HACCP制度化 厚労省、説明会など準備着々 中小企業へ普及が課題
改正食品衛生法が1日から施行となった。その中で食品製造、卸、小売、外食、中食などほぼすべての業種を対象にしたHACCPが制度化された。経過措置は1年間で、2021年5月末までは現行の衛生管理でも違反ではない。地方自治体の保健所は、新型コロナウイルスへの対応が忙しく、食品衛生担当者が細かく指導できない状態だが、厚生労働省はHACCP制度導入では新たな設備投資は原則不要で、小規模の事業所にはHACCPの考え方に基づく簡易型を認めているので導入は着実に実施できるとみている。だが、中小企業に分類される、従業者が50人以上の製造業などは簡易型ではなく、HACCP7原則への対応が必要で、導入に当たって混乱もあり得る。=関連記事3面(伊藤哲朗)
食品衛生法によるHACCP制度化は原則として7原則が求められていて、例外として「小規模な営業者等」(表)は業界団体などが作成して厚労省が了承した業種別手引書に沿うことが求められている。手引書は5月20日時点でCVSでの店内調理、食肉処理など84業種・品目が厚労省のホームページ上に掲載されている。まだ厚労省が審査中のものもあるという。
厚労省は17年、18年のそれぞれ12月に札幌から福岡までの7都市で説明会を開いてきた。今年2月からも同じ7都市で説明会を開いてきたが、3月からの分は新型コロナウイルスの問題で延期となっている。今まで説明会を開いてきた感触で、厚労省の担当者はやはり、中小の製造業や飲食店などが課題という。
厚労省は説明会の再開の機会をうかがっている。加えて、緊急事態宣言が解除されれば可能となる、業界団体などによる小規模の会合での説明会にも期待している。さらに6月中には今までの説明会の結果などを踏まえて、ホームページに掲載しているQ&Aを拡充していく。
●ノウハウ蓄積済み
現行の食品衛生法でも保健所の食品衛生監視員は営業許可の更新時や定期的な立ち入りの機会に事業所の衛生管理の状況を確認している。来年6月以降はHACCP制度に基づいて確認する。ただ、当面はHACCP導入の支援・助言が中心となり、「その時点で導入していなくても計画を立てていて実現可能ならば許容範囲」(厚労省・担当者)という。
新型コロナウイルスの問題もあって、保健所を対象にした研修などができない状況だが、「1995年から導入したHACCPを基本とした任意規格である総合衛生管理製造過程(マル総)の承認作業でノウハウはある」と厚労省の担当者はあまり危惧していない。
一方、来年6月は営業許可業種の見直しも施行される。経過措置は3年間。現行では厚労省が定めた34業種と自治体が独自に定めた業種での営業許可制度だが、氷雪販売業、容器包装入りのみの食肉販売業などは届け出制度に移行など整理して32業種にした。
届け出のみで営業できる業種は施設整備基準がないが、HACCPに沿った衛生管理は義務付けられている。