なが~いつきあい!味な友だち:味の素「ほんだし」
“本当のだし”からネーミングされた味の素(株)の『ほんだし』。一九七〇年の発売以来、風味調味料という新たな食文化を確立する一役を担い、「だしといえば『ほんだし』」といわれるほど安心して使える商品に成長。和食とは切っても切れない関係を築き上げた同品の元気の秘密を見た。
和食の基本は“だし”。しかし、一般家庭の主婦にとって、鰹節を削ってだしをとるのはなかなか時間と手間のかかる作業。これを解決するため、一九六四年に他社から日本初のだしの素が発売され、注目を集めるようになった。味の素もさらに「より簡便でよりよい商品」をコンセプトに、この風味調味料開発に参入。研究者は鰹節メーカーに入り込み、熟練職人とともに二年以上の研究を重ねた。
原料となる鰹節は伝統的に土着の良い菌を持っており、それを損なわないようにできるだけ熱を加えることを抑え、しかも衛生的に加工する必要があった。また、荒節を粉末化する時、粉砕しやすいように水分を抑えなければならないなど、難しい問題が山積みだったが、伝統職人と研究者との協力で鰹節の風味を十分に引き出せる、料理に使いやすい顆粒状の商品化に成功した。
完成した『ほんだし』を普及させるため、テレビCMでは、「朝の味噌汁」をテーマにPR。朝といえば味噌汁。味噌汁といえばお母さん。お母さんといえば池内淳子さんが演じる“ほんだし女房”‐‐という家庭的なイメージを定着化。周りの目を気にして購入していた人たちも徐々に買いやすくなり、急速に家庭に馴染んでいった。
一方、主婦層をターゲットに『味わい読本』『ほんだし女房』といった本で、味噌汁以外の和食料理を提案。この本にお世話になって料理のレパートリーが増えた主婦も多いとか。現在では健康志向を反映して、野菜を加えた栄養たっぷりの“食べる味噌汁”を提案中だ。こうして、『ほんだし』は日本の味にまで発展、普及拡大した。
さらに、だしの香り、コクなど飽くなき味の改良は続いており、一九九七年5月には、「かつお技術研究所」(静岡県焼津市)を設立、より高い品質を追求。近年では、生まれてから一生泳ぎ続ける鰹のパワーが健康に役立つ何かを持っているのではないかと、うま味プラスアルファの機能も研究中だ。