惣菜弁当の殿堂(25)那覇空港ANA FESTA「ポーク卵むすび」 ド定番の逆バージョン
沖縄のおむすびといえば、ランチョンミートと卵焼きを白飯でサンドした「ポーク卵」が定番だが、その逆バージョンで売れているユニークな事例もある。那覇空港・ANA搭乗ゲートの売店「ANA FESTA」の「ポーク卵むすび」である。“女性向けの空弁”として2005年に発売されて以降、同店が扱う空弁の中でトップセールスを続けている。ひと目で分かる、単純に説得力のある、商品開発のヒントに好適な“逆も真なり発想”に注目だ。
●調理概要:シャリ玉サイズの白飯25gが大ウケ
ランチョンミートと卵焼きで白飯をサンドし、海苔で帯止めし、4個1パックで販売。白飯は寿司ロボで成形した25gのスモールポーション。ランチョンミートはスパムを1枚・30gにカットして素揚げしたもの。卵焼きは、沖縄では卵だけの塩味が定番だが、空弁として観光客に売るため、本土好みの甘口だし巻き卵(業務用製品)を使用し、1枚・20g。完成品は当日の早朝、手作りで出荷されるが、シンプルに見えて非常に調理作業が面倒で、普通のポーク卵に比べて倍以上の手間がかかるという。
●販売実績:灯台もと暗し的なトップセールス
2006年3月の発売以降、短期間で月販1500~2000パックの看板商品に台頭した。立地に恵まれた「ANA FESTA」とはいえ、もちろん他店や、約20種類あるデリカ商品との競合も頻繁。その中で「約10年間もトップセールスを続けるのは異例」(全日空商事)といわしめる実績を続けている。ちなみに本品の詳細をメディアから取材されたのは、本記事が初めてだというから、灯台もと暗し的な事例としても興味深い。
●ポイント:発案者は転勤でヒットを知らない!?
“空弁”という言葉が現れた頃、ANA FESTA沖縄グループマネージャー・松本元一さんと、沖縄に転勤してきた全日本空輸の平井清次さんが、飛行機を見ながら「売れる空弁を作りたいねえ」と語り合ったのが誕生のきっかけ。そして、平井さんの妻の好物がポーク卵だったことから、(1)ポーク卵の活用(2)機内席テーブルにポンと置けるサイズ(3)女性数人でつまめて小腹にたまる程度、この3点を条件に試作を重ねて商品化された。当の平井さんは、その後、すぐに転勤してしまい、松本さんは「本人はこれだけ売れていることを知らないでしょうね」と苦笑いする。
◆店舗概要
「那覇空港 ANA FESTA」 製造:立川フードサービス 所在地=沖縄県那覇市字鏡水崎原地先
◆食材の決め手 愛用食材
「業務用ポークランチョンミート」
沖縄では両雄を使い分け おむすびにはスパム、炒め物にはチューリップ
沖縄で「ポーク」といえば、豚の肩肉とモモ肉などを主原料とする、缶詰入りのランチョンミートのこと。米国産「スパム」とデンマーク産「チューリップ」がポークの二大ブランドとして流通しており、料理によって使い分けられることが多いという。おむすびには塩気の強いスパム、炒め物には塩気の弱いチューリップを使うのが一般的なのだとか。