今、店頭で 配達を始めam/pm、中高年の利用急増
漫画「サザエさん」の町の「三河屋のサブちゃん」は、町のすべてを知っていた。「カツオちゃんなら広場で野球をしていましたよ」「奥さん、風邪は治りましたか?」。近隣の住民同士のつながりが薄れゆくいま、am/pmが始めたデリバリーサービスが人気を呼んでいる。これまでモノ・カネの流れの合理化を追求してきたコンビニが、ついに最大のニーズ、マンパワーという商品を売り出したのだ。2月から宅配サービスを開始した、東京・中野弥生町四丁目店を訪ねた。
昼下がり、客もまばらなコンビニで、一人ブツブツしゃべりながら店内を駆け回っている店員がいる。左手に買い物かご、右手にノートパソコン、頭にマイク付きヘッドホンという不思議ないでたちで、あちらの棚からこちらの棚へと飛び回り商品を選び出す。
「以上でご注文はよろしいでしょうか?」レジに戻り「お会計は一一二○円です。それでは三○分以内にお届けに上がります……」。あぁ、手ぶらで話せる電話の威力。お客からの電話注文を、在庫確認しながらその場で袋詰めできるので、時間のロスがない。
am/pmといえば、添加物ゼロの弁当や、無人店舗販売など、いろいろ話題の多いコンビニだ。このデリバリーサービスを始めて以来、中高年層の来店も増えたという。利用者の一人、加藤千代子さん(53)は「配達はいつも決まった人が来るので安心。昔のご用聞きのようでなつかしいわ」と話す。
注文は、電話かファックス。月一回発行の出前メニューカタログに載っているのは「とれたて弁当」など食品類と雑貨類、約三○○アイテム。同社では今後、利用状況に合わせ、商品を絞り込む予定。カタログの文字も大きく、全品写真を付けるなど、さらに工夫していくという。
「地域に根ざした店づくりをしたい」と語る店長の古川安貴さん。最新の技術を駆使しながら、人間同士のきずなを大切に商売する、まさに現代版サブちゃんだ。近い将来、地域のコミュニケーションリーダーとして、高齢者世帯や在宅介護者の強い味方となることが期待される。