シリーズ・売れる惣菜 「ロシア料理」 フランス料理の大先輩

1997.11.03 139号 19面

ニューヨークではロシア料理の人気が高まっている。かつての米ソ対立が氷解し、米ロは共生の時代と変わってきた。多くの人々はロシア料理を、ボリュームがあり、おいしく、しかもバラエティー豊かと楽しんでいる。

広い国土からとれる産物も豊かで、ひとくちにロシア料理といっても民族ごとに大きな差異がみられる。中には世界の代表料理と呼ぶにふさわしいものもみられる。この中からヒットが期待されるメニューも数多くある。

ロシアは料理の面で先進国。この裏付けをみよう。ロシアレストランでは一定の順序で一品ずつ料理が運ばれてくる。このサービス方法をフランスがまねして現在のようなスタイルとなった。前菜、スープ、主皿料理、デザート、食後の飲み物の順位はロシア流なのである。

また前菜をロシア語ではザクースキと呼ぶ。スモークサーモン、キャビア、サワークリームのニシン、チーズとトマト、カニのゼリーよせ、タラコの玉ネギあえなどはいずれも美味。フランス料理にみるオードブルはこのザクースキをまねして始めたものである。

フランス料理のメーンにビーフストロガノフがある。牛肉とシャンピニオンを炒めてサワークリームで煮るものである。これは、ロシアの豪商でシベリアの毛皮で巨富を築いたストロガノフ伯爵が開発した料理。いつの間にかフランス料理に生まれ変わっているのである。

純ロシア料理をみればスープに有名なボルシチがある。赤いビーツとトマトが主材。地方ごとに作り方も異なり、バリエーションは五〇種以上。その他スープとしてキノコ、魚、羊肉団子、野菜、チキンコンソメなど、数多くのスープがみられる。

メーンディッシュでは――

●肉の部=ビーフストロガノフ、シヤシリック(串焼き)、キエフ風鶏カツレツ、羊肉のチーズ焼き、ひな鶏のクルミソースがけ

●魚の部=クリームソース煮、ゼリーよせ、揚げ魚の甘酢あんかけ、オームリのフライ、チョウザメの焼き物、魚のカツレツ

●サラダ=赤キャベツ、ポテトサラダ(ポテトの料理は六〇〇種を超える)、サワークリームのマッシュルーム、サケのサラダ、キュウリのピクルス

●野菜の部=ビーツの天火焼き、ポテトの丸揚げ、キャベツの煮込み、ナスのハンバーガー

●特殊料理=ガルショーク(つぼ焼き)はロシアの伝統料理である。おなじみのピロシキの皮を耐熱性の器に被せて焼いたもの。中身は牛肉、鶏肉、野菜、ロシアギョウザなど。あらかじめ火が通っているものを入れて天火で焼く。パン生地のふたが中身の保温のふたの代わりをし、また、ちぎってパンの代わりとなる。

つぼは陶器、ホーロー、金属製などまちまち。ソースも牛乳味、コンソメ味、トマト味など。寒いロシアの味を演出する。

また、ロシアは世界的にも小麦の大生産地であり、カナダと並んで良質の硬質小麦が産出される。このほか、ライ麦も多産される。このため小麦製品のパン、パンケーキ、ピロシキ、ペルメニ(ロシア風ギョウザ)、麺類(ロシア麺)や、きしめん(名古屋のきしめんと全く同じ)、ロシアケーキなどがみられる。バラエティーも豊富で、味の面でも優れている。また、国民食となっている黒パンを食べ慣れるとおいしい。

食事のサービス方法も改善され、味の面でも向上が著しい。いよいよ底力を発揮してきたロシア料理は、アメリカ同様に日本でも人気を呼ぶものと思われ、要注目である。

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