百歳への招待「長寿の源」食材を追う:向日葵

1997.09.10 24号 14面

松の実・くるみなどのナッツ類には次代を託した生命力が秘められている。凝縮した栄養成分がつめられたこれを食べることによって、新たなバイタリティーが湧く。毎日少量の愛用をおすすめする。

(食品評論家 太木光一)

向日葵はひまわりと読む。北アメリカが原産のキク科の一年草である。紀元前三○○○年頃から食用にされていた古い歴史を持つ。コロンブスのアメリカ大陸発見後、スペイン人によって欧州に伝えられた。

スペインからギリシャ、トルコを始めロシアを含む全ヨーロッパに伝えられたが観賞用が主目的であった。品種は多く百種以上ある。一八世紀に入ると搾油を目的とした品種をロシアで育成。花の直径は六○cmにもなり、種子の大きさも長さ二cmに達する。

アメリカでも品種改良が急速に進み、ハイブリッド種が開発され、大規摸栽培が進められている。主産地はノース・ダコタ、サウス・ダコタ、ミネソタの三州で全米生産量の九五%を占めている。

向日葵の特性として夏の暑さを好む。開花期に産地を訪れると、地の果てまで黄一色が続き、目も覚めるばかりの壮観である。やがて、はちきれんばかりに結実して、花弁が落ち、充実し首をたれ、秋に入って収穫期を迎える。フル・オートメーションで採取される。

向日葵の世界的な生産量は二千万t前後で増加傾向にある。大豆・綿実とならぶ三大油糧である。主産地をみるとロシア、アメリカ、アルゼンチン、スペイン、ギリシャなど。自国用の消費が主力だが、貿易量としてはアメリカがトップである。

向日葵の種子は油の含有量が五六%と多く、特性として色が淡くサラッとして使いやすい。しかも味は淡白でクセがない。不安定な要因となるリノレン酸が少なく、ほかの油と比べて長期の保存も可能である。油として風味の損なわれることが少ない。特に発煙点が二五二度Cと高いため、長時間の料理や揚げ物に適している。フランスでは調理油のナンバーワンとの評価が高い。

成分的にみると向日葵油は大豆油、コーン油、綿実油などに比べて飽和脂肪酸の含有量が少なく、必須脂肪酸であるリノール酸が多く含まれている。リノール酸は血液中のコレステロール値を下げ、血液凝固を防ぎ、血管を拡張して血圧を降下させ、高血圧や動脈硬化を防ぐ働きがあるといわれている。

また植物油の中でビタミンEが一○○g中三九mmgと最も多く含まれている(オリーブ油はわずか七・六mmg)。これは細胞膜の老化を防ぎ若さを守る作用があり、この点で人気を呼んでいる。最近では大気汚染の一つであるオキシダントを吸い込んだ場合、肺の細胞を守ることも発見されている。

向日葵油は揚げ物としてポテトチップやポップコーンに使用すると日もちが良く風味も変わりにくい特性がある。ドレッシング、マヨネーズ、マーガリンにもサッパリとしてクセがないと喜ばれる。

向日葵の種子もまさに栄養食品で、アメリカのヘルスショップの売れ筋に、また医者のおすすめ食品にもなっている。サラダにふりかけ、パンに練り込み、使い方は多用である。

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