キャンプ上手になるために・・・野外栄養学--ここがポイント
太陽が照りつける盛夏、野外で汗を流しながら活動する…これはかなりのハードワークだ。待ちかねた休日。通常以上のパワーを発揮してハシャいでしまった結果、後あとでヒドイ目にあったという話も多い。そうならないためにはどんな風に食事に注意したらいいか。アウトドア&登山歴二〇年という日本大学医学部生化学教室の金澤和則さんにアドバイスしてもらった。
「野外活動ではやはり、エネルギーに直結するものを中心に摂取を考えるべきです。最も早く熱に変わるのは糖類で、同じ一定量の酸素を使ってもたくさんのエネルギーをつくれます。それで昔からよく山登りの行動食としてチョコレートなどの甘いものをとるようにと言われてきました。ただ極端に走ってしまうと胃に負担がかかるし、一遍に高血糖値になってバランスが崩れる。そうすると体内に蓄積されて力の源となるはずの脂肪なども、使わないよう、身体が反応してしまう。だから瞬発力を使うのでなく長時間ゆっくり行動するような時は、それよりもお腹にたまるパンやご飯類などの炭水化物系の方がいいように思います。三〇分か一時間すれば同じように血液の中に入ってエネルギーになるわけですしね」。
一気に血糖値を上げる食事は精神・身体の両面の均衡を欠かせ、調子を狂わせるとは、近年の栄養学では良く指摘されている。一気に上昇したものはまた一気に下降しトラブルを招きやすい。野外行動の食事でもこの基本は意識すべきことのようだ。
「それからビタミンは代謝をよくするB( 1)やA系統をとることが大切。また、疲労が濃くなると血清中のたんぱく質も分解されるので一日に必要な量のたんぱく質が不足しがちになる。この補充も必要です。僕自身の登山時には、前者のビタミン類はドライフルーツ系で積極的にとっています。干しブドウなどの定番物に加え、最近ではパパイヤとかパイナップルなどたくさんの種類があって楽しいですね。たんぱく質は時間がとりやすい夕飯時、気をつけてとるようにします。何にもない時でも、ソーセージをちょっと炒めるなどして」。
登山者の間には“シャリバテ”という言葉がある。空腹で身体が動かなくなってしまうことだ。本当はもうお腹がペコペコなのに、ピークを目指して山登りをしていたり夢中になって遊んでいるうちにナチュラルハイになり、食事の必要に気付かないことが往々にしてあるのだ。恐ろしいのは食べ時を大幅に越してしまうと、もう身体が食べ物を受け付けなくなること。
「そのような状態にならないように行動中は二時間に一回くらいずつちょこっと口にものを入れるなどの気遣いがまず大切ですが、もしなってしまったらとにかく食べやすいものをとるよう努力する。一般的にはゼリー状のものや果物など、水分の多い食べ物がいいとされていますが、僕の経験からすると冷たいものより温かいスープの方が効果があるようです。あとは酸っぱいものなど。唐辛子、チリペッパーなどの香辛料がきいたものも食欲促進に役立ちます。香辛料はこの時期、食中毒対策にも有効な強い味方です」。
最後に暑いシーズン最も気をつけなくてはならない日射病、熱射病対策についてうかがおう。
「水分・塩分補給を十分にすること。あとは衣類対策ですね。ランニングシャツに短パンなど手や脚を露出したスタイルの人を見かけますが、一見涼しそうに快適に見えても実は逆効果。日焼けは大いにエネルギーを奪い身体をバテさせるので、長時間行動する時は肌をかくす衣服を身につけた方が賢明でしょう。頭を日ざしから守る帽子ももちろん忘れずに」。
●酸っぱくて辛いチャイニーズスープ(4人分)
酸味の効いたスープは疲労回復に最適。レトルトを使った作り方を示したが、にんじん、チンゲン菜、長ネギ、タケノコを千切りにし炒め、白湯スープの素としょう油で味付けしたものを使うことも。現場の状況で対応。
◇材料=レトルト中華丼1袋、豆腐半丁、干しシイタケ・ザーサイ・むき海老は適量、酢大さじ2~3杯、ラー油・中華風鳥ガラスープの素・かたくり粉・しょう油・塩・こしょうは適量、水600cc。
◇作り方=干しシイタケは軽く洗って水に浸す。ザーサイ・豆腐は千切り、むき海老は開く。湯を沸かしこれらの材料と鳥ガラスープの素を入れる。ひと煮たちしたら豆腐とレトルト中華丼をドーンと投入。豆腐を崩さないようにかき混ぜ、酢とかたくり粉を加える。ラー油をたらして出来上がり。
●便利メモ
香辛料は食欲増進効果大。気密性が高くて軽いフィルムケースを利用すると持ち運び便利。