名古屋版・繁盛店ルポ:「文化洋食店」

2001.05.21 228号 4面

名古屋市中東部に位置する千種区を中心に展開している(有)文化洋食店。「付加価値の高い店づくり」を目標に、手作りの味を追求する。どの店にも共通していえるのは、表面的な派手さよりも細部にこだわり、また料理の技術で客を満足させるという質実剛健さだ。同社の中核店である「文化洋食店」を中心に、「居酒屋文」「九龍文化」をのぞいてみた。

洋食の定番メニューであるハンバーグ。子供からお年寄りまで幅広い層に人気のハンバーグを、開店以来まじめに作り続けている「文化洋食店」は、昔懐かしい洋食を時代にあわせた形で提供すると評判だ。

「文化洋食店といえばまずハンバーグを想像するお客様がいらっしゃいます」と語るのは、西野茂洋食部門部長。売れ筋メニューのトップとしてあげていただいたハンバーグの人気の秘けつは、「鮮度」と「お値打ちさ」にあるようだ。

「鮮度」とは、ディナー用に用意するハンバーグの仕込みを夕方に行い、客に出来たてを味わっていただきたいという配慮を欠かさないこと。また「お値打ちさ」とは、「ディナー定食」をはじめとするセットメニューがお得である点。主菜プラス一一〇〇円で、前菜、パンまたはライス、デザート、飲み物が付く。

「付加価値の高い店を目指すと同時に、料理を出した時に驚きとおいしさを提供できるように努力しています」

一九八六年にオープン。席数四四席の店内には木製の家具が多く用いられ、白色の壁とテーブルクロスが清潔感を感じさせる。また調理場の活気が客席に伝わるようにと、オープンキッチンが採用されている。主に二〇代から四〇代前半の支持を受ける一方、週末にはファミリー客も多く訪れるという。

現在同社が展開している店は、本店である「文化洋食店」と和風の「居酒屋文」(名古屋市千種区)、アジアン料理の「九龍(カオルーン)文化」(同中区)、文化洋食店「ジャスコベイシティー店」(同港区)。

今後の展開ついて西野氏は、「郊外への出店も視野に入れ」ながらも、現在を「力を蓄える時期」であると位置付けている。「大型スーパー内では、町場でやってきたようなコツコツ型のやり方では通用しないところがあることが分かりました。郊外を目指すにあたっては、手作りの良さを残しながらも、低価格帯でいかに魅力的なメニューを出していくかが課題ですね」と控えめな中に熱意を込めて語った。

■居酒屋文

文化洋食店の和食部門である「居酒屋文」(名古屋市千種区)。西野氏いわく「手作りを大切にする技術系の和食」というこの店は、一九九五年、JR中央線千種駅近くにオープンした。目を引くような派手な看板は出ておらず、初めての人は通り過ぎてしまう隠れ家的な店だ。

席数八〇席の店内は所々に木の温もりが感じられ、柱や階段は田舎の家のようなどことなく懐かしさを誘う造り。また随所に使い古された骨董家具も飾られており、都会にありがちな無機質さを和らげているようだ。

「料理は手作りが基本で、手抜きをしません。仕込んだものをおいしく食べてほしいです」と話す花井淳和食部門部長は、もとは洋食の料理人。「和食と洋食では技法は違いますが、基本は同じです」と、自信たっぷりに答えた。

現在二〇代中盤から五〇代と幅広い層から支持を得ているこの店の人気メニューは、「海老のすり身と茄子の揚げだし」(六八〇円)と「竹の子まんじゅう若葉あえ」(七五〇円)。また、花井部長自らが腕をふるうという「文の手打ちそば」は、一日限定二〇食の範囲内で「二八そば」(六〇〇円)、「辛味大根そば」(六五〇円)、「鴨南蛮そば」(七五〇円)、「穴子天そば」(八〇〇円)の四種類が楽しめる。

■売れ筋メニュー

〈一位〉「ハンバーグ・一八〇g」(一〇八〇円)

〈二位〉「カニクリームコロッケ焼きトマト添え」(一一八〇円)

〈三位〉「タンシチューと大根のミルフィーユ仕立てラヴィコットソース」(一七五〇円)

■九龍文化

ここ数年、一般にも浸透してきた感のあるアジアン料理の店が、名古屋市中区にある「九龍(カオルーン)文化」。昨年12月オープンという店は席数四六席、奥にはバーカウンターも設置されている。

入り口を入ってまず目につくのは、わい雑さをかもし出す壁。香港のうらぶれた路地を思わせるような壁には漢字やハングル文字が書かれており、雰囲気をそそる。かと思えば、客席の壁には清潔感のある白が使われており、路地裏から、太陽がまぶしいアジアンリゾートにやってきた気分だ。

「リーズナブルでカジュアルなアジアン料理を提供したい」と語るのは、九龍文化の菊永よいちマネジャー。「オープンして半年ぐらいなのですが、二〇代前半から三〇代のOLやサラリーマンが多いですね」と、比較的若い世代から支持を得ているという。

中国、韓国、東南アジア料理が中心のこの店のお勧めは、「ニラと葱と浅蜊のチヂミ」(五〇〇円)、「ゴイクン、海老の生春巻き」(五五〇円)、「サムギョプサル」(九五〇円)。また韓国のマッコルリ(濁酒)や眞露をはじめとする各種アジアの酒や、八種類の中国茶なども楽しめる。

◆店長が信頼する愛用食材 ミツカン「アップルビネガー」

「酢独特のツンとしたクセがなく酸味の中に甘さがありますね。しかもワインビネガーより味が優しいのでずっと使っています」と、西野氏が愛用するのは、(株)ミツカンの「アップルビネガー」。

「主に前菜に使います。香りもよく、火を加えれば甘みが増します」。文化洋食店開店当初から使い続けているというから、さしずめ付加価値の高い商品を提供する上で欠かせない「名脇役」といったところだろう。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら

関連ワード: Mizkan