「ゴーヤーは医食同源の王様です」琉球大学・平良一彦教授の話

1997.06.10 21号 16面

沖縄といったら言わずと知れた日本最強の長寿県。その沖縄を代表するトロピカル野菜、ゴーヤーの健康性をアピールするイベントが先頃、東京都内で開かれた。発表された琉球大学・平良一彦教授の話を聞いてみたい。

長寿の地・沖縄に関する内外からの関心は強く、先頃も韓国の国営放送の取材を受けたばかりです。タイからも調査を受けています。私は十数年にわたって沖縄の中でもとくに長寿であると言われている北部の村、大宣味村をいろいろな角度から調査、研究してきました。

その要因とは何か。よく聞かれるところですが、一言でこうだと言うことは非常に難しい。食の問題、あるいは生涯にわたる社会的な活動の習慣、それに伴う身体を動かすことと精神的な幸福感など、いろいろな要因が相互作用し結果として沖縄の長寿があるのだと私は確信しております。

しかし何といってもその中で一番重要なのは食ですね。東北地方の短命の某村と比較して大宜味村は野菜の摂取が三倍多い。ほかにも豆類、豚肉の摂取量の多さ、反対に食塩の少なさなど見るべき要因がたくさんあって、それで脳卒中の発生率が全国平均の五○数%、心臓病が六二~三%、ガンにしても七七~八%という数字になる。その結果として長寿の人の率が高くなる、こういうことでしょう。

さてそこで、最初に挙げた摂取量の多い野菜の中でも、これからの季節の6~8月の非常に暑い時期、沖縄県民の健康に大変貢献しているのがこのニガウリ、沖縄の方言で言うゴーヤーです。とにかく栄養成分のバランスが非常に優れている。一○○gあたりのビタミンCの量は一二○mg、品種によっては一五○mgを超えるものもあります。一般にビタミンCは熱や水に弱いといわれていますが、ゴーヤーに含まれているビタミンCはあらゆる料理の形態によっても破壊が少ない。これが大きな特徴ではないかと思います。実際に沖縄では炒め物のチャンプルーやおひたしほか、さまざまな方法でこのゴーヤーを料理しています。

ビタミンCだけではなくてビタミンB1・B2・カリウム・マグネシウム・カルシウム・カロチンも非常に多く含まれています。これは自浄作用とも関係があり医療学的に見てたいへん素晴らしいことです。

そういう意味でこのゴーヤーはむかしから沖縄で夏バテ防止の野菜として愛用されてきました。味の苦みもともすると衰えがちな食欲を増進します。また、ゴーヤーに含まれている成分自体にガンを抑制するものがあることも最近注目されてきています。まさに医食同源あるいは薬食同源という言葉にピッタリの健康野菜ではないかと思います。この素晴らしいいろいろな作用を持ったゴーヤーが沖縄だけに留まらず、日本全国で健康調理の基になるような形でさまざまに広く利用されることを願っております。

イベントが行われたのは5月8日の「ゴーヤーの日」。この日、東京と沖縄の二会場で高らかに「ゴーヤーの日宣言」が唱えられた。

沖縄県農水産物販売促進協議会・新垣兼一会長は「ゴーヤーは我が国唯一の亜熱帯地域・沖縄の温暖な気候特性を生かした、太陽の恵みを受けた庭野菜の王様。県で育成された「群星」や「汐風」などの品種の普及により平成7年度には約六○○○tまで生産量が高まってきました。暑さを吹き飛ばす爽やかな苦みを含むゴーヤーが長寿県沖縄から全国の消費者のみなさんへ、健康作りの使者となって届けられることを願っております」とあいさつ。

またゴーヤージュースで行われた乾杯に先立っては沖縄県物産公社・宮城弘岩代表取締役専務から「平成6年にたいへんな猛暑、水不足の夏がありました。その時、いつも水が足りない中で元気に暮らしている沖縄の人たちはいったい何を食べているのだろうかということが話題となり、一斉にゴーヤーに注目が集まり全国的に面白い野菜として定着したという気がします。いまでは一年を通して食べられるゴーヤー。もっともっと全国のみなさんに可愛がっていただきたいですね」とゴーヤー普及のエピソードが語られた。

一方で、沖縄という地域を越えて、さらにゴーヤーが日本全国の食の健康志向をサポートする野菜として拡がるためにはメニュー開発も必要だ。

会場では虎ノ門パストラル・岡崎勝利中華調理課料理長が定番物、新しい物合わせ合計一○のメニューを紹介。「油を通すことによって苦みがとれて口当たりがよくなるようです。一般には野菜は長い時間油を通さないことが常識ですが、ゴーヤーの場合はちょっと長く通した方がおいしくなるかなと思いました。卵と合わせると味がなめらかになりますね」と、ゴーヤー料理をおいしく作るためのポイントを披露した。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら