施設内飲食店舗シリーズ:ニッケコルトンプラザ

1994.06.20 54号 4面

JR総武線本八幡駅北口から高架に沿って、船橋方向に約一〇分。地上四階建、駐車能力二三〇〇台の複合商業施設。意外な場所に、意外な施設がという印象だが、ニッケコルトンプラザは一見するとテーマパークのような雰囲気だ。昭和60年初頭まで日本毛織の千葉工場だった場所を再開発しての施設建設で、敷地面積約四万三〇〇〇坪の規模を有する。再開発事業の主体者はもちろん“ニッケ”だが、施設計画にあたっては、昭和59年に同様の再開発事業でオープンしていた加工川工場をモデルにし、ニッケとしては二番目の施設展開だ。

施設構成はコア施設のいちかわプランタン(ダイエー)をはじめ、物販、飲食などの専門店街、多目的ホール、コミュニティ広場、公園、テニスコート、ゴルフ練習場、その他から成っており、「創・快・食・歓・装を同一空間に集積し、緑・水・憩いと賑わいの『商業公園』を実現する」という施設コンセプトを具現している。

客層ターゲットは、一八~二五歳の感性豊かな若い女性客を中心軸に、ニューサーティを大きなボリュームとしているが、現実には中高年層の来街もあり、地域の多様な客層に利用されている。

昨年5月、集計した来街者数は平日一万五〇〇〇人、土曜二万五〇〇〇人、日曜三万人で、休日には客数が平日の六割増から倍に増加するという利用形態をみせている。

しかし、トータル的にみれば、この来客数は横ばい状態にあり、これに比例して店舗の売上げも伸び悩み状態で、昨年度売上げは専門店一〇六億円、飲食三五億円の計一四一億円となったが、対前年比九四%の業績に終っている。

もっとも長引く消費不況で、とくに衣料などの物販店はどこも売上げはマイナスの状況にあるので、コルトン内の商業ゾーンも同様の結果をみせているということだ。

しかし、この6月中旬に隣接地に千葉県立現代産業科学館、また、11月末には施設敷地内にトイザラスおよびセガが入居する商業施設(三階建)がオープンするので、これら施設の稼働によって全体が活性化し、明年度以降は集客および購買力が十分に高まることが予想される。

コルトンプラザの商業ゾーンは前記のとおり、プランタンをはじめ、専門店、サービス、スポーツ、飲食店など計一三〇店から構成されるが、うち専門店の主軸となる衣料(婦人服)は、二階がヤング、三階ミッシーというフロア構成で、さらにヤングの売場はカジュアルの「スイートゾーン」、トラッドの「オーセンティックゾーン」、トレンディの「ティスティゾーン」の三つのカテゴリーに分けて店舗展開している。

飲食店舗はファストフードでは、ミスタードーナツ、ロッテリア、ドムドムハンバーガーなど、有名外食チェーンでは五右衛門(スパゲティ)、築地玉寿司(すし)、梅八(とんかつ)、藩(釜めし・やきとり)、知足亭(しゃぶしゃぶ、海鮮料理)などを展開しており、多様な業態を集約している。

これら店舗はビルインでの出店だが、このほかに都市、商業施設では珍しく、フリースタンディング(施設敷地内戸建)で、「アジオ」(マーケット・レストラン)、「カーニバルプラザ」(サーカスレストラン)、「銀座アスター」(中華レストラン)、「四季亭」(焼肉レストラン)、「つきじ植むら」(日本料理)、「フォルクス」(ステーキハウス)など六店舗を展開しており、ロードサイドレストランに似た出店形態をイメージさせている。

「こういった商業施設内で戸建のレストランを展開するというのは珍しい形態だと思います。地域の人が開放的で気軽に利用できるようにという考え方で、和・洋・中六店舗を展開していますが、各店舗ともそれぞれに集客力を発揮しており、コルトンプラザの看板店舗という存在です」(市川コルトンプラザ事業本部営業課長代理吉岡和行さん)。

これら戸建の店舗は店舗面積一二〇坪前後、客席数一〇〇席以上の大型店で、月商二五〇〇万円というのが平均な数字だ。

・名称/「ニッケコルトンプラザ」

・開設/昭和62年11月

・所有者/日本毛織(株)

・所在地/千葉県市川市鬼高一‐一‐一

・敷地面積/四万三〇〇〇坪

・建物規模/地上四階建(一部一・二・三階)

・延床面積/二万八一〇〇坪

・施設構成/いちかわプランタン(ダイエー)、婦人服31店、紳士・呉服10店、子供・洋品9店、文化・家庭・雑貨33店、サービス11店、スポーツ4店、食料品5店、飲食26店

・売上げ/プランタン年商一三〇億円(93年度推計)、専門(物販・サービス他)同一〇六億円、飲食同三五億円

・集客数/平日一万五〇〇〇人、土曜日二万五〇〇〇人、日曜日三万人

◆つきじ植むら

日本建築の端正な様式美を生かした店舗で、外観からして品格のある雰囲気を漂わせている。しかし、入口左手にサンプルケースがあるので、決して高価格メニューばかりの店ではないというニュアンスを訴求している。

事実、天重九五〇円、ひめごぜん一二〇〇円、天重弁当一二五〇円、かに御膳一八〇〇円、うな重二二〇〇円などの定食をはじめ、しゃぶしゃぶ・すきやき「らん」(和牛肉、野菜、うどん)三〇〇〇円、「きく」(松阪牛・野菜・うどん)五〇〇〇円、しゃぶしゃぶコース、すきやきコース「うめコース」(ずわいがに・刺身・和牛肉・野菜・うどん)五〇〇〇円、「まつコース」(ずわいがに・刺身・松阪牛肉・野菜・うどん・季の果実)七〇〇〇円といった“低価格志向”のメニューもラインアップしている。

もちろん、つきじ植むら本来の会席料理一万~二万円といった価格帯のメニューも用意している。会社利用の減少など消費不況の世相に対応して、低価格から高単価までのメニューを揃えているということだ。

「サンプルケースを設置してお客さんに安心感を与えたことと、今年2月から価格を二割ほどダウンさせました。会社の接待利用などが大幅に減少しましたから、もう高価格メニューが売れない時代です。ですから、思い切って価格を切り下げたわけですが、しかし、その分客数が二割アップしましたので、一定水準の売上げは確保できております」(伊藤明人支配人)。

昼夜合わせて平均客単価二五〇〇円、客層は昼女性客六割以上、夜男性客四割を主体にカップル、ファミリー客などで、平日は接待利用も二~三組ほどある。

土・日はファミリー、法事、結納などの客も多くなる。売上げは月商二五〇〇万円だが、これは目標売上げの一〇%マイナスだという。

店舗面積一二〇坪、客席はカウンター、テーブル、座敷合わせ一三〇席。

◆銀座アスター

コルトンプラザの戸建店舗では、敷地内の最も奥まった位置(中央部)に出店しているので、外の通りからはストレートには見えない。この点のハンディがあるが、しかし、施設全体の位置関係からすると、二階飲食ゾーンの正面や多目的広場に面しているので、見方によっては“ベストロケーション”になるともいえる。しかも、県の産業科学館やトイザラスへのアプローチにも最短の位置にあるので、それだけ集客が大きく見込めるということだ。

店舗面積一二〇坪、客席数一〇〇席。客席には離れ的な存在で、雰囲気のいい宴会席もあるので、近隣の企業や慶事などのグループ客の利用も多い。

料理は北京ダックが看板メニューだが、「中国味紀行」というテーマで、春‐江南、夏‐四川、秋‐広東、冬‐北京料理というように季節ごとのメニューを提供している。

これら料理はコース料理で提供しているが、価格は五〇〇〇~一万円内だ。

もちろん、低価格の単品メニューやランチメニューもラインアップしており、客のフトコロ具合で自己の食ニーズを満たすことができる。

しかし、銀座アスターの場合は高級イメージが強いので、バブルがハジケた現在、会社利用など高客単価の客を集客するのに苦労がある。

「私はここにきてまだ二年足らずですが、コストの削減と客数、客単価のアップをどうキープしていくか、いろいろと努力を重ねているところです。とくに平日の客をどう取り込んでいくか、ランチメニューやそば類、点心など一〇〇〇~二〇〇〇円の低価格メニューも導入しておりまして、来店動機を喚起しているところです」(丸山仁店長)。

客数を増やすために丸山店長は地域の企業回りも積極的におこなっているという。

客層は会社利用からファミリー客までさまざまだが、平均客単価は昼一八〇〇円、夜三〇〇〇円、売上げは月間二四〇〇~二五〇〇万円前後。昨年12月には月商二七〇〇万円に達したこともあった。潜在的な集客パワーはあるわけだ。

◆アジオ

東京・三笠会館の経営。新宿、柏、浦和、池袋にも出店している。店舗面積一二〇坪、客席数一三六席。

「マーケットレストラン」とは聞き慣れないが、店の入口通廊付近および客席と厨房の間のフロアスペースに、“市場”(マーケット)的演出で、素材をディスプレイしてあり、それをその日のうちに使うということ。

さらに、売りものの一つであるピザを焼くために、イタリアから取り寄せた薪窯で焼く日本初登場のピッツア窯、自然飼育の地鶏や特選牛肉のうま味をのがさず焼き上げる備長炭のグリラーなどを導入して、調理の野趣味と臨場感をアピールするという、いわばマーケットの活気とオープンキッチンが見せるパフォーマンス効果を意識した店づくりだ。

「客席のお客様から自分がオーダーした料理がどういう作り方をされているのか、今どういう状態か、即座にわかりますから、店がたて込んできても安心して待つことができるわけです。もちろん、最大の売りものは新鮮で品質のよい素材を使って、おいしいものを提供するということですが、おかげさまで感性のするどい女性客にも多く利用されております」と笑顔で話すのは山口稔支配人。

山口支配人の話によると、地域には東京山の手のセンスやし好にも引けをとらない女性客が多く、日中は八、九割が三、四〇代のミセスの利用だという。

主力メニューは、自家製パスタとリゾット、ピザ、備長炭火網焼きステーキなどで、メニュー単価はピザ、パスタ類で一一〇〇~一五〇〇円、網焼きで一四〇〇~四〇〇〇円前後。

都心と変わらない価格ゾーンだが、一品あたりボリュームもあるので、多人数でシェアしながら食べれば、品数を多くチョイスでき、しかもリーズナブルな金額で済むということだ。

客層は女性客を中心にカップル、ファミリー客などだが、グループでの利用も多い。

客単価は昼一八〇〇円、夜四五〇〇円。月商三〇〇〇万円前後をキープしており、好成績の店だ。

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