飲食トレンド 変わるご飯、簡便化のエース“無洗米” 外食店の炊飯技術
“無洗米”とはパッケージする前にあらかじめ洗ってヌカを取ってあり、研がずにそのまま炊けるコメ。この無洗米が「深刻な問題となっている労働力の省力化」「水の節約(約七〇%)」「研ぎ汁による公害防止対策の不要」などから、大量に炊飯を行う業務筋に静かな波紋を呼んでいる。
家庭用のコメ消費が落ち込むなか、外食産業は年間二三〇万t、テークアウトを含めると三〇〇万t、流通するコメの約三分の一を使用している。
健康志向の高まりから栄養バランスの良い和食が見直され、パン給食で家庭の食事に急速に洋風化現象をもたらした学校給食も米飯が週平均三回になっているなど、コメは追い風だ。
食の外食比率も現行の三分の一は中食も含めるとまだまだ進むといわれている。
ここにきて、主食であるコメの炊飯技術が急速に進化、おいしく、しかも簡便化の方向を探っている。その鍵を握っているのが炊飯工程で最も人手を必要とし重労働である「研ぎ洗い」を無くした“無洗米”である。
研がずにそのまま炊ける無洗米の製造方法は原料の精白米を機械にいれ、水で数秒研いだ後一定温度で乾燥する方法と水ではなくヌカで洗う方法がある。どちらもヌカをきれいに取り除く。糊粉層が除去されているため、コメの酸化が遅く保存性が良く、ふっくらと炊きあがる。
農林水産省が無洗米加工により適したコメの品種改良を計画するほどで、その背景にはおいしく、簡便のほかに水資源や研ぎ汁の垂れ流しによる環境保護という大きな社会問題もある。全家庭や外食産業で無洗米を使うと年間で約八四〇〇万t(一二六億円)もの水が節減でき、これに廃水処理費用も考えると膨大になる。
おいしく、簡便、しかも環境に優しい“無洗米”がなぜ急速に浸透しないかというと、普通米の約二割高というコスト高と安定供給が可能なのかという不安がある。
簡便なだけにマニュアルを変えてしまったら元に戻すことは至難の技で国内産米の不作時や災害時も大丈夫なのか。
ユーザーに最も近い卸は「確かに良いという声と同時に価格が高いという声が多い。しかし、コメ販売が新食糧法になり、われわれ卸もプロとして商品の差別化が必要になってきた。精米工場以外ではできない無洗米は切り札の一つになるため価格面、安定供給には最大の努力をしていく」と普及に向けての努力はすでに始まっている。
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