百元放談 朝酒の習慣

1995.11.10 2号 5面

わが家ではすくなくとも一週問に一度は朝酒を楽しむ。女房とそして九三歳の母も加わることが多い。酒が相当に好きな人でもこの話をすると驚く。

週に一度か二度の休日の朝酒の習慣は、私が社長になって緊張したハードな毎日がつづいていたとき、「きょうは休日なのだ」と、自分自身に言いきかせ、自分を解放するもっとも良い手段が、この朝から酒を飲むことだった。

朝は疲れがとれていて酒がうまい。しかし朝酒といえばすぐに小原庄助さんが出てくる。「朝寝・朝酒・朝湯が大好き」という大変にうらやましい話なのだが、結果はそれで身上(しんしょう)潰したというから、やはり朝酒は余り長いことにはなっていない。

それに比べると晩酌は一日の終りのけじめを、酒を飲むことで心身をくつろがせ、明日に備えるという大義名分があり、日本男子の本懐といったゆとりや風雅の響きがある。朝酒にはまだそれだけの主張がない。

わが家の朝酒は土曜か日曜祭日の休みに、早くても10時ごろから始まる。どちらかといえば夜型の女房が起きてからだから、ときに昼に近い朝になる。晩酌は主として旦那中心に楽しむ形であるのに対し、わが家の朝酒はやや集団の形になっている。とにかく一緒に飲む女房が、張切って料理を出すから相当な豪華版になる。約二時間近くうまいものを食べる。このとき食べものを扱う新聞社にいる恩恵も感じる。

あとは眠くなって寝ることもあるし、仕事を思い出して途中から社員に電話することも多い。社員にはご迷惑なことだろうが、昔より随分と抑えているので勘弁して貰いたい。休日に酒を飲んでも仕事のことを忘れないというのは、やはり“業”というものだろうか。血のめぐりが酒でややよくなっているのか結構いいアイデアやヒントが出てくる感じになる。これも朝酒の効用のひとつである。

わが家のこの話を聞いたある会社の女社長が車をとばしてでも参加したいといっていた。未亡人になって一人酒を飲むのもつまらないという。ご希望ならどなたでもウェルカムである。

(アイアイ)

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