「畑の肉」と呼ばれるわけ、キナ粉は腸内整理もお得意
大豆は「畑の肉」と呼ばれているがその理由をご存じだろうか。簡単に答えれば、「良質の植物性タンパク質が豊富に含まれている」ことからそう呼ばれる。そのタンパク質は多数のアミノ酸が結合してできており、体内で合成されるものと十分に合成されないものの二種類がある。合成されないものは食物から取るべきものなので必須アミノ酸と呼ぶ。必須アミノ酸の一つにリジンがあり、肉や魚には多く含まれるがコメや小麦などの植物性食品には少ないことが欠点だ。しかし大豆に限ってはリジンが多く含まれているので、コメを主食としてきた古来日本人は味噌や豆腐、納豆など大豆食品で肉に代わる栄養を補ってきた。
それではよくご存じの商品ではあるが、改めて健康性から大豆食品をみてみよう。
大豆をすりつぶし、搾りだした液体(呉ともいう)が豆乳。豆乳の上にできる膜をすくい上げて作る湯葉。そして豆乳にニガリを加えて固めた物が豆腐となる。
日本豆乳協会の神田厚事務局長に豆乳の現状や健康性を聞いてみた。
「豆乳に含まれるサポニンや、植物性タンパクは身体の中の余分な脂肪を分解し、コレステロールも積極的に除去してくれます。だから肥満防止にもいいんですよ。豆乳は一〇年前に一大ブームとなりましたが、いま再びその気配があるんです。若い女性を中心に売上げも伸びています。最も手軽に取ることができる大豆食品ですから、多くの方々に飲んでいただきたいですね」。
豆腐や湯葉は現代の食卓にも上がる回数が多く馴染みの深い食品だが、豆乳に関しては大豆特有の青臭さや渋味があることが原因してか豆腐や湯葉ほどポピュラーにはならなかった。
しかし、現代の豆乳は「調製豆乳」がメーン商品として店頭に並び、特有の臭いもなく、飲みやすい飲料になっている。元祖中国ではもちろん、アジア、欧米でも健康飲料として愛好家が急増中の注目商品だ。
調味料を作る工程で大豆のタンパク質部分は旨味を出し、脂質は香味の成分になる。特に味噌は大豆の使用量が多いほど、旨味が濃厚になり独自の香りを伴う。
さらに、大豆に発酵という要素が加わる味噌・しょう油には老化制御機能が生まれるという。
味噌を例に取ると、蒸した大豆に麹菌と塩を加えて仕込み熟成させて作る。この麹菌にはタンパク質を消化して、吸収を高める働きがある。しかも、大豆にはわずかしか含まれないビタミンB1、B2、B6など天然のビタミン類を作り出す働きもあり、味噌が出来上がった時にはこれら栄養素も含まれる。また、原料の大豆に比べて味噌にははるかに高い抗酸化力がある。これも発酵、熟成の過程で抗酸化力が高まったことを示している。
味噌・しょう油ともに近年では海外への輸出が勢い良く伸びている。しょう油に関しては一七七五年に長崎に一年半滞在したスウェーデンの植物学者が帰国後記した「日本紀行」で「日本にはしょう油という高級で万能の液体スパイスがある」と記している。すでにその時代からしょう油の味は世界から受け入れられていたといえそうだ。
きな粉は大豆を二二〇度前後の高温で焙煎し粉末にしたもの。前述した通り、きな粉はイソフラボンの含有量が大豆食品の中でトップを誇る。その他、大腸内に残るコレステロール、糖分、塩分を吸収して体外に排泄してくれる食物繊維を多く含む。食物繊維の効果は便秘の解消を促し、発ガン抑制作用も期待できる。
豆腐や湯葉、豆乳との違いは大豆を丸ごと使用すること。人気の高い食材の豆腐では大豆の外皮部分は「おから」となり豆腐には含まれない。ここにきな粉のより一層の健康性があるようだ。
きな粉といえば、和菓子の材料としての使い方が最もポピュラーだが、最近ダイエット効果を期待したり健康食品として人気なのが「きな粉ドリンク」。作り方も簡単なのでご紹介しよう。二〇〇ccの牛乳にきな粉小さじ三杯と砂糖またはハチミツを少々加えるだけ。お試しあれ。
●黒豆の作り方
本年6月号では自然食レストラン「すみれや」さんに黒豆(一面写真)のおいしい作り方を教わった。おせち料理を目前に迎えた師走、いま一度復習しておこう。
材料(三〇〇グラム分量)
・黒豆300グラム
・砂糖200グラム
・熱湯5カップ
・しょう油大さじ1
・重曹小さじ1/2
作り方
(1)黒豆は洗って厚手の鍋に入れ、分量の調味料をすべて入れる。熱湯を注ぎ、蓋をして一晩そのままおく。
(2)翌日、蓋をしたまま鍋を火にかけ、煮立ったら火を細くして五~六時間煮る。
(3)十分に冷ましてから蓋を開け、豆の固さをみる。固いようであれば蓋をして再び煮る。柔らかくなっていて、味が薄いようであれば豆を取り出し、煮汁だけを煮詰めて豆を戻す。
*熱いうちに蓋を開けると豆にしわが出来てしまうので要注意!