山の食事12カ月:雨でも楽しい山の中、ポイントは行動食

1997.06.10 21号 16面

「雨が降ったらどうするんですか?」

梅雨時の山歩き前日には必ず何回かこういう問い合わせが入る。今日もこれで三本目、答えはいつも「雨が降ったら濡れればいいさって言うじゃありませんか」に決まっている。

実際、始めてしまえば雨の山歩きは辛くないのだ。

木々の葉が受け止めてくれるから、雨はあまり強く感じない。小雨にけむる雑木林は、幽玄で叙情的な風景を創り出し、足元の小さな花は、雫をたたえていっそう可憐に佇んでいる。

雨も降ったり止んだり呼吸して、時にはサッと日が差すこともある。

上空の気流の乱れで白、灰、黒色と何層もの雲が北へ南へと錯綜して飛び交い、雲形も風に煽られて様々な変化を見せてくれる。まるで魔法の覗き穴のように、突然中空にポッカリ穴が開き、遠く雪を残した高い山が見えたら大感激だ。

「雲一つない」という大展望ももちろん素晴らしいが、自然の妙味はこんな時ほど強く感じられる。

しとしとジメジメの梅雨時は家にいれば気が滅入る。きっちり雨対策をして外に出よう。ゴアテックスなど透湿防水素材を使った雨具、しっかりした登山靴、ザックの中身はビニール袋で包んでおく、などなど。

ただ一つ残念なのは、たっぷり休んで昼の食事というわけにはいかないこと。

だから行動中の休憩ごと、少しずつ食べる行動食に工夫を凝らす。おにぎりなら小さめな一口二口で食べられる大きさがコツ。飴やチョコは一般的。一時流行った苺大福はスグレ物。夏ミカンは房の皮も剥いてタッパに入れる。さらに凍らせて持って行けばパーティーのみんなに喜ばれること請け合い。ウィダーやザバスなど、最近多種出ているチューブ入りエネルギー補給ゼリー飲料も便利だ。

雨には濡れても気分はさわやか、心にカビをはやさないでサァ山に行こう。

さて、明日の空摸様はどんなかな?

(日本山岳ガイド連盟公認ガイド 石井明彦)

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