20年度生乳・牛乳乳製品需給 生乳、2年連続増産見通し Jミルク

●北海道と都府県差100万tに広がる

Jミルクが1月31日に公表した2020年度(20年4月~21年3月)の生乳および牛乳乳製品の需給見通しによると、生乳生産は前年比1.5%増の747万2000tで、2年連続の増産が見込まれるとした。北海道が安定して推移し、都府県も減少幅が縮んだ。ただし、両エリアの差は約100万tに広がっており、夏場の飲用需要期での逼迫(ひっぱく)や、19年度以上の移入量(道外移出量)が必要と懸念されており、ミルクサプライチェーンのさらなる安定した需給調整への取組みが必要とされる。

19年度は、乳用雌牛の出生頭数の増加傾向などのプラス要因もあり、通期で735万9000tと4年ぶりの増産が予想され、久々に明るい話題となった。

20年度もこの流れを受け、北海道で3.3%増の423万1000t、都府県で0.7%減の324万1000tで推移する見通し。都府県の減少幅は19年度見通しよりも0.8ポイント縮むと想定されるが、北海道とのギャップは拡大傾向にあることから、近年の猛暑の常態化や台風など天候影響も含め、需給変化へのサプライチェーン全体での対応が急務だ。

当面の生産に影響する2~4歳の乳用雌牛は、20年度も北海道・都府県ともに通期で増加するとみられるが、一方で5歳以上の減少傾向は続いていることから、供用年数の短縮は引き続き懸念事項だ。

用途別処理量では、飲用等向けは0.7%増の411万5000tと堅調だが、増産に伴い乳製品も前年度を上回る2.6%増の331万1000tと見通される。

牛乳類の生産量は引き続き堅調に0.5%増の471万8000tで推移するとされるが、発酵乳はほぼ前年並みの102万8000tと低空飛行とみられる。生乳増産に伴い、脱脂粉乳・バターの生産も増加する見通しだ。

一方、TPP11、日EU・EPA、日米貿易協定など、乳製品の低関税数量枠の影響などの注視が必要となってくる。国内でもチーズなど乳製品消費は引き続き底堅いと予想されることから、国産競争力強化の面からも、生産基盤強化は喫緊の課題だ。

●脱脂粉乳輸入枠引き下げ、需要喚起が鍵

農林水産省は1月31日、20年度の国家貿易による輸入枠数量について、バターで2万t、脱脂粉乳で4000tに設定した。バターは安定的に推移しているものの、脱脂粉乳は19年度末在庫量が7万4900tに積み上がっていることなどから、2年連続で数量を減らした。発酵乳市場は踊り場感が出ているが、新たな脱脂粉乳需要を喚起する製品開発が鍵を握りそうだ。

国内では発酵乳の消費が減速し、需要が弱い状況にある。昨年度も2万t枠を1万4000tに減じたが、実際の輸入数量は7000tにとどまった。そのため、必要在庫量も5万tに見直した。

4000tのうち、日米貿易協定で取り決められた750tは処理していくが、残りは需給状況を見ながら入札実施の有無など判断していく。(小澤弘教)

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