地域ルポ 恵比寿(渋谷区) 西口は吉野家、らんぷ亭10メートルの牛丼戦争
東口では駅ビルの北側で、もう一棟ビルを建設中だ。地上一八階、地下二階建て、延床面積約一万坪の「RCビル」(仮称)で、国鉄精算事業団が建設している。
平成4年2月に着手しており、今年秋にはオープンする。このビルは地下が一四八台収容の駐車場、地上一、二階が物販と飲食店舗、三階~一八階がオフィス(七階建ての住宅棟を併設)というフロア構成で、駅ビル同様に複合都市施設としての性格をもつ。
このビルは日本では初めてのケースとして、投資家を募って建てる「不動産変換ローン方式」によって具体化しているもので、大手企業四社が出資に応じている。投資家の希望する条件でビルを建て、優先的に入居させるというシステムだ。
入居条件は坪家賃三万三〇〇〇円、共益費六〇〇〇円前後、敷金二〇ヵ月。三階から八階までが募集中だ。
一、二階の商業フロアもまだテナント出店が決まっていない。一階部分が五八坪と二〇坪、二階が八六坪と二五坪の計四区画で、入居条件は一階が坪家賃三万七〇〇〇円、二階が二万四〇〇〇円、共益費五七〇〇円、敷金五〇ヵ月で、一階であれば坪当たり一七〇万円の入居費ということだ。
駅の西口に出る。狭い改札口は常に混雑しているという状況だが、駅前は空間の広がりがあって、バスやタクシーの乗降口となっている。
改札口を出た右手は日比谷線の出入口。その後方は駒沢通りが東西方向に走っている。東に上がっていけば山手通り、西は明治通りにリンクする。
西口地域は商業集積が進んでおり、飲食店舗も多い。駅前広場を見渡しても、正面のさくら銀行が入るビルの地下一階にサッポロライオン、改札口を出た左手にルノアールが二軒、ビルの二階にパスタハウスのジロー、正面の左側「えびす銀座新栄会」、入口左にはドトールコーヒーの出店も見える。駒沢通りにはウエンディーズ、三階建て独立店舗の寿司、割烹料理の入船も見える。
駒沢通りの左右は商店街(エビス商店街振興組合)で、飲食店をはじめ、雑貨、衣料と多くの店舗が軒を連ねている。
通りの右側、入船の前から西方向に歩いていくと、牛丼の蹄野家、さらに一〇mほど離れてダイエーの牛丼チェーン神戸らんぷ亭が出店している。
両店とも昨年12月に入ってのオープンで、先発大手牛丼チェーンと後発のダイエー牛丼が、目と鼻の先で“牛丼戦争”を展開しているという図式だが、一見した限りでは老舗の蹄野家にやや客が多く入っているという印象だ。
しかし、らんぷ亭は一、二階出店でテーブル席があって、トレイでメニューが提供されるというクオリティさがあり、カップルやファミリー客が多く利用しており、蹄野家とは出店のコンセプトが異なっているようだ。
名物ラーメン店の「香月」に客の行列
さらに前進すると、行列にぶつかる。ラーメン店の店先だ。“恵比寿名物”の香月で、空席待ちの客が列をつくっている。
テレビでもグルメ雑誌でもよく取り上げられているので、“観光スポット”にもなっているのだ。
店の白井勝行店長に聞くと、店舗面積約二〇坪、客席はカウンター席のみ二一席で、平日で一二〇〇~一三〇〇人、日・祭日で一五〇〇人前後の客数だという。
メニューはラーメン七〇〇円、もやしラーメン七五〇円、バターラーメン八〇〇円、ねぎラーメン八五〇円、めんまラーメン九〇〇円などで、スープはとん骨味。
平均客単価八〇〇円としても、平日売上げでも一〇〇万円以上、坪当たり五万円前後を売るという計算で、これはビッグチェーンのマクドナルド並みの売上げだ。
駒沢通りに面してはラーメン店が、恵比寿ラーメン、麺ロードなども出店しており、独自の集客力を発揮している。
恵比寿地区にはファストフードは前記のウエンディーズ、蹄野家、らんぷ亭に加え、東口にもケンタッキーフライドチキン、ベッカーズなどが出店しているが、昨年12月西口駒沢通りの恵比寿南三丁目にモスバーガーが出店、FFが集中出店しているという印象だ。