世界に羽ばたく飛べない鳥・ダチョウ 低脂肪・低カロリーで女性に人気
千葉県立安房農業高等学校では、カリキュラムに、ダチョウ飼育を取り入れている。同校では昨年9月、生後四カ月のヒナ五羽をオーストラリアから輸入した。ダチョウ飼育担当の代田先生は「エサは主に草をやっています。ところが先日、修学旅行で沖縄に行き、ダチョウ牧場を訪ねてみたところ、うちと比べて、むこうのダチョウの発育のよさに驚いた。以来そこに倣って、タンパクやビタミンなどもエサに加えるようにしています」。日本の気候環境の下で、ダチョウに何を食べさせ、どう育てるべきなのかの研究は、いま盛んに行われている段階なのである。
「いまは五羽まとめて一つの囲いの中で飼っていますが、もうじき雄雌ペアにしてやるため、新居の建設を検討中」と代田先生。
ダチョウ牧場の柵は高い。一般に約一・五mもあり、しかも強度を十分持たせるよう地中深く埋め込まれる仕組みになっている。ダチョウの目はたいへん良くて、一説には一六km先のものが見えるというが、囲いの柵にぶつかって怪我をする例も多いため、フェンスは視認性が高く、ぶつけても身体を傷つけないような構造にする必要があるという。
ダチョウ研究に詳しい信州大学農学部教授の唐澤豊氏は「ダチョウ飼育が産業として定着するためには、さまざまな条件整備がなされなければならない」と語る。ダチョウの生理にかなった飼育管理技術の確立、さらに日本人の好みにあったダチョウ製品の開発、流通経路の整備など。未知の力を秘めた飛べない鳥に関する研究は、まさに始まったばかりである。
ダチョウの飼育は一八三八年に羽根採取の目的で南アフリカで始められ、その一九九○年に皮、食肉用として欧米諸国に本格的に導入された。現在、アメリカにおいては一○○○以上の農場がAOA(アメリカダチョウ協会)に登録されており、日本でも、一九九一年に沖縄県今帰仁村に導入されたのを始め、全国的に広がりつつある。日本ではなんと北海道のオホーツクに近い東藻琴村でも飼育されている。ダチョウはたいへん耐暑性の強い動物で、56℃の暑気に耐えることができる。また寒さに対してもたいへん強く、マイナス18℃を体験しても問題ないのだという。
ダチョウの肉は、赤身で味は子牛の肉に似てやわらかくジューシー。質的には脂肪分、コレステロールが牛豚鶏肉より少なく、逆に鉄分は豊富という特徴がある。ダイエットや成人病を気遣う人にも安心して食べられる、おいしいヘルシーな肉として注目されている。
欧州ではいま、狂牛病騒ぎの中で牛肉の代替品としてダチョウ人気が急速に高まっているのだ。日本で飼育が始まったとはいえ、現在、レストランなどで出されているのはほとんどが南アフリカ産の輸入肉。農水省では急速に広がるダチョウ人気に対し、ダチョウ肉がはたして本当に食用に適するかどうかの調査も急いでいる。