シェフと60分 キャラバンサライ オーナーシェフ・安藤精彦氏 羊文化を日本に
フランス料理、中国料理とならんで、トルコ料理は世界三大料理の一つにあげられているが、それは料理のもつ味と豊富なバラエティーにある。その本格的なトルコ料理を食べさせてくれる店が、横浜は山下町にある『キャラバンサライ』。オーナー兼シェフの安藤精彦さんは横浜生まれ、横浜・JR関内駅のそばでカレー専門店『英印主館』(えーすかん)を経営していたが、インド料理のルーツをたどっているうちにトルコ料理につながったという背景から、五年前にオープンさせた店。
安藤さん、かつてはトルコはインドも支配していたが「トルコ料理はインド料理とは対象的にスパイスと塩をほとんど使わないというのが大きな特徴の一つでもありますね」と、昨今の“食”のトレンドにマッチしてヘルシー食品であることを強調するとともに、そのボリュームあるなかで、フランス、中華料理などと比較、「リーズナブルな価格の料理です」とも述べる。
そういえば、横浜・山下町という場所柄もあるが、比較的安くて珍しいものが食べられるとあって、客層も二〇代・三〇代を中心としたヤング、それもカップルが約八〇%と圧倒的に多いという。
ところで、トルコ料理といえば日本人にはマトン(羊)を串に刺し、独自のタレをつけて焼いて食べる「シシカバブ」が知名度も高く有名だが、安藤さんは「トルコ料理・イコール“羊文化”と言っていいほどです。簡単な例をあげると、日本人は羊は一種類と思っているが、これも実は八十数種にも分かれる。その意味でも日本人が魚にこだわるように、マトンにはうるさい」とするなかで、料理方法は本場仕込みというものの、チキン、マトンなど料理についてはフランスから良質のものを直輸入、いわば典型的なトルコ料理から日本人に合うものを紹介、提供している。
さらに日本人がトルコ料理を作ると「いつの間にか塩分をふやしたり独自の味に戻ってしまう」ため、安藤さん自身、今でも年に数回は味の“調整”も兼ねてトルコを訪ずれるというこだわりも見せている。
一方、お店のメニューとしてはオリーブオイルとヨーグルトで作ったタレに肉をつけて焼く「シシカバブ・ラム」、「シシカバブ・チキン」、薬膳料理、トルコではごちそうである山羊の脳を料理した「コールドブレイン」、ドルマの一種でもあるムール貝にご飯を盛り合わせた「ムール貝の香味焼き」、トルコのパン「ハシシェクメク」、さらに飲み物でも、水を入れると白濁するという珍しい酒「ラキ」(リキュール)、ビール「エフェス」などあるが、オードブルからご飯、スープ、トルココーヒーまでついた「キャラバンサライ・ディナー」(一人前二八〇〇円)など、セットメニューが最も人気が高く、客の半数以上はこれを注文して食べていくという。
また店内はトルコの民芸品も所狭しと飾られており(一部販売)、居ながらにしてトルコに行った気分、ムードも味わえる。
なお、店名のキャラバンサライとは砂漠を行く隊商宿という意味。
いずれにしてもこの店、安藤さん親子共々オーナーシェフを務めているだけに、後継者の面でも万全。
〈プロフィル〉 安藤精彦(あんどう・きよひこ)、大正12年横浜生まれ。六九歳。関東学院大卒。一五年間のサラリーマン生活を経て独立、インドカレー専門店開業。JR関内駅近くにカレー店「英印主館」二店を現在も経営するかたわら、五年前からトルコ料理専門店「キャラバンサライ」オープン、現在に至る。
文・木村繁男
写真・新田みのる














