百歳への招待「長寿の源」食材を追う:キャベツ

1998.03.10 30号 14面

健康のためには肉が主体の生活から野菜が主体の生活に改めることが望ましい。ヘルシーでおいしく安上がり。長寿の秘訣はビタミン、ミネラルいっぱいの野菜を愛用することから始まるともいえよう。

(食品評論家 太木光一)

女性に人気の高い食べ物にサラダがある。生の野菜を食べることは健康・栄養・美容面からも望ましいことである。

しかし生食のトマト、セロリ、レタス、キュウリ、玉ネギなどのビタミンCの含有量は意外と少なく、キャベツのみが合格点である。すなわち各一○○㌘当たりCの含有量は、トマト二○㍉㌘、セロリ一○㍉㌘、レタス五㍉㌘、キュウリ一五㍉㌘、玉ネギ一○㍉㌘、キャベツ五○㍉㌘となり、レタスの一○倍、セロリや玉ネギの五倍、キュウリの三倍強、トマトの二・五倍となる。まさにキャベツはビタミンCの宝庫である。

もちろんビタミンCを多く含むものにパセリ(二○○㍉㌘)、キンカンの皮(二○○㍉㌘)、ユズ皮(一五○㍉㌘)、葉とうがらし(一○○㍉㌘)などがあるが、キャベツのように大量には食べられない。

特にビタミンCは他のビタミンと比べて最も不安定で調理による損失が多い。平均して五○%はロスになると推定されるので、調理なしの生食の状態が一番望ましい。ビタミンCは肌を白くし日焼けを防ぐ効果がある。さらにスタミナづくりと貧血に大きな関係を持っている。ビタミンCによって鉄は腸管からの吸収が良くなる。分解して肝臓から出てきた鉄の再利用も促され、スタミナと美肌づくりに役立つのである。

このキャベツの栽培は紀元前にさかのぼる。原産地は地中海東部ともアジアともいわれている。いまでも野生種が自生している。アブラナ科の結球性葉菜でカリフラワー、ブロッコリー、葉ボタンなどと同類である。

日本に伝来したのは宝永年間(一七○四~一七一一年)で、食べるためではなく鑑賞用としてであった。結球する品種の入ってきたのは安政年間である。そして実用野菜として外国から輸入されたのは明治に入ってから。

品種は世界的に見れば極早生から大晩生までさまざま。球の形も丸型・尖型・偏頭型などが見られ、日本では偏頭型が主力である。また葉の厚い薄い、色も白、濃色、赤紫色などがある。またちりめん状もあり品種でみれば数百種に上る。

キャベツは胃潰瘍に有効とみられるビタミンUを含み、現在では合成されて特効薬として販売されている。また野菜の特効の一つであるカルシウムも多く、カリウムにも恵まれている。カリウムは体液の浸透圧を維持するのに大切で、同時に利尿作用もある。食塩を摂り過ぎると体外に排せつするのである。

キャベツは生食が特に良く、刻んで肉や魚料理の付け合わせにする。またサラダとしても美味。ドイツでは酢漬けにしたザワークラウトが国民食ともなっている。

そのほか油炒めや煮込み料理にも適している。日本では全国的に生産されているが、最近では人気がレタスに移って、やや伸び悩み気味。周年栽培で年間供給され、価格も安い。ビタミンCの給源として愛用したいものである。

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