリア生まれのレストラン「ビルズ(bills)」の日本国内3号店が今夏、東京・お台場の商業施設デックス東京ビーチにオープンした。

 1993年、オーナーのビル・グレンジャー氏がオーストラリアのシドニーで創業した1号店が始まりだ。その後、同国内で3店舗を出店、レオナルド・ディカプリオ、トム・クルーズ、ニコール・キッドマンなどといったハリウッドの有名人が絶賛するレストランとして世界的に有名になった。

 日本には2008年の3月、鎌倉の七里ヶ浜に1号店を出店。これは初の国外出店となった。2号店は2010年に横浜の赤レンガ倉庫。この2店舗で、これまで延べ63万人以上の集客があったとのことで、すでに日本でも超人気ブランドとしての地位は確立されている。

 メニューは、「リコッタパンケーキ w/フレッシュバナナ、ハニーコームバター」(1400円)や「オーガニックスクランブルエッグ w/トースト」(1200円)「焼きたてスコーン w/自家製ジャム、ホイップクリーム」(700円)といった食材を生かしたシンプルな料理が中心。特に「オーガニックスクランブルエッグ」は、海外メディアでも「世界一の卵料理」と呼ばれるほど有名であり、店の名を世界に知らしめた。ビル氏が出版したレシピ本は、トータルで100万部を超えるベストセラーになっているという。

 近く英国ロンドンへの出店も計画しているとのことで、「世界一の朝食」がロンドンを席巻する日も近いに違いない。

 ★けんじの評価

 開業から2ヵ月ほどが過ぎた金曜日の午後、お台場のビルズを訪れた。隣のアクアシティに比べれば、デックス東京ビーチはまだ館内の通行客も多いように感じる。しかしいずれの商業施設も、決してテナントが十分に潤うほどの集客とは感じられない。

 店は、テラス席を含めると200席以上という、かなり大きな店舗だ。しかし中途半端な時間帯だったせいもあるだろうが、客席の半数以上が空席である。このお台場では、世界で初めてキッズメニューを導入したことが話題となったが、このエリアにはキッズメニューが売り物になるほどファミリー客が訪れるのだろうか。

 店内は通路が広く、ざっと見ただけでも6種類以上の異なったデザインの椅子が配置された上品なカフェ風のインテリア。メニューの価格帯から考えても、大人のカップルが訪れるおしゃれでトレンディーなレストランである。

 久しぶりにお台場を訪れて、シーサイドモールのデッキからレインボーブリッジを眺める。東京都心の摩天楼群を海側から眺めることができる素晴らしい景観だ。店が位置するのは3階だが、地上に降りれば海沿いにビーチを散策できる抜群のロケーション。ここが新橋の雑多なオフィス街からほんの数駅しか離れていない、まさに本物の「アーバンリゾート」なのだとあらためて実感した。

 これだけの観光資源を抱えていながら、お台場周辺のエリアはその魅力を生かし切れていない。なぜこのエリアの集客が弱いのか、価値ある素材を生かすことができない理由を、関係者はもう一度よく考えてみてはどうだろうか。

 (外食ジャーナリスト・鷲見けんじ)

 ●店舗情報

 開業=2011年7月16日/所在地=東京都港区台場1-6-1、シーサイドモール3F

 ●鷲見けんじ=外食チェーン黎明期からFFやFRなどの動向を消費者の目線で見続けてきたアンチグルメな庶民派ジャーナリスト。顧客の気持ちを外食企業に伝えるべく甘口辛口を取り混ぜた乱筆乱文でチェーンの新業態をチェック。朝マックとロイヤルホストのカレーフェアをこよなく愛する外食ウォッチャー。

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