トマト加工品特集

◆トマト加工品特集:少子高齢化直撃で市場縮小 節約・内食ニーズ取り込みを

調味 2019.09.25 11946号 09面

ケチャップやトマトソースなどのトマト加工品は、豊かなうまみ成分と栄養価、減塩といった調理効果で根強い支持を得ている。市場は草分けのカゴメが昨年、発売110周年を迎えて成熟。近年は少子高齢化が直撃して縮小を余儀なくされ、価値と単価向上、若年層の開拓、家庭内調理の喚起に課題を残す。10月からの消費増税に伴う節約心理を、簡単で楽しい内食・調理体験につなげられるかどうか。市場全体と主要メーカーの動向を追った。(西澤貴寛、吉岡勇樹)

調理用トマト加工品の主力であるケチャップは約200億円の市場規模を築き、近年は漸減が続く。最近は出荷数量ベースで下げ止まりつつあるものの、金額では依然微減。今上期も同様の傾向で推移し、売価下落が全体に響いている。販売競争による価格訴求、低価格販売が常態化。ケチャップは購入者の多くが50代、消費の主要層が子どもに絞られ、少子高齢化の影響を直に受けている。

容量別での構成比は、中容量の500gが7割弱。大容量の800gが2割を占めて、300g以下の小容量シェアは1割に満たない。500gと800gの落ち込みが激しく、価格競争で取り戻そうにも人口減で消費停滞。コモディティー化が明らかになり、価値と単価向上が果たせなければ市場・事業継続も危うい。

成功例は同じ加工品で飲料のトマトジュース。前期まで3年連続で2桁成長してリコピン、カリウム、ビタミンなどの栄養・機能性表示が支持された。血圧やコレステロールを改善する健康効果が期待され、継続飲用が浸透。一過性のブームを超えて消費者に根付き、健康生活の必需品という地位を固めている。

実は、ジュースに先行してリコピン訴求をしていたのがケチャップ。代表例は商品名そのもので訴えたキッコーマン食品の「リコピンリッチケチャップ」。13年に発売し、15年からTVCMも投下して展開と育成を積極化。現在のカテゴリー拡大をけん引し調味料で珍しい健康訴求に成果を収めている。トップメーカーのカゴメも「濃厚リコピン」を商品化して増収。業務用「高リコピン」の拡充にもつなげている。リコピン増量タイプの単価はレギュラー品に比べて数十円高い。消費増を支えているのはまだヘビーユーザーの50代以上が中心。シニア層ならではの健康・こだわり志向に消費が限られ付加価値提案でも若年層開拓は道半ば。今後の伸びしろと目される。

中容量・大容量品が落ちるのと同時に小容量の実需は年々増加。1~2人世帯が社会の中心となって、“つけ・かけ”用途の小世帯ニーズが顕在化している。カゴメは180g、300gの展開を強化。実食イベントの「オムライススタジアム」開催も手伝って、今上期のケチャップの出荷金額は過去最高を達成。成熟市場で1人気を吐いて、最盛期の秋冬商戦に臨む。

今秋は10月からの消費増税による節約セール、ラグビーワールドカップと洋食調理の関連フェアが増える。従来からのハロウィーン、ボージョレー、クリスマス商戦も控え、増税以後の節約・内食セールで販売に弾みをつけ、料理の習慣化が図れるかどうかが焦点だ。カゴメは話題となったオムライス提案を独自の簡単レシピで続け、大手企業とのコラボ販促を拡大。日欧EPAによるワイン安、チーズ人気も追い風に洋食の調理機会、登場頻度を増す。課題の若年喚起には小児の代替購入者である30~40代への働きかけが必須。主要メディアの変遷もにらみながらインターネット、SNS、交通広告が増加。健康成分の増量や有機原料、減塩商材などは子どもの健康を願っての購入率も高い。3月からの新学期・新生活商戦での価値提案も、引き続き求められそうだ。

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