97外食・飲食業界 実力派コンサルタントはこう見る 力石 寛夫氏

1997.01.06 118号 5面

(1)百貨店内食料品売り場の閉店間際の混雑ぶりは、なにも今に始まったことではなく、良い物を一円でも安く買おうとする心理は生活者に共通して存在する。

バブルの揺り戻しからここ数年「低価格」が営業戦略のキーワードとなり、日本料理、フランス料理店からファストフードまで「価格」を訴求ポイントのメーンとした店舗が増えたことは確かだ。

しかしこれも、バブルの崩壊後に消えていった多くの流行便乗組みと同様、明確なビジョンやシステムに支えられた値打ちを利用者に提供する店舗は少なく、魅力のない店舗がはんらんしているのが現状といえる。

生活者全般に、先行きの見えない不安感から生活防衛本能が働き、価格に対し敏感になっていることは事実だが、それは安ければ良いといった「低価格志向」ではなく、店内の環境、サービスと商品がバランス良く提供され、それらを総合した「価値」が、「リーズナブル=割安感」と感じられる店舗だけが、生き残れる。

(2)フードサービス施設のすべてを決定するといっても過言ではない、メニュープランニングに「メニュースコープ(Menu scope)」という考え方がある。直訳すれば、メニューの範囲ということだが、この考え方の原則はメニューを広げれば広げるほど、提供する商品の品質は落ちるというもので、メニュー品種の拡大とともに、厨房設備も食材、オペレーションも複雑化し、よほどのマネジメント技術がない限り前述のような事態が生じるというもの。

価格に対する価値の高低に選択基準がおかれる昨今、より専門性を打ち出した中での価値の創造が必要となる。

(3)あらゆる業種業態に伸びる機会はある。しいていえば、食のカジュアル化傾向の中、イタリア料理を主力とした居酒屋など、三〇〇〇円前後の客単価でより楽しい「ひととき」の提供ができる業態。ただし、レストランとしても通用するフードアイテムの商品力があるということが前提となる。

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