だから素敵!あの人のヘルシートーク:フェイシャルセラピスト・かづきれいこさん

2003.10.10 99号 4面

女性の顔や髪を整える人というと、「メイクアップアーチスト」や「ヘアメイク」という言葉が浮かぶ。テレビや雑誌でお馴染みのこの方もそういう肩書かと思いきや、いただいた名刺には「フェイシャルセラピスト」の文字。ライフワークとしている「リハビリメイク」とは何か。お話を伺ううちになんだか元気になってきた。確かに“効きそう”、読んだあなたにも効果があることを……。

リハビリメイクとは、やけどやケガ、生まれつきのあざ、病気などで顔に悩みのある人のためのメイクのことです。一〇年くらい前からこの研究・指導を始めました。その前にカルチャーセンターでメイクの講師を始めたのも三五歳、職業人としては遅いスタートですね。ASD(心房中隔欠陥症)のため手術をし完治したのが、結婚して子供を産んだ後、三〇歳の時だったんです。それから美容学校に入学し、一〇代の人たちと机を並べてメイクの勉強を始めました。

手術する前は心臓に穴が開いていたため、冬になると顔が真っ赤になっていたんです。高校生の時なんてその赤い顔がイヤでイヤでたまらない。コンプレックスという言葉では片づけられないほどの思いがありました。冬は性格までが暗くなって学校の成績も急降下してしまう。「夏と冬、同じ私なのにこれでは二重人格。そんなに影響を及ぼす“顔”っていったい何だろう」。その時いつも思っていたことが、現在に至るまでの私のテーマになっています。

もう一つ、大好きだった母のこともあります。いつもきれいにしている人でした。父が仕事から帰ってくる前にはきちんとお化粧を直すのを見て、子供心にも「お母さんはお父さんが大好きなんだな」と思ったものです。

そんな母が病に倒れたのは私が二九歳の時、乳がんでした。お母さんっ子だった私は、宝塚から京都市の病院まで一日置きにお見舞いに通いました。病状は悪くなっているはずなのに、会いに行くと元気そうで顔色もいい。それで決まって言うんです。「お母さんは大丈夫だから、もう帰りなさい。旦那さんと子供が待っているでしょう?」。私は体調が良さそうな様子に少し安心して、帰宅していました。

まもなく母が亡くなって、担当だった看護婦さんが教えてくれました。「お母さんはあなたの来る日だけ一生懸命お化粧して、待っていたんですよ」。後はいつも疲れ切り、ぐったりと倒れ込むように横になっていたそうです。

医師の夫は開業したばかり、小さな子供を抱えて多忙な私を安心させて、少しでも早く家族の元に帰そうという思いやりだったんですね。

私はそれを聞いて、母のやさしさ、思いやりに泣きました。嬉しかったんです。母の化粧は自分のためでない、私のためだった。それで気づいたんです。女の人がお化粧をするのは自分のためだけではない。大切な人の心を癒すためでもあるんだと。

現在、私は顔に傷のある人、ない人のどちらにもメイクを教えていますし、「リハビリメイク」と「普通のメイク」を区別してもいません。化粧品もテクニックも基本は全く同じです。リハビリメイクの時も、傷をカバーするよりもその人のチャームポイントを引き立たせることに力を注ぎます。

顔にトラブルがなくても、誰だって老化していくことには変わりない。私、「シミ、シワ、たるみ、三〇過ぎたらみんなリハビリメイクよ!」と言っています(笑)。

化粧をすることで元気になる、イキイキする、老化を止める、顔というものをそういう観点から勉強する。いずれ壊れていくキレイさよりも、その先を読んでいくことですね。

私は実は「化粧」という言葉が大嫌いです。だって、「化けて、粧(よそお)う」って書くんですよ。ヒドイと思いませんか? この言葉自体に、化粧への偏見や軽蔑が現れている気がします。

私、この言葉を作ったのは男の人なんじゃないかと疑っているんです。「化粧は化けるためのもの」、つまり本当の自分をごまかしたり、男の人に媚びるためにするもの、という考え方なんて、本来、女性の中にはないと思いませんか? 私たちは、自分を好きになるために化粧をしているんです。字に表すと「気粧」ですよね。

モデルさんのメイクもします。嬉しいのは「かづきメイク」は他のメイクと全然違うと言ってもらえることです。他のメイクはファンデーションだけで二時間かかるんだそうです。みなさんが雑誌で見て「いいなあ」と思うのは、そうやって作られた顔である場合がほとんどです。そんなこと普通の人が毎日できるわけがない。

女の人のメイクっていうのは、“早く簡単、キレイ、安い”、それが一番じゃないかな。毎日することはそれに限りますね。料理と似ています。フランス料理は毎日食べない。毎日食べるのは家庭料理。また、気が乗らないなら、毎日することもないんですよ。自分が落ち込んで「ああ、私サイテー」と思った日にすればいい。それで元気になったら、次の日もきっと元気だから。

フルメイクしてメイクダウンする人も多いですね。「取った方が絶対若いよ」という人。化粧で一番難しいのは、どこで止めるか。化粧品も時間もいっぱい与えたらどんな顔になるか。最後に一つ赤い花を加えたばかりに、ダメになっちゃった絵ってあるでしょう。一番難しいのは頬紅ね。頬は面積が広いから自分がちゃんと色入ったなと思ったら、人が見たら真っ赤。二次元の鏡で自分が見る顔と、三次元の人が見る顔は全く違う。その辺を考慮して下さいね。

リハビリメイクを教えた一人ひとりとの出会いには、数え切れない思い出があります。教えた私の方が元気に生きるパワーをもらったような気がしています。

切ない思い出もあります。がんと闘ってる女性たちに、病気や薬の副作用による「やつれ」や「脱毛」をカバーするメイクを教えることがあるのですが、ある若い女性が鏡を見ながらポツッと言ったんです。「先生、私のおばあちゃんになった時の顔って、どんな顔かな。それを見てみたかったな」。ウチに来る人たちはもう覚悟のできた人たち、ジタバタせずに限りある命を精一杯生きている人たちですけれど、彼女が一度老けた顔を見たかったと言う。いったい私は何してたんだと、頭を殴られた気持ちでしたね。

老けるということはいいことなんですよ。健康で元気で、毎日人と接して、外に出られ歩いて。時間をかけてそうしてできていったシミやシワは元気な証拠です。感謝しなくちゃね。いっぱい笑えたから、このシワはできたんだって。

◆プロフィル

かづき・れいこ 1952年大阪生まれ。幼い頃から、冬になると顔が赤くなり悩むが心臓手術を機に30歳で完治。経験を生かし、医療機関と提携し、傷・やけど痕のカバーや、それに伴う精神のケアを行う「リハビリメイク」の第一人者となる。

現在、新潟大学非常勤講師、佐賀女子短期大学客員教授、神戸常磐短期大学非常勤講師。

◆リハビリマッサージのコツ

1 スポンジはしっかり湿らせて!

2 目の周りのマッサージは目尻側の皮膚を指で引き上げて!

3 皮膚の薄い目の周りはなでるようにすべらせる

女性ならば1度は試したことのある「重力に抵抗して下から上へのマッサージ」だが、よく考えたら手を離したらおしまいなような……。「首から上の血管には弁がほとんどない。だから頭部や顔は血液や水が滞りやすい。マッサージはそれを心臓に戻すことが目的。肌の下にたまった老廃物を耳のそばにある静脈に戻してあげるリハビリマッサージをすれば、フェイスラインがビックリするほどアップする」という。

新刊『かづきれいこのマル秘メイクテクニック』(4面参照・アスコム)から

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