疲れたら水を飲め・正しい水の補給法
中国に「疲れたら水を飲め」という言い伝えがある。水分を補給すれば代謝が活発になり、老廃物を体外に出せるから。健康保持のためには水分はできるだけ摂った方がいいということだ。しかし、日本では「水はあまり飲むな」と教えられた世代がある。研究が十分でなかった頃の話。いまは「より安全で健康に有効、そして好みの水」を選べる時代。身体の六〇%を占める水分のことだから正しく知りたい。
人それぞれに違いはあるにせよ、一般的には六五歳を過ぎた頃から臓器の機能低下が原因して様々な病気が起こりやすい。例えば体内に水が不足しても「のどが渇いた」と渇きを訴える指令がスムーズに伝わらないのも、老化の一つ。脱水症、熱中症を起こす可能性が高くなる。実際に七〇歳以上の死亡原因は交通事故よりも熱中症によるものが多くなっている。「脱水症状」というとそれほど危機迫る響きではないかもしれないが、身体に水分が少なくなると、血液濃度が上がり粘りのある血液になってしまい血栓症、脳梗塞などの原因となる。また水分を摂らないと尿の量が減り、急性腎不全や尿路結石の原因にもなる。
さてここで一つ質問。筋肉質な男性と太り気味な女性、どちらの方が水分量が多いか?……答えは男性。筋肉は水分を最も多く含む組織。だから筋肉が少なく、体脂肪が多い女性の方が水分量は少ない。「水ぶとりする体質で……」なんていうのはウソ。また、ピチピチ肌を持つ赤ちゃんの水分量は約八〇%、それに対し七〇歳を過ぎた人は約五〇%しかない。
では質問二。身体に入った水分は身体に良い働きをするか、そのまま排泄されるだけなのか?……飲料水などで摂った水分は腸内で吸収され、体液の一部になって身体中をかけめぐる。汗を出して体温を一定に保ったり、新陳代謝がスムーズに行われるように一定の環境を維持したり、酸素や栄養分を身体中に運び、老廃物を尿として体外に出してくれる。お茶の先生方の肌はきれいだといわれるのも、たくさん水分を摂ることに関係していそうだ。
水分は身体のことを思うと摂った方がいい。しかし、蛇口をひねれば出てくる水道水にはすでに多くの人が不安を持っている。九六年には埼玉県で塩素殺菌、オゾン殺菌では死滅しないクリプトスポリジウム菌に汚染され、小中学生を中心に約一〇〇〇人がクリプトスポジウム症に集団感染するという事故が起こった。
「日本の水は安全でおいしい」神話は陰りがみえ始め、より安全性が高いミネラルウオーターが急激な伸びを記録している。実際に昨年の同市場は過去最高の約八七万四〇〇〇キロリットル(日本ミネラルウオーター協会調べ)に達している。